修学旅行の後 ①
「……花音、じーっと見ていてどうした?」
帰宅して、修学旅行に持っていった荷物を整理していたら花音が何をするわけでもなくじーっと俺を見ている。
「久しぶりのきー君だーって思って!!」
「ちょっとうずうずしているように見えるけど」
「だって、数日おらんかったきー君がおるもん。私、今にも飛びつきたかとよ?」
花音が心なしかうずうずしている様子だったので、どうしたんだろうと思っていたらそんな可愛いことを言われた。花音は本当に可愛いなと俺は思わず笑ってしまう。
「花音、おいで」
俺も花音がいなかったのが寂しかったので、手を広げてそんなことを言ってしまう。
「良い声でそがんこと言われたら飛びつくにきまっとったい!」
花音はそんなことを言いながら俺に飛びついてきた。ぎゅっと、俺に抱き着いてくる。
「はぁ、きー君だぁ。久しぶりのきー君。きー君に出会ってからずっと、きー君と一緒におったけん、凄く寂しかったんよー」
「うん、俺も寂しかった。朝から花音の元気な声が聞こえないなぁとか、花音の姿が見えないなぁとか……たった数日なのに、俺も中々重症だなって思った」
「ふふっ、同じやね!! 私はまだきー君のベッドとかで、きー君のにおいを堪能できとったけれど、きー君は私を堪能できんかったやろ? もっと色々堪能してよかとよ??」
俺に抱き着いたままの花音は、俺の方を見上げてそんなことを言う。
「うん。堪能する」
そう言って俺が抱きしめ返せば、花音は嬉しそうに笑っていた。花音の体温が温かくて、心地よい。
花音が俺の腕の中にいるんだなって、その事実が本当に嬉しくて、幸せだなって実感する。
花音にキスをしたら、花音は嬉しそうに笑っていた。俺が修学旅行中、ずっとみたいなと思っていた花音の笑みに、俺も笑った。そうやって花音とくっついていたわけだけど、冷蔵庫にすぐに入れた方がいいものを思い出して俺ははっとした。
「花音、ちょっとお土産冷蔵庫に入れるから、一旦離れて」
「えー。んー、じゃあ、また後でくっついてよか? 私、きー君にずっとくっついときたかもん!!」
「うん。俺も花音とはくっついときたいし」
「えへへー。本当にきー君、寂しかったみたいやね? きー君の彼女である私に思う存分甘えてよかけんね? 私は幾らでもきー君を甘やかすけんね! もう、どろどろになるまで甘やかす!」
花音ははにかむように、嬉しそうに笑っている。
うん、俺も花音と数日離れていただけですっかりいつもより花音に甘えそうになっている気がする。
俺が冷蔵庫にすぐに入れた方がいいものを入れていく。とりあえず冷やしておけばこれで問題ないだろう。それにしても思い出してよかった。久しぶりの花音とくっついているのに夢中で、食べられなくなったら悲しいからな。
それにしても改めてお土産を取り出してみると、俺は花音へのお土産を買いすぎな気がする。
「きー君、凄くお土産沢山かっとーね」
「ほとんど花音へのお土産だぞ」
「私への? 結構沢山あんね」
「お土産買う時に、花音がどれだと喜ぶかなってそういうのばかり思ってたから」
「きー君、修学旅行中もずっと私のこと考えてくれとったとね? 私もずっと、きー君のこと、かんがえとったとよ。早く帰ってこないかなーって。それにきー君の声きけんとも悲しかったし、やっぱりきー君が隣にいた方がよかって実感した」
花音も同じことを考えてくれていたと思うと、それも嬉しい気持ちになる。俺も花音が隣にいた方がいいな、幸せだなって修学旅行でちょっと離れただけなのに思っていたから。
それにしても母さんや父さんたちへのお土産よりも、何倍も多く花音へのお土産を俺は買っていた。
「あ、そういえば凛久さんにお土産渡すの忘れてた」
お土産を取り出しおえた後に、先ほど帰った凛久さんにお土産を渡すのを忘れていたことを思い出した。
「お兄ちゃんへのお土産はいつでもよかよ。どうせ、またくるけん」
「一応、連絡だけしておくか」
忘れていたけれどお土産あるので、次に来た時に渡しますとそれだけ連絡しておく。凛久さんはすぐに返事をくれた。……また明日来るとかいっている。
花音の方をちらっとみる。
「花音、凛久さんが明日来たいっていってるけど」
「だーめ! 折角数日ぶりにきー君が帰ってきとっとよ? 折角きー君を久しぶりに独占できるとに、お兄ちゃんが来たら嫌やもん。私、電話してくる! ダメっていってくっけん」
花音は俺の言葉を聞いて、自分のスマホで凛久さんに連絡し始めた。
花音は少し離れた場所で電話をしていたのだが、「だめやけんね!」「お兄ちゃん、私はきー君といちゃいちゃすっと!」「来週ならよかよ」とかそんなことを言っている花音の声が聞こえてきた。
電話を終えた花音は、「よし、明日もきー君を私が独占すっけんね」ってにこにこしていた。ちなみに凛久さんからは「来週は絶対行く」って連絡が来ていた。
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