帰り道に、拾った子犬③
翌日の学園ではさっそく子犬に関する問い合わせをする人たちが多かった。中には花音と仲良くしたいからという下心が見え見えな生徒もいた。そういう下心があったとしてもちゃんと子犬を大切にしてくれる人ならいいのだが……。
そのあたりの見極め方って結構大変だと思う。
仮にも生物の命を預かるわけだからちゃんとしてほしいけれど……。
花音は良い飼い主を見つけなければならないと張り切っている。
「良い家で可愛がってもらいたかけん、ちゃんとさがさんとねー」
「そうだな」
昼休みに花音と一緒に話す。
それにしてもこうやって子犬の飼い主探しなんてやるのは初めてなので、ちゃんとした相手にひきわたせるかなと少し考えてしまう。これでどうしようもない相手に引き渡して悲しい結末になったら嫌だしなぁ。
「きー君、どうしたと?」
「ちゃんと良い飼い主を探せるかなって」
「ふふっ。きー君は心配性やね? 大丈夫よ。ちゃんとした人を選んで、飼い主になってもらって、その後、時々遊びに行かせてもらえたら分かるけん、問題なかよ。それにしても飼いたいって言ってくれとー人、結構おんね」
一人一人に確認して問題ない相手を探すこと。
それには結構な労力がかかりそうだ。
「一人一人直接対応すっと大変かもしれんね。いっそんこと、あまりにも問い合わせが多かったら面接とかみたいに書類でも出してもらった方がよかかなー?」
「なんか、本当にバイトの面接とかみたいだな……」
「うん。だって今でも結構問い合わせきとったい。こんな調子やったらもっと問い合わせくっとじゃなかと? そうなると大変やん」
「まぁ、確かにな。そうするか」
「うん!! えへへ、なんかそういうのしたことなかけん、こっちが選考する側って面白そうよねー。書類沢山見るのも楽しそうやし」
花音はすっかり、書類選考形式をやる気満々のようだ。
なんというか花音は本当に何でも楽しむようなそんな性格をしているので、選考する側をやることが楽しそうと思っている様子である。
というか、来ている問い合わせの中には他校の生徒だったり、校外の人だったりもあるので、結構子犬の飼い主募集というのは広まっているのかもしれない。
花音が有名だからというのもあるだろうけれど……。本当に花音って影響力があるなぁと思う。
「ねーねー、きー君、校内にチラシ作ってみようよ。そういうの作成するの楽しそうやもん」
花音はそんなことを言いだした。
「チラシ?」
「うん。校内に張るようのものにしようよ。それでね、この情報書いて書類出すんよって書いて、出してもらうと! 窓口は私かきー君ってことにして、それで出してもらった中から、子犬の飼い主に相応しかって人は面談みたいな形にして実際に話してみてって感じにしたら効率よかと思う! あとチラシとか作ったことなかけん、作ってみたかーって思っているからってのもあっとよ」
張り切っている花音はチラシを作成したいと目を輝かせている。本当に楽しそうで、やる気満々で俺も笑ってしまう。
「もうそろそろ昼休み終わるけん、また放課後決めよ!」
「うん」
話している間に昼休みが終わったので、それぞれの教室に戻った。
花音は校内にチラシを張りたいって言っていたけれど、校内にチラシを張るのならば許可をもらわないと駄目だよな? と午後の最初の授業中に思った。
勝手にぺたぺた張っていたら多分教師に怒られてしまうだろう。もしかしたら先に花音が許可をもらっているかもしれないけれど……、俺もチラシを張っていいか先に聞いておこう。
そう思ったので担任に事情を説明して、チラシを張っていいか確認しておいた。
担任にも花音と俺が子犬の引き取り先探しをしていることは知られていた。というか、花音の影響力が強すぎてほぼ全校生徒が知ってそうな勢いだった。
担任は「確認する」と言ってくれていて、放課後になる頃には「問題ない」と返答をくれた。
「きー君、かえーよー」
放課後になって花音が迎えに来たので、そのまま帰路につく。
「花音、もう許可もらっているかもだけど俺の方で担任に確認してチラシを校内で張っていいって許可もらったから。どこの掲示板に張るかもちゃんと聞いておいた」
俺がそう言ったら、花音ははっとした顔をする。そして次に、満面の笑みを浮かべる。
「全然、許可とか考えとらんかった!! きー君は、そういう所も気が回ってすごかねー。ありがとう! 私、チラシ作ったらよかなーって、楽しそうってそればっかり考えとって、そこまで気が回っとらんかったもん」
「チラシ作った後に張ったらダメだって言われたら困るなって考えたら許可いるよなって思ったんだ。家戻ったら早速チラシ作るか?」
「うん!! 目を引いて分かりやすかもの作りたかねー」
そうやって微笑む花音は本当に楽しそうにしていた。
それから家に戻って、早速チラシ作りをすることになった。
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