第217話 エンド救出作戦1 留守番組
ロブとの昼食を終えて、モリーの件がまだまだ続きそうなことを知ってちょっとだけ憂鬱になった。
学校内である寮の部屋はいいけれど、クランに連れて帰るのはもう止めだ。
当分モリーは学校から出さずにソルちゃんのところで預かってもらおう。
ローザリア嬢がモリーのことを諦めるか、他のことに気を取られるようになるまでは。
それにしても、ローザリア嬢はどうしてロブに絡んでくるんだろう?
乙女ゲームのせいなんだろうか?
クランハウスに戻るといつもなら出迎えてくれる子供たちが来ない。
どうしたのか尋ねるとクランの軽作業班が総出で、あるお屋敷の片付けに行ってるんだそうだ。
そのお屋敷に一人でお住まいだった貴族が亡くなって、遠縁の人が相続したのだけれど、中がゴミだらけで入れない。
それで冒険者ギルドに掃除の依頼を出したのだという。
本当は職業ギルドの方に出したそうだけど、ゴミの片づけは冒険者ギルドの方がお得意ですよと断られたらしい。なんかわかんないけどヤな感じです。
それでその仕事がウチにやってきたんだって。
子どもたちと遊ばなかったので、ロブのことをモカに聞いてみた。
「バートルートはあんまり覚えてないんだけど。
でもローザリアの家って闇属性なんだけどアイツ火しか持っていないのよ。
だから学校でもトップクラスの闇属性を持っているクリスとバートのことはずっと気にしてるんだよね。
その2人のどちらかと結婚したら、闇属性の家を存続しやすいから。
でもクリスはグロウブナー公爵家の跡取りだし、アリアもいるでしょ」
「バートの方が手に入れやすいって思ってるってこと?」
「だと思う。でもバートだってディクスンの跡継ぎなんだから簡単じゃないけどね」
ロブは好きな人はいないって言ってたけど、モカの話が本当ならいるはずなのだ。
だからとても迷惑な話だ。
「ローザリア嬢って誰かのことを好きになったりしないのかしら?」
「一応いるわよ。大本命が」
「えっ? 誰?」
「いとこのユリウス」
「いとこだと結婚できないじゃない」
「関係ない。ユリウスの婚約者に火をつけて大けがさせて婚約解消させるの」
そんな……まるでニコルズさんが受けた暴力のようだ。
貴族ってやっぱり手段を選んだりしないんだ。
「でもそのことでユリウスはローザリアのことをものすごく嫌うの。
ユリウスのバッドエンドはまどかを守るためにローザリアを殺して自刃するの。
ユリウスは剣聖の称号をいただいてるのに、切る価値のない存在を切ってしまうから」
「ロブのルートは覚えてないのに、ユリウス様は覚えてるのね」
「ユリウスはリカルドとクリスの親友なの。
だからリカルドはちょいちょい出てくるし、その関係でサミーも出てくるから。
バッドエンドは亡くなった親友のためにあのリカルドが涙を一粒こぼすの。
そのスチルが見たくって、何周もしちゃったわ」
なるほど、最推しがらみでしたか。
「ありがとう、モカ。今日は夜遅くなるんだからちょっとお昼寝したら?
子供たちがいない今がチャンスだよ」
「うん、そうする」
「ドラゴ君は?」
「ぼくもちょっとだけ寝ようかな」
「ミラとモリーは私と起きてようね」
「みぃ」
フルフルとモリーが揺れた。
クランの夕食を終えてから、子供たちがやってきた。
お掃除してたはずなのに元気だな。
「エリーお姉ちゃん。みんなと遊びたい」
でも今日は貸せなかった。あとモリーは私のポケットの中に隠したままだ。
「ぼくたち今日は忙しかったから眠いや。明日にして」
ドラゴ君の一言に子どもたちからえっ~っと不満の声が上がったが、モカとミランダがウトウトしているので諦めるしかなかった。
「エリーお姉ちゃん、あんまりみんなにお仕事させないで」
いやあのー、一応彼らは従魔なんだけど。それに働かせてないし。
モカとミランダの眠気は演技だ。
でもそんなこと言えない。
今夜モカはエンドさんのところに忍んでいくのだ。
モカが心話でエンドさんと繋ぎを取ったところ、エンドさんは狂喜乱舞したそうだ。
是非モカの元に来たいとのことだが、エンドさんの身柄を正規ルートで入手するのが難しい。
それでエンドさんが自発的に逃げ出せるようにするため、モカとの従魔契約を正式なものにしてベリーニ魔獣店の召喚士との契約を棄却するのだ。
私の隠蔽ケープをドラゴ君が着て、モカと共に転移する。
モカも転移できるけど、もしもの時のために護衛としてついてってもらうの。
ドラゴ君が見張っている間に従魔契約して、モカとドラゴ君は先に私のところに戻る。
エンドさんは明日にでも隙を見て私たちのところに転移してくるという計画だ。
時間差にするのは魔獣商側が盗難に遭ったと訴えないように、自分たちで逃がしてしまったと思わせるためだ。
捜索されるだろうけど、その辺りはマスターがぬかりなくやってくれるそうだ。
過去視の出来るニコルズさんみたいな術師に見つからないよう痕跡を消すのだ。
私はこの計画には参加しない。
私が参加するとヴェルシア様の罪の印が体に出てしまうからだ。
だからミラとモリーとお留守番だ。
ドラゴ君のカバンにモカを入れて、私には発動しない隠蔽ケープを着せる。
あとエンドさんのためにローストオークをお弁当に入れた。
私がするのはここまでだ。
私の立ち位置は、計画を知る第三者と言うところか?
ちょっと苦しい気もするけど致し方ない。
「「じゃ、行ってくるね」」
「行ってらっしゃい」
そうして、ドラゴ君とモカは転移した。
「うまくいくといいなぁ」
「にゃぁ」
「そう言えばドラゴ君のいない夜って久しぶりだわ。ミラは初めてだよね」
「にゃ~」
「今日は私とミラとモリーの3人で寝ようね」
「にゃ!」
フルフルとモリーが揺れる。
「マスターはまだ早いとおっしゃるけど、私心話が出来るようになったらいいなと思ってるの。ミラも私とお話したい?」
「にゃー!」
「モリーはどう?」
モリーは強い肯定の時はいつもより多めにフルフルする。
「ふふふ、そうだよね。ちょっとだけ練習しようか。手伝ってくれる?」
「にゃにゃー」
モリーもフルフル多めです。
練習と言っても方法がわからなかったので、お互い戯れながら、ミラとモリーが思っていることを当てる練習をしただけだった。でもなんだかとても楽しかった。
2匹はなかなか帰ってこず心配だったが、ミラが大丈夫という仕草をするので信じてベッドに入った。
エンドさんと契約出来て、無事に帰ってきますように。
ヴェルシア様、私たちをどうかお守りください。
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