『16』
赤い
「いっ……や……め……いやっ……たすけ……」
暴れ回る少女、それを押さえ付ける大の男達はそのまま少女を跪かせ髪を乱暴に引っ張る。そして無理矢理に上を向かせた。
少女は首を横に振り、ソレを全力で拒否する。
赤い剣士は持っていた剣を砂浜に放り投げるとズボンのチャックを下ろし始める。依然抵抗する少女だが、無情にも拘束が解けることはない。
「オレさ、ちょっと性癖が偏っててさ」
剣士の言葉に青い魔術師が不愉快な笑い声をあげ思ってもいない言葉を吐く。
「あーあ、かわいそうに〜」
歪んだ笑顔の剣士を見たタンクの男は少女を羽交い締めにしながら悪態をつく。
「早くしてくれよな〜、後がつっかえてんだからよ」
「んだよ、結局お前もやんのな」
「うるせぇな……おいどんを誰だと思ってんだよ。こんな上玉の幼女は滅多にいないぜ。
「ハァハァすんなキモいわ。女、安心しろ、すぐに良くなるからよ〜ぎゃははは!」
絶望が再び少女の瞳を曇らせた。そして、
「はっ、覚悟決めやがったか。上手に出来たら殺さずに飼ってやってもいいぜ〜、ま、せいぜい楽しませてくれや、バケモノちゃん。自分が
「…………っ」
「ち、心を閉ざしやがったか。まぁいい、すぐこっち側に呼び戻してやるからよっ……お……おら……おら、おとなし、く……」
「いや……いやなのぉっ……」
「嫌じゃねーよ、こら!」
少女は極めて不快なソレを全力で拒否する。死に物狂いで口を閉じ抵抗した。それでもしつこくソレが頬を、唇を、容赦無く汚した。
少女は意を決した。
「なのーーっ!」
——真っ白な砂浜が瞬時に赤く染まった。
「ゔがぇぁぁぁっ!?」
「こ、こいつ噛みやがったぞ!」
赤い剣士が砂浜を転げ回りながら砂浜を赤に染めあげていく。黄色いタンクの男は少女を地面に叩きつけ叫ぶ。
「クソ野郎がぁっ、その歯全部へし折ってからにするかゴルァ!!」
「ゔえぇっ……げほっ……ゔぅっ……きたない、なのぉ……うえっ……けほっ」
「汚いだとっ……おいどん達の
タンクの男が丸太ほどの太さを誇る腕を振り上げる。あれが振り下ろされれば少女は無事では済まないだろう。
その後ろでは青い魔術師が必死の形相で回復魔法を発動している。
「ポイミーッポイミーッ!!!!」
しかし大事な
「だ、大丈夫だ、まだなんとか付いてる、気を確かにっ、ポイミーーー!!」
「ぬぎゅぁぁっ……く、そ……が……」
糞はアンタだ。それはさておき、
やがて回復魔法で血が止まった。赤い剣士は少しばかり落ち着きを取り戻し息を荒げてフラフラしながらも少女の元へ歩き脇腹を蹴り上げる。
タンクの男の拘束から離れては砂浜を無惨に転がった少女はうつ伏せで倒れたまま捨てられた人形のように動かなくなった。
赤い剣士は砂浜に放り投げた剣を取り鞘から抜いた。真っ白な刃に映り込む魔界の景色がその斬れ味を物語っている。
赤い剣士は少女の頭を立派な革靴で踏み付け、その剣を振り上げる。
「きっさんまぁぁぁぁっゆるざぁっんぞぉっ、オレのっ、オレのフォールィーステッに噛み付きやがっでぇっ……はぁ、はぁ……こ、殺した後にバラバラにして海に捨ててやるがばぁーーっ!」
剣士は発狂クラスの怒号を撒き散らしながら少女の小さな頭を何度も何度も踏み付ける。それも、少女の頭が砂に埋まる程の勢いでだ。
「おいおい、勿体ねぇな〜」
「知るかっ、このやろっ、人間様を舐めんじゃねーよクソガキ、楽に死ねると思うなよ!」
躊躇なく振り下ろされた剣は少女の肩を裂く。真っ赤な血が噴き出し朦朧としていた少女の意識は無理矢理現実という地獄に引き戻された。
叫びもがく少女。頭は依然踏み付けられたまま、無様この上ない体勢で足をバタつかせる。
ケタケタと笑い声が響いた。狂気に満ちたクソ野郎達の不愉快な笑い声だ。
赤い剣士は再び剣を振り上げ反対側の肩を斬らんと振り下ろした。
しかし、剣は
グルグルと回転しながら最後には砂浜に刺さる。
「なっ!?」
「やらせないよ!」
「何だぁっ貴様ぁっ!」
「わたしは陽向麗音、女子小学生だよ!」
少女と赤い剣士の間にいつの間にか麗音の姿があった。麗音の右手には縦笛が握られている。
赤い剣士の振り下ろした剣を弾き飛ばしたもの、それは正しく縦笛だった。麗音は自らの縦笛を見ては瞳をキラキラと輝かせた。
「おお、凄いや。やっぱりいせかいむそーだよ!」
赤い剣士は思わず後退した。目の前のあり得ない縦笛を持つ幼女に只ならぬ気配を感じ後退せずにはいられなかったのだ。タンクと魔術師が慌てて前に出て構える。
「な、な、何者だ!」
「だから言ったでしょ、陽向麗音、小学三年生だよ。女の子にこんな酷いことするなんて、サイテーだよおっさん!」
「おっさんだと……オレはまだ二十歳だぞ!」
「……はたち……よくわかんないけど、わたしからしたらおっさんだよ!」
陽向麗音、小学三年生、
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