第7話 買い物1

 道中ミラが100イエン均一で買ったメジャーを手に、ゼノのサイズを測っていく。

 ボロ汚いおっさんは入店拒否されるのは目に見えているので、予めサイズを測りミラに購入してきて貰うしか方法がなかったのだ。


(まさか30にもなって、自分より10以上も年下の少女に下着まで一式買ってもらう事になるなんて)


 当然支払いはゼノの所持金から出されるが、それでも情けなさが胸に溢れてくる。


(万屋として金を稼げれば、衣食は街でなんとかなるし。住居も最悪、生活魔法の亜空間に住めばいい。何より大事なのは、この金を計画的に使い。文明人らしい生活に戻る事だ)



 シマクロだったかユニムラだったかで、ミラが買ってきたのはジャージとスニーカーだった。

 サイズを測ったとはいえ、実際に合わせていないので。サイズにゆとりがあり、戦闘万屋として動きやすい服を選んだらこうなったらしい。

 なおそれまで着用していたスーツ類は、過去との決別の意味も込めて近場のゴミ箱へと投げ込んだ。

 鞄の隠しポケットから、最後の頼みとして残してあった万札数枚は回収してからだが。


 銭湯に入った後、大型百貨店のフードコートでゼノはラーメンを。ミラはパスタをテーブルに乗せて、今後について話し合っていた。


「って訳で、生活魔法を使えば宿代は節約出来る。だから必要なのは金を稼ぐ手段と、十分な衣食が置いてある都市を拠点にする事だと思う」

「そうですねー…ちょっとトイレとかお風呂が気になりますけど。戦闘万屋なら外で用足しする事も覚悟していましたから、優先順位高めの改善点くらいで気に留めておきましょう」


 2人は生活魔法の亜空間の居住について話し合っている。

 最初は弱い魔物を倒して自分達も強くなり、魔物を亜空間に吸収させて亜空間を広くしていこう。

 そんな行動指針から相談を始めていたのだが。

 いつの間にか、快適な住環境の理想と妥協点についての擦り合わせに話題が変わっていった。


「トイレは災害用の地面に穴を掘って設置するタイプがあれば、排泄物も亜空間が吸収してくれるから。風呂も水を何処から持ってくるかと、どうやって湯を沸かすかが問題なだけで。排水とかは何とかなると思う」


「亜空間自体を一部変形させたりは出来ませんか?トイレの穴を底を深くしたり、お風呂は隔離する為に部屋にしたりとか」


 ゼノはテーブルの下で亜空間に左手首から先を入れて、ミラの考えを実行出来ないか調べている。

 その間も2人は、それぞれの麺料理を食べているので。よそから見ても何らおかしな所はない。


「うーん。可能だけど、まだ吸収させる魔石とかが少なくて。今はまだ無理、でも未来は明るいってところだね。それに今無理に内壁を作ると、亜空間が狭くなっちゃうみたいなんだ」


「ただでさえ四畳半くらいしかありませんからね、あそこ。となると、しばらくは各自のベッドとトイレ。入浴は街で銭湯に行くしかありませんかね?」


「浴槽と洗い場、それに脱衣場。全部込みで狭くても5メートル4方の面積は欲しいかな」

「ですねー」


 大まかな亜空間の設備も決まったので、2人はカトリにベッドを買いに行く事にした。

 食器をカウンターに返却して、トイレで手を洗ってから。お値段異常な家具店に向かった。

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