修学旅行 ⑩
今日は修学旅行の最終日である。昨日の夜に倉敷と三瓶が付き合いだしたということで、今日も二人はぎくしゃくしている。照れとか色々あるのだろうと思う。でも時折目を合わせて笑いあったりしているので、見ているこっちがむず痒い気持ちにもなる。
……俺と花音もこういう雰囲気を醸し出していたりするんだろうか。でも幸せなのは良いことだし、この二人が仲がよさそうなのはいいことだと思う。
同じ班でその雰囲気を出されてあてられると、すぐにやっぱり花音に会いたいなって気持ちが大きくなるけれど。
朝から朝食を食べた後、歴史的建造物の並ぶエリアを見て回ることになっている。お寺や教会、西洋風の建物などが沢山並んでいる。こういう異国情緒あふれる光景を見ているとなんだか海外にでも来たような気持ちになる。
そのエリアを散策してみて回る。
倉敷と三瓶の二人は、少しずつぎこちなさをなくしている。ただ手を繋ごうとして、慌てて手を離すとか、距離感をつかみかねている雰囲気はあった。なんだか青春しているなぁなんて思う。
教会の前で二人の写真を撮ってあげたりもする。
三瓶が「教会での写真なんて結婚式みたい……」なんて呟いて、二人して顔を赤くしていた。確かに教会とかで写真だとそういうイメージあるよなぁ。
実際に教会で結婚式をあげている場にも遭遇して、ウエディングドレスを着た今から結婚する夫婦を見ていると幸せな気持ちになった。特に一緒にその場を目撃していた女子たちはキラキラした目でそれを見ていた。
三瓶も「いいなぁ」と呟きながら彼らを見て、その後恥ずかしそうに倉敷の方を見ていた。付き合いだしてすぐだけど、結婚出来たらみたいに考えているのかもしれない。
歴史的なエリアを探索した後は、タワーに上った。そのタワーから見る景色はとても綺麗だった。五稜郭も見えたりして、上空から見るとこういう光景なんだと楽しい気持ちになった。
そうこうしているうちに時間は過ぎて行って、自由時間が終わり昼食の時間になる。学園が予約していたレストランで食事を取る。これが修学旅行最後の食事である。
わいわいと楽しそうに皆が喋っている。結構カップルが成立したからか、男女二人で良い雰囲気を作っていたり、カップルが成立したことをからかわれていたりしていた。
――これで修学旅行も終わりか、と思うと寂しい気持ちもある。でもそれより花音に久しぶりに会えると思うと楽しみな気持ちの方が大きかった。来年、花音が修学旅行に行くときも俺はこんな風に寂しがりそうだなぁなんて想像がついた。
まぁ、その時には俺も大学生になっているから今よりも花音と過ごす時間が少なくなっているかもしれないけれど。
食事を取った後は駅へと向かい、最後のお土産を買う。数時間ぐらいなら持ちそうなので、保冷剤をもらってプリンなども買った。花音が喜んでくれる顔を想像すると、大量にお土産を買ってしまっている。正直自分でも買いすぎだと思う。
帰りの新幹線の中では、途中までゆうきたちと話していて起きていたのだが、気づけばぐっすり寝てしまっていた。
「喜一、もうすぐ着くぞ」
そんな言葉と共に目を開ける。
北海道から東京までの新幹線は結構長時間だったのだが、気づけばほとんど寝ていたみたいだった。
それから、東京に到着した。
その後、貸し切りバスで学園まで向かって解散になっている。学園までバスで向かったら、迎えの車が結構並んでいた。荷物が多いから親が迎えに来ているのだろう。
俺はというと、
「きー君!」
「喜一」
花音と凛久さんが迎えに来てくれていた。
「花音!」
俺が花音の名を呼んで近づくと、花音は満面の笑みを浮かべていた。
「きー君、お帰りなさい!」
「ただいま」
こうして花音に向かって、ただいまと口にできることが幸せだなと俺は思うのだった。
それから帰宅する。荷物が多いからか凛久さんが一部持ってくれた。ちなみに修学旅行中、凛久さんは本当に毎日花音のもとにやってきていたようだ。的場先輩は流石に毎日ではなかったらしく、今日はいないらしい。
あと「お兄ちゃん、きー君の荷物持ってくれてありがとう。でも、きー君と久しぶりに二人っきりになりたかけん。帰ってほしかー」って花音に言われて、凛久さんはちょっと落ち込んだ顔をしていた。でもその後すぐにキリッとした顔をして、「喜一、久しぶりだからってはめははずすなよ。俺は帰る」といって帰って行った。
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