修学旅行 ⑤
朝からバスで移動である。向かっているのは、山である。
バスに乗っている間も、朝から皆ハイテンションだった。やっぱり修学旅行だから皆いつもと様子が違う。
バスが目的地に到着する。此処からロープウェイに乗る。
ロープウェイに乗って、上の方まで登れるらしい。こういうロープウェイってあまり乗らないから、ちょっと落ち着かない。
下を見ると、何だか落ち着かなかった。結構どんどん上に上がるから、少しビビりそうになる。
クラスメイトの中には、ロープウェイからの写真をパシャパシャ撮っている人もいて、俺も一枚だけとってもらった。そして撮った写真は花音に送っておく。
それにしてもこうしてクラスメイト達と一緒にロープウェイに乗りながら色んな会話を交わすのも楽しいな。
「このあたりって熊が出たりもするんだって!!」
……クラスメイトたちのそんな言葉にちょっとぞっとしてしまう。
でも北海道とか東北とか、そのあたりだと熊とか出るのも当たり前なのかもしれない。前にニュースで熊に襲われたというのも見たことあるし。
滅多に遭遇することはないだろうが、遭遇した時のことを考えておかないと……などと少し心配になった。
「上林は熊に遭遇した時のことを考えているのか? 会ったらまず死ぬからなぁ……。対策って熊除けグッズ買うぐらいか?」
「倉敷は心配ではないの?」
「まぁ、そんなに遭遇率が高かったらまず修学旅行先に北海道が選ばれるわけがないしな」
そんなことを言われて、確かにななどと思った。
ロープウェイで行けるのは途中までだったので、そのエリアにまず降りる。この段階で大分高い位置である。街を見下ろせる位置で、景色がとても綺麗だ。
今は明るい時間帯だけれども、夜に来ると夜景が綺麗らしい。一旦、少しの自由時間があったので、ベンチに腰かけて風を感じる。
天気がよくて本当に良かった。
ぼーっとするのも結構気持ちが良くて良いものだ。山にはあんまり来たことがなかったけれど、今度花音と近場で山に行ってもいいかもしれない。
しばらくぼーっとしていると、ゆうきに声をかけられ、お土産屋を見に行くことにした。色んなお土産がおいてあり、どれを買おうかというのに結構悩む。
修学旅行用にお土産代はもらっているけれども、それでも沢山買い過ぎると困るしなぁ。社会人になって、自分でお金を稼ぐようになったら別なのだろうけれどもそうでなければどんどん買うことなど出来ないものだ。
花音へのお土産のことばかり俺は考えている。母さんと父さんには日持ちする食べ物か、それ以外のもので探している。海外に言っている母さんと父さんには次に会うのも少し先になるだろうから。
あとは凛久さんと的場先輩にも。
俺の修学旅行の間、凛久さんと的場先輩が花音の部屋にいつもきているみたいだし。あと熊戸と下北にも。
他のクラスメイトたちも色んなお土産を買い込んでいた。中には荷物になりそうなものを購入しているクラスメイトもいた。流石に熊の木彫りのようなものは教師に止められて断念したようだ。
こういう修学旅行ならではの雰囲気はとても楽しいと思う。
その後、山頂へとケーブルカーに乗って向かうことになった。先ほどまでいた場所よりももっと上へと上がっていく。
山頂の展望台から見る景色は、とても綺麗だった。空気が澄んでいて、気持ちが良くて……思わず頬が緩んでしまう。こういう山の上って、普段とは違う場所にきている感覚が強くて何だか不思議な感覚になる。
山頂では同級生たちの告白劇などというものもあった。この山頂で告白しようと決めていたらしい。無事にカップルが成立して、見ているこっちはほっとした。こういう人が沢山いる場で、ふられたら中々大変だと思う。今はまだ二日目だし。
そう考えるとこういう場で告白するのは、凄く勇気がいることだよなと思った。
その後、下まで降りてから昼食の時間になった。学校がとってくれていたお店で、貸し切りでご飯を食べる。
食事の時間も穏やかに過ぎていく。
それにしても北海道の料理はおいしい。魚も美味しいし、お肉も美味しいし、乳酸品も美味しい。蟹も出ていて、沢山食べてしまった。
この後は函館方面に移動することになっている。途中でアイヌ民族の博物館があるので、そちらに寄ることになっているらしい。電車に乗っている時間、俺はすっかり寝ていた。周りが騒がしかったけれどぐっすり寝てしまっていて、最寄り駅についた時に倉敷に起こされた。しかも寝顔を写真撮られていた。
そして俺の寝顔は花音に送られていたらしい。
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