修学旅行 ④
修学旅行一日目が終了した。
旅館の部屋は大部屋で、四人ずつで部屋がわかれている。
中学生の頃は、正直色々大変だったから修学旅行を楽しめていなかった。でも今は純粋に修学旅行を俺は楽しんでいる。
こうしてワイワイ騒ぐのも、何だか楽しいものだ。
「なぁなぁ、上林は花音ちゃんと何処までいったんだ?」
そんなことを聞かれて、俺は飲んでいた水を噴き出してしまった。
そんなことを聞かれても、答えに困る。
「俺も気になる!」
クラスメイトからそんな風に興味津々に問いかけられる。
「……キスしかしてない」
じーっと見られて、そう答えればもったいないとでもいう風にみられる。
「花音ちゃんと付き合っているのに!?」
「……花音のことが大切だから、そういうのはちゃんと将来が分かってからがいいって思っているだけだよ」
花音のことを思い浮かべると、大切だなとか、ずっと一緒に居たいなとかそういう温かい気持ちでいっぱいになる。そうやって大切な花音だから、そういうのはちゃんと将来を見据えてからがいいと思う。
花音は全然、幾らでも手を出していいなんて言い切るけれど、ちゃんと責任を持ちたいから。
「上林ってその辺、ちゃんとしているよなぁ。なんか真面目っていうか」
「そういうところが花音ちゃんが惹かれたのかなぁ。俺も彼女が欲しい。どうやったら彼女が出来るんだ?」
そんなことを言いながらも、笑っているクラスメイトたち。
俺と花音の仲を、周りがそうやって認めてくれていると言う事実もやっぱり嬉しい。
それにしてもどうやったら彼女が出来るかなんて俺にも分からない。
「……やっぱり縁があるかないかだと思う。俺が花音と付き合えたのも、言ってしまえば縁があったからで、多分偶然だったと思うし」
うん、花音の荷物が俺の部屋に届いてなければそもそも届けに行かなかったし。その偶然がなければ俺は花音と関わることもなかっただろう。多分、ただの隣人として過ごして、関わることがなく終わったはず。
そう考えると、全部縁があって、偶然だったからとしかいいようがない。
今の俺は花音が傍に居ない日々なんて想像も出来ないけれども、そういう未来もあったかもしれないんだよなぁと思った。
「縁かぁ……。俺も花音ちゃんみたいな子と縁を持ちたいなぁ」
「一緒にいたら楽しい子と恋人になれたら最高だろうな」
花音のことを考えると、こうして修学旅行にきているからこそ花音が近くにいないことに寂しい気持ちになる。それだけ花音が俺の生活に入り込んでいる証なのだろう。
修学旅行中も、時々花音に連絡はしているけれど、やっぱり花音の元気な姿が視界に入らず、いつものように声が聞こえないことは寂しいと思う。
大浴場にお風呂に入りもいった。こういう大きい浴場って、旅行にきている気分になって結構楽しかったりする。露天風呂もあった。外の空気はそこそこ寒いけれど、湯につかれば身体が温まって、気持ちよかった。
風呂の後も、雑談で盛り上がった。結構恋バナも多かった。クラスメイトの好きな子とか、幼馴染の話とか、俺は花音の話ばかりしていた。
そして眠りについて――次の日、目を覚ました時、ここはどこだっけときょろきょろして、そうか、修学旅行にきていたんだっけと思い出した。
結構花音が起こしてくれることも多いから、「花音、もう朝?」と口にしてしまって、クラスメイトたちにからかわれてしまった。
ホテルの朝食もとても美味しかった。こうしてワイワイしながら朝食を食べるのもやっぱり楽しい。
美味しいなぁと思いつつ、花音が作ってくれている朝食を食べたいなってそんなことも考えてしまう。
それにしてもまだ二日目なのに、花音のことを俺は考え過ぎじゃないかって自分でびっくりする。
二日目は山の方にいったり、博物館にいったりすることになっている。自由時間は何をしようかな、どんな美味しいものを食べようかななどと考えると楽しみになる。
花音に会えないことは寂しいけれども、修学旅行から帰った時に花音に沢山思い出を語れるように、思いっきり楽しもう。
きっと花音は楽しそうにお俺の話を聞いてくれるんだろうなってそれを考えるだけでも早く会いたくなった。
「上林、何ぼーっとしているんだ?」
「倉敷か。花音に会いたいなって思って」
「本当に上林は花音ちゃんと仲が良いよなぁ」
そういえば、倉敷は三瓶と良い仲になってるけれど、修学旅行中に付き合い出したりするんだろうか。結構こういう修学旅行ってイベントで、恋人同士になる人たちって多いって聞くしなぁ。
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