第48話 14日目

 朝から1度も飛行魔物の襲撃もなく、サンカイオーは快適な飛行を続けていた。

 スピーカーで音楽を聞いていたら突然ゼノが、グフッ!と苦しげに息を吐いていたくらいしか問題はなかった。


 ずっとサンカイオーでの移動で運動不足になったと、ここからはサリアの提案で歩きになった。

 男女交代で亜空間に入り武具を身に着け、荷物を入れた鞄を持つ。

 森の上空はワイバーンがB級、グリフォン等が単体でならC級。

 地上はC級以下が単体から群体までと、非常に高い戦闘力が求められる地域となっている。


 以前の川での大量狩猟で、ゼノが一般的なF級。ミラはE級程度の戦闘力を身に着けている。

 しかし2人共戦闘技術がないので、サリアが居なければ生存確率はゼロだった。


 西へ歩きながら、出会う魔物の大半をサリアが狩り。1部動きを鈍らせた魔物を、ゼノ達2人で連携して倒す。

 進みは遅いが、非常に充実した訓練士になっていた。

 サリア主観では。


 自分達を足して10倍しても、まだ足りない程の戦闘力を持った人物が言う充実は。

 戦闘技術も素人の2人からすれば、地獄の猛特訓だった。


(いくら四肢をボロボロにしたって。マンティコアを相手に戦わせないでよサリア!)


 毒針の尾を持った人面ライオンの魔物。

 マンティコアを一言で表すとこうなるが、その驚異はC級でも上位に入る。

 巨大なライオンに毒針の尾を持たせただけでなく。

 人間の悪意と知能まで合わさった、厄介な魔物である。


(尾も毒針だけ切断されてるけど。太くて長くてしなやかだから、回避がキツい)


 サリアは戦闘の観察をしながら、現れた魔物を連接剣で確実に殺している。

 戦闘中にもほんの僅かに戦闘力を上げつつ。それでもギリギリの戦いを、ゼノとミラは強いられていた。

 かろうじて立っているだけのマンティコアだが。その長い尾でミラを牽制しながら、正面のゼノを食い殺す機会を伺っていた。

 ゼノはメイス右手に、手斧を左手に持ち。へっぴり腰でマンティコアと相対している。

 正面の範囲で左右に走りつつ、時々目を狙いメイスの尖端で突いていく。


 片やマンティコアは自分が長くなく、仮にこの2匹の人間を殺せたとしても。奥に立つ赤毛に殺されると自覚していた。

 ならばせめて、1匹でも多くの人間を道連れにしようと考えた。

 目の前のオスに飛びつき、噛み殺す。その為に傷付いた足に力を溜めていた。


 サリアから見てゼノの戦闘センスは皆無だ。

 これまでにサリアが多数の魔物を狩り、近くに居た事で身体能力等は上昇していているが。

 臆病で根性なし……つまりヘタレな性格のせいで、極端に傷付くのを恐れる。

 だから常にへっぴり腰になり、常にワンアクション遅れる。

 回避だけは自分並みか、それ以上の素質を感じるが。


 それでもゼノはどんな理由か不明だが、仲間が居る状況では絶対に逃げない。

 現に今も自分が逃げればマンティコアの狙いがミラに向かうので。チクチク攻撃を繰り返し、マンティコアがミラに狙いを変えようとしたら。その意思を敏感に察し、手斧を投げて注意を引き続けている。


(いい、いいぞゼノ。オメーは十分に嫌な避けタンクだ)


 ゼノの性格と戦闘スタイルと装備が見事に噛み合い。ここにヘタレなのにチームに貢献出来るおっさんが誕生した。

 その後も自分達なりに、マンティコアとの戦闘を頑張るゼノとミラ。

 ただこの2人。互いに攻撃力に乏しいので、マンティコアの失血死まで決着がつかなかった。


 なおマンティコアの命を賭けた最後の一撃は、未来予知にも近付いたヘタレの危険予測の前に。


「ぬおおおおおおおお!!」


 と、全力回避でギリギリ避けられていた。

 マンティコアの死に顔は、心底無念そうだった。

 こんなおっさん如きにぃぃぃ!!

 別の方向性で本当に無念そうだった。



(^O^)/あとがき

 あれから順調にPVを伸ばし、先程確認しましたら6500PVを突破していました。

 ありがとうございます。

 突破記念のサリアの閑話?過去話?は……誠意努力中です。

 もう暫くお待ち下さい。


 キングゴブリンは単体性能ならマンティコア以下ですが。装備した武具の性能と扱う技術が高いのでB級とされています。


 今後とも生活魔法をよろしくお願いします。

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