第13話 チームの通常の仕事 1日目 3

 そろそろ夕方に差し掛かる頃、ゼノ達は野営の常用広場らしき場所を発見。

 今夜はここで火を使う事にした。

 道中枯れ枝は拾い生活魔法の亜空間に収納していたので、魔道具かミラの魔法を使えば着火も容易い。


「じゃあ俺が料理をするから、周囲の警戒よろしく」

「はい、任せて下さい。伊達に外での生活を前提に作られた仮面じゃありませんから」


 森に入ってから中々ゴブリンが見つからず、2人共狩りを諦めて採取に意識が移りだした頃。

 ミラが仮面の能力の1部を、ゼノに打ち明けた。


「この仮面にはマルチセンサーが搭載されていまして。総合的な探知能力はC級からB級の斥候系戦闘万屋と同等です。万屋には個人差があるので一概には言えませんが。イメージとしてはベテラン狩人に若干劣る程度でしょうか」


 余程自慢したかったのだろうか。中の上くらいですよ、1流程じゃありませんけどと。隠し切れないほど話せる喜びが溢れている。

 お気に入りの玩具を自慢する子供の様なミラに、ゼノは自分に子供が居たらこんな感じなのだろうか。

 そう思いながらも、自分に結婚や育児は想像するしかないなとへこんだ。


 ミラはゼノの作業を見ながらも、時々遠くに視線を飛ばし…仮面を向けて安全か否かを確認していた。

 首筋が赤く見えるのは子供っぽくはしゃぎ過ぎた恥ずかしさからか、夕日の赤か。



 冷蔵庫を置くスペースが、まだ亜空間に確保出来ていないため、缶詰にレトルト食品や乾燥粉末、燻製に干物や乾燥野菜にドライフルーツと。亜空間には量より種類が揃えられている。


 鍋で湯を沸かし粉末スープの入ったカップに注ぎ、残りの湯でパスタを茹でる。

 クーラーボックスからハムと卵を取り出し、鍋の隣で焼いていく。

 レトルト食品のクリームソースをフライパンに追加して、沸騰しない様に一緒に温める。

 ザルで湯切りしたパスタを、フライパンに入れて混ぜたら完成。

 各自の深皿に均等に分けたら、ソースの残ったフライパンをミラに渡した。


「はい、完成。多かったら残していいよ、俺が食べるから。食べ終わったら、ソースはパンで拭って残さず腹に入れる事」


「はい。では、いただきます………んー! 美味しい!」


「ははっ、それはどうも………んん、腕は落ちてないみたいだな」


(うーん、料理について聞くのはセーフ? それともー……アウト? 料理を仕事にしていたのなら、聞くとまずいだろうし。趣味ならともかく、家庭の事情だったりしたらなー……)


 人のよさについ料理を話題にゼノに話し掛けそうになったミラだが。どこまで踏み込んでいいのか分からずに、食レポと感想だけを言って自分から話してくれるのを待つ事にした。


(新成人の頃は薄給で、自炊するしか節約方法がなかったからな……そのうち給料が増えた分以上にサビ残させられて、朝晩コンビニ昼コンビニか外食しか、時間的に選択肢がなくなったけど……ミラが引き抜かれてソロになったらどうしよう? 生活魔法もあるし、のんびり万屋続けながら、老後の亜空間貯金を増やして行こうか)


 相手を慮って踏み込んだ話題は避けた少女と、過去と未来に思いを馳せて相手を見ていないおっさん。

 ヘタレ以前に、この差に気付かないから異性にモテない。

 自分の目的の為にゼノとよい関係を築く。

 ミラの苦労は、まだまだ始まったばかりなのかもしれない。

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