『26』
「皆んな〜、今日は騒いじゃおうっ!」
魔王レオンの
少ない食材を惜しみなく使った豪華な料理に舌鼓をうち、小さな歌姫セイレーヌの美声に癒される。結局最後は魔界スゴロクと洒落込む皆の笑顔は麗音に負けずとも劣らず。実に微笑ましい光景である。
魔界スゴロクの罰ゲームで顔に落書きをされたシルク、
そんな彼女を見て頬を染めて笑うサイ、
我を忘れて歌いまくる小さな歌姫セイレーヌ、
ケルヴェロスの首にぶら下がる三人の子供達と最年少のリリアル、
——そして、瀕死のケルヴェロス、
そんな楽しい時間は過ぎ、いよいよ、メインイベント、忠誠の儀が始まろうとしていた。
忠誠の儀とは、その名の通り新たな魔王に忠誠を誓う儀式。誓った者に、魔王の魔力を少量分け与えるといったものだ。
分け与えられた者達は魔王に忠誠を誓う。それこそ、魔王の為なら命も惜しまないと。
そんな決意を新たにする大切な儀式なのだ。
玉座にちょこんと座った魔王レオンの前で、黒髪三つ編みメイドのシルクが膝をつく。
「わたくし、シルクは新魔王レオンに忠誠を誓う事を、ここに誓います」
「あわわわ、ど、どうしたのシルク!?」
「ちょ、打ち合わせ通りにお願いしますっ……コソコソ」
「ふえぇ、なんだかやりにくな〜……うん、それじゃあ、いくよ」
シルクの前に立った麗音は、シルクに顔を上げるよう促した。ゆっくりと顔を上げたシルクが見たもの、それは太陽が目の前に降りてきたかのような、とんでもなく眩しい笑顔だった。
「よろしくね、シルク!」
「は、はいっ……(か、かわゆしーーっ)」
その瞬間、シルクの身体を光が包み込んだ。やがてその光はシルクの身体に吸い込まれるように消え、彼女に新たな力を授けた。
その力の詳細は今はまだ不明である。
続いてサイ、セイレーヌ、子供達にケルヴェロス、全員が究極の
全員に力を授けた麗音は少しふらつき、ぽふんと玉座に座る。魔力を分けるということは、つまりはそういう事だ。かなり消耗する行為という事。
この人数でこのザマなのだ。
魔界の住人全てに魔力を分ける事が出来るガチな魔王がどれだけ凄い存在か。それを身をもって味わった麗音だった。
「ふぇ〜……頭がクラクラするぅ〜」
「よく頑張りましたね、魔王レオン」
「上手にできたかな、なら良かったよ」
二人は顔を見合わせてクスッと小さく笑い合う。
「皆さん、レオンに新たな力をもらってこれまで以上に強くなれた筈。まだ実感はありませんが。
ただ、今ここにある笑顔はレオン、貴女がくれた笑顔です。胸を張って下さいね。だって、こんなに笑ったのは久しぶりですもの!」
シルクの瞳は微かに潤み今にも涙が零れ落ちそうだが、精一杯の笑顔を麗音にお返しする。
人間と幽霊の間に、切っても切れない絆の糸が結ばれた瞬間だった。
「わたくしはもう二度と……失いなくない……
何があっても……レオンはわたくしが守ります。絶対、必ず、この命にかえても……!」
その時——
魔王の間の立派な観音扉が開いた。
少し耳障りな音を立てて開いた先に、
——小さな、それでいて奇っ怪な影が確認出来た。
「……認めないのじゃ……っ……こんなの……」
奇っ怪な影は真っ赤な瘴気を纏い魔王の間に突風をもたらす。やがて視界が開けると襲撃者の姿が露わになる。
襲撃者は『大きく息を吸い込んだ!』
——!!!!
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