第24話 3日目 5

「ゼノさんは何にしました?私はこのカルボナーラとサラダにしました」


 コンビニでカゴを持って弁当を選んでいると、ミラが話しかけてきた。

 飲み物はこれから選ぶのだろうが、ゼノとしてはそれだけでは不足するだろうと思っていた。

 最大サイズのピザを1枚半も食べられるのだから。


「俺はカツ丼弁当にしたよ。何でカツ弁当じゃなくて、カツ丼弁当なのか疑問に思うけど。浮浪者から脱出出来たし、大金も手に入った。仲間も2人出来て運気が向いてきてるだろ?だからゲン担ぎに、不幸に打ち勝つって事でこれにしたんだ」


「………えっ、ええ。いいですね、それ。とっても素敵だと思いますよ」


 では私は飲み物を選んできますと、ミラは去っていった。


(今ばかりは、仮面で表情が隠れていて良かったと心底思いました。まさかあんなタイミングで、とんでもなく大きな地雷を置いてくるなんて。絶対に誰も思いませんよ!!)


 ゼノはミラが僅かだが沈黙していたので、自分の会話に問題があったと気付いたが。何か問題だったのかは分からずに、首を捻っていた。


 途中。加減をせずにカゴ満載でレジに行こうとしたサリアを止め。亜空間に保存機能は無いと説明する一幕があった。


 支払い時に食費なんだから共同費からじゃんと気付き、サリアの購入金額を見たゼノは安心していた。




 コンビニから出ると半端な時間だったので、亜空間に入ってミーティングをする事になった。


「アタシの昼飯も共同費から出てるんだろ?だったらホイッ」


 そう言って、100万イエン束を5つもテーブルに放り投げた。


「だーいじょぶ、だいじょぶ。B級舐めんなって」


 ゼノは完全に、男として負けた気がした。

 気前や甲斐性の面で。




 サリアから渡された500万イエンを、共同費の入れてあるクリアボックスに無造作に入れる。


(以前の俺の、年収3年分以上の金がここにあるのか)


 自分の3年分の金があっさり集まる虚しさや、大金が手元にある安心感。ゼノは複雑な思いで、クリアボックスに背を向けてテーブルに着いた。

 コップにお茶を注ぎながら、サリアに質問するゼノ。


「サリアの武器は長剣っぽいけど、遊撃タイプなのか?」


「アタシの武器はちょっとマニアックでな、全距離で戦えるよ。前のチームの時は遊撃担当だったぜ」


「近距離は分かるけど、中距離遠距離ってなんですか?」


「実際使っている所は今度見せるけど。アタシの武器は連接剣なんだ。だから剣を伸ばしたらかなり長いリーチで戦えるのさ」


「ほう、それは凄いな」


 連接剣。

 それは剣芯部分に、伸縮性の高いワイヤーを埋め込んだ想像上の武器の名前だ。

 手元の操作で剣身部分が複数に分裂。

 内部のワイヤーで連結され、鞭の様にも使われる。

 剣と鞭。2つの武器の特性を持った、使い手を選ぶ武器である。

 しかし現在の魔道具技術では。剣身の強度不足や、自在に伸縮するとワイヤーが作れない等の理由から。使用に耐えうる武器としては、製作不可能な品になっている。

 これが唯一武器として存在している理由、それは。


「こいつはな、ダンジョンで手に入れたのさ」




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