第45話 入学前にしておくこと

 

 学校が始まるまでにあと2週間弱。



 入学準備で制服はもう大丈夫だし、ラインモルト様にも私の服のサイズも送った。

 あとは教科書と授業で使う精霊石の購入。ロッドと武器と装備はとりあえずあるモノで行くし。



 そうそうリヒター子爵の調味料づくりもある。



 ハルマさんとシンディーさんにも会わないと。ハルマノート返さないといけない。



 あのダンジョンで出た白本は、私が1度記憶したものを複写できる本ということがわかったんだ。必要かどうかわからないけれどハルマノートは全部複写しておいた。

 


 あと私が使った魔法陣は自動的にグリモワール魔法書に登録され何度でも使えるということも判明。

 これはすごいです。


 魔法陣は陣を起動させることで使える魔法で、属性魔法の陣さえあればそのスキルを持っていなくても使うことができる。ただし魔法陣を専用紙に1つ書けば、使える魔法は1回限り。

 持続性の魔法にはいいけれど、攻撃魔法のように何度も繰り返し使うものには向いていない。


 でもグリモワールを使えば私にはない火魔法の魔法陣だって繰り返し使えるのだ。

 ただし、使ってない(危険すぎる攻撃魔法とかね)魔法陣をグリモワールに書くにはあの特別なペンがなくてはならず、初回特典の宝物のありがたさが身に染みてわかってきた。



 ありがとう、ダンマス。また会いたいな(顔も知らないけど)。



 それから土魔法のマジックスクロールは自分で使うことにした。

 ビリーが自分の持っていない魔法なら人にあげるなんてもったいないから使えとのこと。レシピスクロールが拾えるダンジョンにもたまに出るので、金貨よりは心配しなくてもいいんだって。

 


 相談できる人がいるって安心だね。信用しすぎかな?

 でもビリーは私よりずっとすごいもの。

 なんでも持っているし、魔力だって多分1000倍以上ある(100倍以上って言ったら笑われちゃった)。

 それになんだかとっても安心できるの。

 不思議だね。初めて会ったときは殺されるかもって思っていたのに。



 そうだ、ルイスさんの蜂蜜樽6樽もあるのもどうしよう。

 一応、討伐した犯罪者の財産は討伐者の私のものだからネコババしたことにはならない。樽に破壊防止の付与がかかってるからこぼれたりはしないんだけど、このマジックバッグは時間経過あるしな。

 転売か、軽作業組が出来る商売に使うか。

 おいしい蜂蜜菓子なんかどうだろう。ルイスさんが食べたくて化けて出るくらいのやつ。お肉も好きだったから、ソースに蜂蜜を使うのもいいかもしれない。

 これはルードさんに相談しよう。



 ああそうだ、蜂蜜入りのリップクリームを作ろうと思っていたんだった。

 シンディーさんとクララさんにプレゼントする用だったんだけど、これなら薬師スキルがなくても作れるから、軽作業組でもいいはず。

 あっ、でも蜜蝋が少ないな。蜜蝋がないと柔らかいクリームで溶けやすいし。



 でとりあえず、あるだけは作ることにした。



 まずクリームを入れる小さな蓋つき容器を煮沸する。こうすると清潔になってクリームが悪くなりにくいから。

 小さな鍋に蜜蝋とオリブの油を溶かし、蜂蜜もほんの少し入れてよくかき混ぜて容器にいれて冷ますだけ。

 冷めたら自然と固まるので蓋をして、おしまい。



 すごく簡単だし、ニールでも人気商品だったんだけど、良質の蜜蝋が必要で高価になってしまうんだ。



 器具を水魔法で洗って片付けると、部屋のドアがノックされた。

「どうぞ」

「エリーお姉ちゃん。忙しい?」

「そんなことないよ。どうかしたの?」

「あのね、絵本読んでほしいの」

「いいよ」



 わーい!と歓声をあげて入ってきたのは、獣人の子どもたち。

まだ軽作業組にも入られない小さな子たちで、一番暇な私がときどき遊び相手になっている。

 この中の狐獣人のサンディーちゃんと犬獣人のロットくんはあの誘拐犯たちに捕まっていた子たちだ。なんでも明るい毛色の獣人の子どもたちが何人も誘拐されていたという。

 自衛のためだったけど、結果的にこの子たちを守ることができて本当によかった。



「ねぇねぇ、このお姫様のご本よんで」

「違うぞ、こっちの本読んでもらうんだ」

「はいはい、順番ね。前はジュディで終わったから次はサンディーからかな」

「はーい」



 この読み聞かせの時間は別の楽しみがある。



 それは、モフモフ♡



 みんな本を読むとき私の膝の上に座りたがるのでそうするんだけど、その時のみんなのしっぽがモフモフふわふわでもう触っているだけで幸せなの。

 獣人の子どもってニールにいるときは全然会わなかったんだけど、本当にみんなかわいいの。



 特にサンディーちゃんの黄色くて太めのしっぽはたまんないです。まだ5歳だけどお顔もものすごくかわいくて、多分彼女は大きくなったらものすごい美女になること間違いない。

 誘拐犯に目を付けられるのも頷ける。



 ビリーにそう言ったら、「そうかぁ?」だって。

 もう!わかってないなぁ。



「モフモフかぁ」



 従魔の卵を見てそろそろ魔力と愛情を与えないといけないと思って眺める。

 これから学校でずっと一緒にいるのなら側にいる人達からも好かれる愛らしい姿でしかも強い従魔がいい。

 でも自分の好みでなくてもこの子は私の初めての従魔で、私はこの子とずっと一生お付き合いをするんだ。

 だからどんな子でも受け入れよう。たとえワームみたいな子でも。

 それに私の方の事ばかりでなく、私は従魔に好かれるのかなぁ。今まであんまり好かれたことがないので心配。



 ビリーにそういうと、

「ウチのちび共には好かれているだろうが」と取り合ってくれない。

 そうなんだけど。

 


 やっぱり不思議……。

 このクランの中は私の知ってる世界とはちょっと違うの。

 どんな人でも仲間なら受け入れる。そういう土壌がある。

 


 これはきっとビリーとその仲間で作り上げた特別なもの……。

 そんな気がする。






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