第23話 3日目 4
ゼノはサリアに生活魔法の全てを説明し。亜空間が広がるまでは、ベッドを置くスペースが足りないので。ミラと一緒にのベッドだと言ったのはこの為だと告げた。
「なあなあ、アタシの荷物もここに置いていいか?」
「もちろんです」
(先に返事をされた…)
「っしゃー!ゼノ、どうやってここから出るんだ?早く入口開けてくれ」
へこむ暇もなく、喜ぶサリアに出口を開けろと要求される。
「まあ待て。まずは周囲が無人で安全かを確認してからだ」
ゼノが亜空間の外の状況を探っている間に、ミラはゼノが何をしているかを説明している。
「そんな事まで出来るのか、すげえな!」
「外は問題ないから開けるが。待ち合わせ場所も決めずに、サリアは何処へ行く気だったんだ?」
「あ」
背後のミラに笑われながら、顔を赤くしていくサリア。
サリアが何か言い訳をする前に、ゼノは話しを続ける。
「一緒に行けば問題ないだろう。部屋に入る必要はないし、宿のロビーか近くの店で待機しているさ」
「頼む…」
もう1度外の状況を確認してから、3人は亜空間から出た。
ギルドからおよそ2キロ離れたそこそこ高級なホテルに、サリアは部屋を取っていた。
「ちょっと待っててくれ、直ぐに荷物を取ってくる」
サリアはギルドタグを出して受付けから鍵を貰うと。エレベーターを待たずに、高速で階段を駆け上がっていった。
そして5分も待たずに階段の手すりを、滑って下りてきた。
(薄々感じてはいたが。サリアはしっかり手綱を握ってないと、騒動の中心になるタイプだ。騒動を起こすのと、自分から頭を突っ込むの両方で)
手すりを滑るのに邪魔だったのだろう。左手に持っていた長剣を、今は腰に着けている。
背中にはかなり大きな、飴色のワンショルダーの鞄を掛けている。
階段から2人の待つ所まで半分程歩いて、返し忘れた鍵を走って受付けに返しに行く。
「いやー、わりぃわりぃ。待たせちまったか?先払いで済ませてあるから、もう行けるぜ」
サリアも合流したのでホテルを出て、彼女の提案で目の前にあるコンビニで昼食を買っていく。
「荷物を気にしなくてよくなったからな。まだ早えけど昼飯買っとこうぜ」
ゼノはパーポン草の500万イエンを、ミラから全額受け取る様に言われている。
「パーポン草はゼノさんと生活魔法が有って、初めて手に入る物です。薬草栽培を提案したのは私ですが、聞けば薬草の栽培は現在の技術では不可能との事。だからこれは全てゼノさんの正当な取り分です」
更には残りの7万イエンも2人で分けようと言い出したので、せめてそれだけはと受け取って貰った。
先行投資の分を返すと言っても。
「あのお金は返さない代わりに、私をずっと生活魔法の中に住まわせて下さい」
と、双方譲らず返金出来なかった。
折衷案としてゼノから300万イエンを、ミラから100万イエンを。チームの共同資金として、生活費はここから消費していく事になった。
昨夜の買い物も食費も、全てここから出ている。
なのでゼノは、200万イエンもの大金を自由に使える立場にあるのだった。
(フフフ、俺には大金があるんだ。リーマン時代より100イエン高い弁当を買ってやるぜ)
彼はもう、死ぬまで小市民かもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。