第19話 2日目 4

 時間帯的にどこの飲食店も混雑していたので、2人は目に入った赤城ーズピザをテイクアウトする事に決めた。


「ゼノさん、ゼノさん!私ピザは久しぶりで、何にしようか迷っちゃいます!」


「俺ももう何年も食べてないよ。1枚で味が半分2種類の特大サイズを、2枚か3枚買っちゃおうか?」


「いいんですか?是非お願いします」


「いやいや、味を選ぶのはミラだよ。後サイドメニューも選んでね。飲み物はさっき、かなり余分に買ったから必要なさそうだけど」


「わかりました、直ぐに選んじゃいますね」


「ゆっくりでいいよ。選ぶ時間も楽しいものだから」


「はい!」


 壁に貼られたメニューを見ながら話していた2人だったが。話しがまとまるとミラは、持ち帰り用の小冊子メニューを手に取り。反対の壁にもたれかかり、あれがこれがと楽し気に悩み始めた。


 ゼノもミラの隣で壁にもたれ、ミラの手に持たれたメニューを見るつもりだったが。斜め上から覗き込む角度だった為に、大地ふくを盛り上げる連山きょにゅうに釘付けになっていた。


「よし!ゼノさん、決まりました!」


「それじゃあ、注文に行こうか」


「はい!」


 思わぬラッキーを堪能したおっさんは、ミラの突然の声に正気に戻ったが。直前までのスケベ思想等おくびにも出さず、頼れる男性感を自分的に出しながらミラを促した。



 魔道具…機械に任せオートメーション化された工程と、機械ではまだ不可能な人力の工程を経て。人々には新たな希望が与えられた。

 その名は焼き立てピザ。


 ミラはその希望の入った袋を手に下げ、ギルドの裏手まで徒歩と列車で移動するつもりだった。

 家まで持ち帰えるドキワクも確かにいいものだが。それでピザが冷めてしまっては、最高に美味しい瞬間を逃してしまう。

 ゼノにそう説得され、ひと目のない路地で亜空間に入った。



 予備のイスにサイドメニューを袋毎置いて、先にピザの箱を開ける。

 4人用のテーブルに3枚のピザが姿を現し。サイドメニューのサラダにフライドポテトが、箱の隙間に置かれていく。

 温いコーラは飲みたくないと意見が一致し、ピザ屋で購入した冷えたコーラがコップに注がれている。


「久々のジャンクフードと」


「500万の収入に」


『カンパーイ!!』


 2人はコーラの入ったコップを接触させずに掲げて叫ぶと、乾杯の意味そのままに一気にコーラを飲み干した。


「っかー!たまらん!」


「お先に頂きまーす。あーん」


 まずは選ばすに手前から、全ての味を1切れずつと。

 一口口に入れて、しっかり味わって咀嚼する。

 サックリ焼き上げた生地と、トマトとバジルとオリーブオイルが複雑に絡み合った味の奔流が。ミラの舌に怒涛の勢いで叩きつけられる。


「んんんー!!」


 口内にまだピザが残っている為に、口を開く事が出来ないが。言葉なき声の感想は、このピザが美味いと告げている。


 ゼノも誰かどの味を食べた食べてないで迷わないように、ミラと同じ味のピザを取って食べていく。


「ほう、これはなかなか」


 なかなかなんて評価をしつつ、手も口も止まらずに動き続けている。



 結局2人は最大サイズのピザ3枚とサイドメニューとコーラ。

 これらを残さず食べ尽くし飲み干し、しばらくベッドから動けなくなった。

 しかし辛さは微塵も感じられず、満足感と達成感に溢れていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る