第8話 わからないなら自分で考える
初めての冒険者活動の翌日は少し早起きして昨日採取した薬草で下級のヒールポーションを作り始めた。
薬草は出来るだけ新鮮なうちにポーションにした方が薬効はいいのだがさすがに疲れすぎてできなかった。
丁寧にジギリ草とタミル草を別々にすりつぶし、魔法水の中で混ぜ合わせ少しだけ過熱し濾すと出来上がる。
魔法水の作り方は普通の飲み水に水の精霊石を入れて作っていたが、水魔法を使えるなら自分で作れるのかもしれない。
でも母さんは魔法を教えてくれなかった。
朝食の時に、
「母さん、今日は魔法を教えてくれる?」
「いいえ、魔法は教えない。エリーはまず体で戦うことを覚えてほしいの。それから身体強化を覚えてもらうわ」
「身体強化?」
「これを使うと飛躍的に能力は上がるわ。でも元々の体の能力に比例するの。
身体強化を覚えてから体を鍛えることはとても難しいわ。
今はつらいけれど私とルノアの鍛錬を受けてちょうだい」
「わかった」
魔法が習えないことはすごく残念だった。
調薬で使っている精霊石は薬師のマギーおばさんが誤って割ってしまったもののかけらで、いつ使えなくなるかわからないからだ。
でもルノアさんとの鍛錬は1か月。その後すぐに覚えたらきっと間に合うはずと考え直した。
昨日と同じ草原に来てラビットを狩るのかと思いきやルノアさんから質問された。
「エリー、ラビット(どこにいるか)わかる?」
ルノアさんはますます言葉数が少なくなった。
それで昨日の薬草を探したときと同じように目を凝らすと、ラビットの居場所が分かった。
「では他(の魔獣)は?」
周りをじっくり見渡してみたが、ラビットしかわからなかった。
「(育ってない)鑑定は知ってるものだけ(しかわからない)。覚えてほしいのは索敵」
「索敵?」
「敵を見つける能力。(敵の居場所さえわかれば)戦わず逃げることもできる」
それを覚えれば私一人でも採取ができるかもしれない。
「それで索敵はどうやってやるのですか?」
「直接見る、気配を感じる」
「ええっと、その気配を感じるにはどうすればいいのでしょうか?」
「普段と違うものを感じる」
その普段とは違うものはどうやって感じたらいいのかが知りたいんです。
うーんやっぱり苦情が来るよな、ルノアさん。
ヴェルシア様、私に索敵出来るようになるんでしょうか?
◇
そんな心配をよそに私は思ったよりも早く私は索敵が出来るようになった。
普段と違うものを感じるというヒントに魔獣と他の動物の違いを考えたおかげだ。
昨日は結局索敵出来なかったがラビットの解体を学んだ。
まず血抜きをし、外側をよく洗う。
次に内臓を取り出し、中をよく洗う。
さらに皮をはいで使いやすい大きさに切って、腐らないようバンブルの葉で包む。
ここまでやって冒険者ギルドに納品すると買取金額がアップする。
逆に言えば丸のまま納品したら解体代を取られているのだ。
初めから解体したことはなかったけれど、兎の丸焼きを作ったことがあるのでわかる。
魔獣のラビットと獣の兎はほぼ同じ体のつくりで、違うのはラビットの心臓の中に魔石があることだけだ。
魔石つまり魔力を溜める石があると言うことは魔法を使えなくても魔力を持っているということになる。
だから魔力の動きを鑑定で見ることができれば魔獣がどこにいるかわかるかもしれない。
そう思って周囲の人々から魔力のない人とある人を探すようにした。
魔力が全くない人はいないけれど、母さんや私のように使えるほど多い人は少なかったので見極められるようになった。
属性魔法ごとで見える色も違うことにも気が付いた。
それを応用して周囲を見渡してみると、魔力を発するいろいろな動物たちや場所がわかった。
同じ能力のある動物は同じ色で感じるし、動かない場所は黒っぽく感じた。
その場所に行くと薬草が生えていることが多かった。
次の日、ルノアさんと狩りに来てすぐに索敵ができたので無表情ながらも驚かれてしまった。
「エリー、天才?」
「違います。魔力の流れを見たら魔獣がいるところがわかるんじゃないかと思って」
「それでもすごい。リノアに私の説明ではできないと叱られた」
出来る限りしゃべらないルノアさんが結構しゃべったのでよほど驚いたみたいだ。
とにかくルノアさんの説明は簡素で言葉が足りないが、自分で考えて試してみてそれでわからなければ質問する方式でいいだろう。
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ルノアさんのセリフの中の()はエリーが脳内で補足説明したものです。
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