第18話 2日目 3
(いや、無理!人生7回遊んで暮らせる額なんて、怖くて貰えない!!)
エルフより提示された報酬額を聞いた瞬間、おっさんはヘタレた。
詐欺、恐喝、強盗。
脳内を巡る様々な金銭に関する犯罪。
不幸になる未来しか想像出来なかったゼノは、隣にミラが座っている事も忘れ報酬を断っていた。
ただ美人で有名なエルフの女性を、ひと目見るくらいは欲を出してもいいんじゃない?
と自分の条件として提示した。
パーポン草だけならまだしも、青いパーポン草はかなり稀少な物らしい。
捨てるのは勿体ないが、持っているのはもっと怖い。
なので必要としている
(パーポン草を売るのも今回限りかな。値崩れするのはいいけど。それより自衛能力がないのに大金持っているって知られるのが怖い)
ギルドを出ながら薬草の亜空間栽培については終わりにしようと決意した。
それでも、亜空間に1株残しているのは仕方のない事だろう。
(いやだって、彼が欲しかっていたのは青いのだしね?通常のは渡さなくてもね?)
自分に言い訳しつつ、非常時に使える金の大切さを誰よりも知っている。
だからこそゼノは亜空間に入った時に、今は自分の隣にミラが居ると思い出し。青と緑の薬草を別にしたのだ。
だが彼は誰にもその事を話さないだろう。
きっとそれが、彼の目に見えない魅力だから。
「それにしてもミラ、すまない。勝手に話しを進めてしまって。人情話しをされたら反対意見も出しにくいだろしな。俺に大した事は出来ないけど、何か埋め合わせを…」
「いいえ、必要ないですよ。どちらかと言えば、ゼノさんが思いやりのあるいい人だと確認出来てよかったですから」
「そうか、そう言って貰えるとありがたい。正直報酬額が大き過ぎて、貰うのが怖くなってね。10年遊んで暮らせる額とかなら、売ってもよかったんだけどね」
「ふふふっ、そういう事にしておきますね」
「そうしておいて、はははっ」
(あれ?今の、冗談だと思ってる?)
ミラの予想外の高評価に困惑しつつも、元社会人は顔に出さずに自分の手柄とした。
やはりこの男、善人ではあるがヘタレで小市民である。
「では消耗品の買い出しをしてから、どこかで夕食と明日からの行動について話し合いましょう」
「そうだね、そうしようか」
2人は列車に乗り業務用スーパーへとやって来た。
今回消費した食材や、実際街から出てみて不足した物をカートに乗せた籠に入れていく。
元々ミラは亜空間の範囲を四畳半程度と思っていたが。
ベッドやクローゼットを配置してみると、縦横が一辺10メートルはあった。
これは亜空間の内部が白一色なので把握し辛いのと。
前回の滞在時間が極僅かだった事が原因だ。
ゼノもまだ能力の扱いに慣れてないので、内部のサイズについては感違いしていた。
亜空間は常時ゼノの魔力を吸収し続け、ナノメートル単位だが増え続けている。
なお日々の魔力とゴブリン程度では、目に見える差は感じられないので。2人共まだ、亜空間が広くなっているとは気付いていない。
おまけにゼノの魔力は常にゼロなので、生活魔法以外の魔法は覚えられないし。魔力を使ったアレコレも一切出来なくなっている。
買い物を終えると、買った物を亜空間に分別し収納する。
店の近くの路地から出ると、夕食にしようと2人は飲食店を探し始めた。
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