第57話 初日 4

 男性エルフ7名の尊い犠牲のおかげで(死んでない)、ゼノ達3人は一切の不調なくエルフの国シュトロハーゲンへと辿り着いた。

 森の中にある国なので、ツリーハウスやログハウスが並ぶかと思いきや。

 50メートル超の巨大樹が等間隔で並び、その中でエルフ達が暮らしている。


「外の人達には珍しいみたいですねー。あれはビルの木と言ってー。ビルみたいに成長して、中がオフィスになってるんですよー。他にも集合住宅連樹といって、マンションや高層マンションとして住める巨木もあるんですよー」


(シュトロハーゲンの木、突拍子もなさ半端ないな!)

「これは、文字通り木の家なんですね。凄いです」

「話しには聞いた事あるけど、予想してたのよりデカいな」


 体面を気にして騒がないゼノは、素直に感心するミラとサリアの若さをうらやんだ。


「皆さんは今日からしばらくの間、ここのホテルで過ごして貰いますー。今兄達が王城へ報告に行ってますから、登城までの間に礼服を新調して貰いますねー。あっ、費用は国持ちなので1番高いのにしちゃって下さいー。救国のゆうに2番目以下の服しか与えなかったとか、国の威信に関わりますからー。服の発注が終わったら、礼節の勉強をして貰いますねー。これは皆さんがヒト如きと舐められない様にする為なので、こっちも必須となっていますー。他にもですね」


 ジュディスの怒涛の如き説明は途切れる事なく、ホテルにチェックインだけして直ぐに街へと飛び出した。

 王族専用の服屋を時間指定でホテルに呼び出しておいて、来るまでの空き時間に首都の迷わない歩き方を伝授する。


 街並みを感心して見る間もなくホテルに戻って、夕食を取ってから部屋に行き礼服のサイズを測る。

 部屋は個別で与えられたが、計測は男女別に行われた。

 ゼノの部屋には男性が1人と女性が2人来て、体のサイズを測っていった。


「おやおや。救国の英雄様ともあろうお方が、なんともみすぼらしい体型をしていますなあ。ガリガリに痩せて、まるで浮浪者ですな」


 測ったサイズを記入していた男の言葉に、ゼノはキレた。

 少し休憩にしてくれと言い、部屋のトイレに入ると。

 そのまま亜空間へと入り、立て籠もる事にした。

 幸い冷凍庫と保存食がまだまだあるので、1人なら20日は隠れ潜む事が可能だ。

 更に万能薬には肉体を復元する程の能力があるので。

 タンクの中に聖水が残っている限り、万能薬だけで食事しなくても何とかなると考えている。

 何のやる気もなくなったので、ベッドに入って寝た。




 深夜に目覚めて落ち着くと、あの態度は反国王的な派閥の回し者かとも思ったが。

 救国の恩人と言いつつ。あの程度の者しか寄越さない国への興味が、ゼノ中から消えつつあった。

 しかし匿って貰う必要もあるので、服屋の店員に復讐するだけにした。


 亜空間にあるありったけの紙に、あの男の態度を誇張せず正確に書いた物を量産。

 手が腱鞘炎になっても、7色草の乾燥粉末を舐めて癒やし。紙が尽きるまで書き続けた。


 亜空間を出てホテルの窓から飛び出して、再び亜空間に入る。

 サンカイオーに乗り亜空間から出て、空へと飛び立つ。

 全ての窓と後部ハッチを開けたまま高速飛行して、積んでおいた紙束が風に乗り街へと散っていくまで飛び続けた。

 途中見つけた城にある訓練場の様な広場に停車すると、亜空間の入口を開けてサンカイオーで入った。


 ゼノは明日以降の騒動を楽しみにしつつ、今度はベッドで熟睡出来た。







(^O^)/あとがき

 ゼノは劣等感塗れでこれまでの人生を過ごしてきたので、見下されるのをとても嫌います。

 でもやった仕返しは、逃げ隠れしてから真実を書いた紙をばら撒いただけ。

 ゼノの好きな言葉は因果応報。

 善も悪もやった分が自分に帰ってくる。

 悪事が働けない小物と自覚しているので、彼にぴったりな言葉だと思います。


 これからも生活魔法をよろしくお願いします。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る