第12話 チームの通常の仕事 1日目 2

 常に増え続けるゴブリンを狩る為に、この森は歩きやすい様に手が入っている。

 訪れる万屋達が邪魔な枝葉を切り落とし、密集しすぎていた木々は適度に伐採されている。


 森自体が切り開かれ平地にされないのは、薬草が人工栽培出来ずに、こういった自然の多い場所でしか発見出来ず育たないからだ。

 ゴブリンは薬草がある森は、人間が開拓しないと知っているので、一時的に狩り尽くしても、再び何処からともなくやって来ては住み着く。

 そんな戦闘万屋の常識も、新人になって数日の2人は知らずに。


「ゼノさん。鉢植えの代わりにボウルを使って、薬草の栽培をしてみませんか?」


「一株くらいなら採取量が減ってもまだ採れるし、やってみようか」


 と、常識知らずな行動も平気で思いつき実行に移してしまう。

 剣スコップで薬草の周囲の土毎ボウルに移し、水がないので聖水を根本にかけて亜空間に置いておく。

 成功したらラッキー程度の感覚で作業を終わらせ、スコップを収納して引き続きゴブリンを探して森を歩く。



 歩きやすく見やすい森はゴブリンを発見しやすいが、ゴブリンからも発見されやすい。

 ゲギャとかギャギャとか鳴きながら、ゴブリンは考えなしに全員で走って攻撃しにくる。

 本来ゴブリンはもう少し知能が高いのだが、以前に上位個体に率いられていた場合は違ってくる。


 それまでは命令に従っていれば良かったので、自分で考える事が出来ない。

 逆に自分で考えて行動出来る個体は、命令違反だと上位個体により殺害される。

 なので大集団に所属していたゴブリンは、新人戦闘万屋にとって恰好の餌食になる。

 キングゴブリンの死亡後、森へと逃げ出したゴブリン達だったが、その直後から新人万屋が森に入り、ゴブリン狩りを行っている。


 たった半日で687のチームが出来るほどの新人戦闘万屋が、チャンスとばかりにかなりの数が押し寄せた。

 ゼノ達2人が森に入ってから既に4時間以上が過ぎているが、未だにゴブリンの影も形も見当たらない。

 恐らくこの2日間で狩り尽くされ、ほぼ全滅したと考えていいだろう。


「ゴブリン、居ませんね」

「そうだねー。代わりに珍しい薬草が幾つか集まったから、ゴブリンを狩るより金銭的利益は出てるんだよねー」

「ですねー」


 昼食も終え再び森の奥へと歩いてはいるが、緊張感をなくした会話が今の2人の状況を物語っている。


「またゴブリンの死体を放置していってるのか……仕方ないな」


 森に生きたゴブリンは見かけないが、代わりにゴブリンの死体ばかりが目につく。

 新人万屋ばかりがゴブリン狩りに来ているので、毎回死体を焼き尽くすだけの能力がない。

 魔法師は数が少ないし、チームに居ても新人なら魔力量も少ない。

 毎回死体を燃やしていては魔力が直ぐに枯渇してしまう。

 魔法師以外は毎回死体を森の外まで運んだり埋葬していると、ただでさえ少ない稼ぎ時を逃してしまう。

 必然的にゴブリンからは魔石だけが抜き取られ、死体はそのまま捨てられる。

 本来なら罰則ものなのだが……ゴブリン程度の残党狩りに態々新人以外が出向くのも、時間や戦力の無駄なので、今回のようなケースのみ黙認されている。


 死体が増えれば負のエネルギーが溜まり、死体が再び魔物化。

 今度は死霊系の魔物になってしまう。

 なのでこういった新人の逃走魔物狩りの後には、ギルドから死体処理の依頼が出る。


 ゼノはゴブリンの死体を、亜空間に蹴り入れて吸収させている。

 亜空間に入った瞬間に吸収消滅しているので、内部に汚れが飛び散る心配はない。

 ゴブリンからは強さも魔石も得られていないが、亜空間は少しずつ広がっているのでゼノは満足していた。

 それと同時に無自覚で、ギルドがすべき事後処理にも貢献していた。

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