第5話 錬金術師は生産研究職?

  

 ヴェルシア様、私は今母さんと冒険者ギルドの鍛錬場にいます。



 話し合い後すぐに冒険者ギルドで私の登録を済ませ鍛錬場を使うことになった。

 まずはどの武器が私にピッタリなのかを調べるためだ。

 鍛練場はだだっ広い運動場のようなもので、壁側に貸し出し用の古い武具が置いてあり、天井は天幕が張ってあるだけだった。奥の方には練習用の的が用意されて、鍛練場を予約したものなら自由に使って構わなかった。



「エリーは基本的に魔法で戦うことになると思う。

相手によっては魔法が効きにくいこともあるし、魔力切れを起こして使えなくなることも考えておく必要があるわ。

それに魔法を使うときにロッドを使うのなら手が空いている方がいいと思うの。

だからずっと持ってないといけない盾は向いてないと思う。

あと今は背が低いし、長かったり重かったりする武器はふるえない。

つまり長剣、槍、戦斧も厳しい。

そうなるとおすすめはナイフ、短剣、弓矢ね。

ただし弓矢は遠距離向きの武器だから、接近戦には向かないけど」



 というわけで小さな子供用の弓矢をつがえている。

 しばらくやってみて3、4メートルぐらいなら当たるけれど、それ以上になると離れるとすぐ下に落ちてしまう。

「うーん、センスがない訳じゃないんだけど、すぐにものにするのは難しいわね。

でもエリーは的に当てるのとてもうまいわ。投げナイフとかいいかもしれない」



 それから投げナイフの練習を始めた。ナイフは母さんが騎士科時代に持っていてあまり使ってなかったものだ。

 持ち方は各自やりやすい方法があるらしいがとりあえず親指と人差し指に挟む方法を教えてもらった。


「ここだと回収できるけど、本当に戦闘状態になったらナイフは回収できないと思っていいわ。

だからみんな安いものを買いがちなんだけど重心がちゃんと真ん中にないとナイフが回転しちゃって当たらないの。

回転しても当てられるぐらい経験を積んでいたら別だけど。だからこれを使うときは危機的状況だけね。

エリーがリターンの魔法を付与できるようになればバンバン使ってもいいけど」

「わかった」

「投げナイフだけで敵を仕留めることは出来ないと思っていいわ。

傷つけるのがせいぜいね。

だから毒やしびれ薬を塗って相手の動きをゆっくりさせるのに使うといいわ。

つまり、食用・薬用に納品する場合は絶対に使えないということ。わかった?」

「うん」



 これも大した距離は出なかったが弓矢をつがえるよりは早く投げられるので、サブウエポンに採用。



「メイン武器はそうなると短剣ね。短剣ちょっと持ってみて」

 マリアが手渡した短剣を受け取るとその重さに驚いた。

「えっ、重い」

「大人用だからね。でもそれなりに重くないと威力が弱いの。

短剣の使い方は2つ。『刺す』と『切る』よ。

切るのは難しいわ。厚い皮や鎧を着ていたら傷つけることもできない。

だから首の側面の血管があるところを切るの。

一番効果的なのが刺すよ。

こういう皮鎧だったらつなぎ目があるでしょ。そこを狙って刺すの」

 そういって母さんは自分の着ていた鎧のつなぎ目の隙間を示した。



「ねぇ、母さん。わたし2か月でどのくらいできるようになればいいの?」

「そうねぇ、Eランクに昇格して一人で薬草採取に行けるくらいにはなってほしいの。

そうすれば王都の側のアランカの森で取ったものを納品できるし、エリーは薬も作れるからそれを売ってもいいと思う」

「そのアランカの森は魔法が使えないところなの?」

「いいえ、基本的にはラビット、ボア、ウルフが多いわね。

鳥ならクロウやホークも出るかもしれない」

「母さん、一応短剣も投げナイフも練習するけど魔法をやった方がいいと思う。

動きの速い動物に対応するのに1年でも足りないと思うの」


「そうね。でも学校ではダンジョンに潜らないといけないから。

使える武器は多いに越したことないの」

「ダンジョン?」

「そうよ、騎士学部と錬金術科のある魔法士学部は必須よ。他の科は希望者だけだけど」

「ちょっと待って!錬金術師って生産研究系のジョブじゃないの?」

「そうだけど特殊な素材が必要な時は自分で取りにいかないといけないし、ダンジョンにはレシピスクロールが落ちていることもあるから、探索ができない錬金術師なんていないわ」



 錬金術師になるなんて勉強以外の部分で無理な気がした。


 

 ヴェルシア様、本当にこの私でできるんでしょうか?



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ナイフ投げについて正確な情報ではないとご指摘をいただいております。

詳しくはコメント欄に返信いたしましたが、作者に正しい情報を調べるすべがないため、誠に申し訳ございませんが本文の訂正は致しません。

これが正しい情報だと鵜呑みになさらず、楽しんでいただけると幸いです。









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