梅雨、勉強をする ①

 修学旅行から少しが経ち、梅雨がやってきた。

 今日は休日。外では雨が降っている。

 今年の梅雨は毎日のように雨が降っている。




「凄い雨ふっとねー」

「うん。花音は雨でも楽しそうだね」

「うん。だってきー君がおるもん。きー君がおったら天気なんて正直なんも関係なかし」



 花音がそう言ってにこにこと笑う。



 なんというか、本当に花音の笑みは花が咲くような――周りを明るく照らすような笑みだと思う。

 いつだって前向きで、いつもにこにこしていて、嬉しそうに俺に向かって笑いかける。

 そういう花音だからこそ、俺は好きなんだなって改めて思う。




「きー君、なん、わらいよっと?」

「花音のことが好きだなって思っただけだよ」

「私もきー君のこと、すいとーよー!!」



 俺の言葉を聞いた花音は、満面の笑みを浮かべてそう返してくれる。

 そんな風に笑う花音を見ると、俺も頑張ろうって気になる。




 今日はこれから受験勉強をする。今の所、判定は悪くないけれど油断をして落ちてしまうのは困るから。




 まだ高校生の俺は大学生活というのがまだ想像が出来なかったりもする。

 でも来年の今頃、大学受験に成功していれば俺も大学生活を謳歌しているんだろうな。

 受かったら在学生の凛久さんに色々案内してもらおう。

 そんなことを考えながら勉強を進める。特に苦手な教科に関しては念入りに進めていく。

 点数が少しだけ足らなくて、落ちるなんてことになったら悲しいからなぁ。




 俺が勉強をしている間、花音は静かに過ごしていた。別に騒がしくしていても問題ないのだけど、花音曰く「きー君の勉強の邪魔はしたくなかけなんね」と言っていた。



 時々花音の方をチラ見すると、音を立てないように行動していて思わず笑ってしまった。

 勉強している俺の所にいても気を遣うだけじゃないかと言ったこともあるけれど、花音はそれでも俺と過ごしたいと言ってくれたのだ。そういう素直な所が花音の可愛い所だと思う。

 あとは俺が勉強に集中しすぎていると、そっと飲み物やお菓子を机に置いてくれる。




「きー君、結構時間たっとよー? そろそろ休憩せん?」



 あんまり勉強ばかりしすぎても、ということで俺のことを休憩させようと俺の視界の端でちょこまかしていたりもする。




「そうだな。休憩する」

「やった! じゃあ、きー君、私に構ってほしかー」



 花音はそんなことを言いながら嬉しそうに声をあげる。



 俺がソファに腰かければ、花音もすぐに隣に来る。

 嬉しそうに鼻歌を歌いながら隣に座る花音は、ご機嫌そうだ。





「ねーねー、きー君。ちょっとアニメみよー! 録画しとったやつ。気分転換になっけんね」

「うん」



 花音の言葉に頷いて、休憩がてらに録画していたアニメを見る。





 このアニメには花音の好きな声優さんが出ているみたいで、花音は楽しそうにしていた。俺も原作は見たことがないけれど、気になっていたアニメだったので楽しく見ることが出来た。

 一話見終わった後にまた勉強をしようとして、花音に「きー君、きー君、今のアニメの台詞、言ってほしか!」とせがまれた。

 一度だけ見たアニメなので、俺は台詞を完全には覚えていなかった。でも花音は完璧に覚えてみたみたいで書き起こしてくれた。

 花音に頼まれると断る気もないので、ちょっと恥ずかしいけれどアニメの台詞を口にする。






「ふふっ、やっぱりきー君の声はよかねー」

「花音が楽しそうで俺も嬉しいよ」

「きー君はちょっと恥ずかしがっとるけど、私が頼むと台詞言ってくれるもんね」

「花音が喜ぶから」

「なんかそんな風に言われると、きー君に私愛されとーなーって嬉しくなる!!」





 そんな風に言って、にこにこと笑う花音は本当に素直だと思う。





「花音もやってみるか?」

「私も? 私、きー君ほど、よか声じゃなかよ」

「花音の声は可愛いよ」




 なんとなく、花音が台詞を言っても楽しそうだなと思って提案する。



 俺の言葉に花音は嬉しそうに笑うと、「じゃあ、私もやる!」と言って、先ほどのアニメの台詞を言い始めた。

 抑揚がついていて、凄く迫力があって……、本当に花音はなんでもできるなぁと思った。





「こうして好きなアニメの台詞口にするのもたのしかねー」

「花音はなんでもできるなぁ。凄い良かった」

「きー君に褒められるとより一層楽しかね!!」





 花音とそんな風にアニメの台詞をいう遊びをした後、花音の作ってくれた昼食を食べた。

 今日は肉じゃがや焼き魚などを花音は用意してくれていた。


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