修学旅行 ③

 午後には札幌方面に移動する。移動中のバスの中でも、クラスメイトたちと沢山会話を交わせて楽しいと思った。



 移動中にカラオケ大会みたいなことになって、倉敷が三瓶と一緒にデュエットを歌っていた。倉敷と三瓶も仲よさそうで、その様子を見ながら思わず笑みをこぼしてしまった。

 だけどそういう仲が良い様子を見ていると、花音に会いたくなってくる。



 花音は今頃、何をしているだろうか。……俺は正直、毎日、花音と一緒に過ごしていたから花音が隣にいないことが修学旅行初日にも関わらず寂しい気持ちになっていた。

 花音と関わる前は、花音が傍に居ないのは当たり前だった。それどころかクラスメイトたちとも交流が希薄で、誰かに注目されたり、クラスメイトたちから話しかけることもなかった。



 ――でも今は、花音が隣にいて、クラスメイトたちと親しく話して、注目を浴びることも当たり前になっている。

 俺の人生において、花音の存在は本当に大きくなっているのだなと思った。




「喜一、どうした? ぼーっとして」

「……花音がいないのが寂しいと思っただけ」

「はは、それ、天道さんに言ってあげたら喜びそうだな」



 ゆうきにそんなことを言われる。



 花音に寂しかったと言えば、花音は喜ぶだろう。いつもの真っ直ぐな笑みを浮かべて、嬉しそうに笑うだろう。



 お土産をあげたり、楽しかった修学旅行の話をすればきっと花音は喜んでくれるだろう。

 そう思うと寂しいなと思うばかりじゃなくて、花音が喜ぶようなものを選んで、楽しい修学旅行を楽しまないとと思った。



「上林も歌うか?」



 そう言いながら倉敷が近づいてきた。



 昔の俺だったら、こういう時に頷く事はなかったと思う。だけど俺は花音と接することによって変わっていて、だからこそこういうのも頷くようになっていた。

 歌うことにしたのは花音と一緒に見ているアニメのオープニングである。

 クラスメイトたちに見られながら歌うのは少し恥ずかしかったけれども、何だか楽しかった。



「花音ちゃんが上林君の声が素敵だって言っていたけれど、本当に素敵ね」

「天道さんにも送っていい?」



 クラスメイト達がそんなことを言う。



 なんか動画を撮ってくれたらしい。花音が喜びそうだから送ろうかななどと聞かれて頷く。

 花音は俺のクラスメイトたちとそれなりに交流をしていて、やり取りをしているのだ。



 皆でカラオケ大会をしながら、札幌駅へと到着する。



 札幌駅に到着し、学園が予約してくれているホテルに荷物を置いてからはまた少しの自由時間であった。




 俺はゆうきや倉敷たちと一緒に札幌駅の周辺を歩くことにする。

 スマホで記念に写真を撮る。

 自由時間中に少しスマホをいじって、花音に写真を送って置く。花音からも沢山連絡が来ていた。今何をしているとか、寂しいとか、あと凛久さんが撮ったであろう花音の写真とか。

 そういう連絡や写真を見ると思わず口元が緩む。



「花音ちゃん、凄い上林に連絡送っているな。本当に仲が良いなぁ」

「本当に仲良しよね」



 倉敷と三瓶の言葉を聞きながら俺は花音に返事をする。



 その後、札幌駅の近くにある時計台や近くにある観光地の公園を見に行ったりした。

 時計台が観光地だとは知っていたけれども、実際に来てみると何だか感慨深い気持ちになる。いつかまた花音と一緒に来ることが出来たらなとも思う。



 高校の修学旅行という一度しかない修学旅行で北海道に来れたことは楽しいけれども、やっぱり花音とも色んな所に行きたいと思う。俺と花音はまだ学生で、お金もあまりないし旅行にも行けないけれど、大学生や社会人になった時に花音と一緒にもっと色んな所に行けたらなと思った。



 まだ五月だけど、折角だからとソフトクリームを食べることにする。

 流石北海道というべきか、とても美味しい。



 やっぱり北海道は乳製品がとても有名なイメージがあるから、花音へのお土産にもそういうものを買おうか? 何だか花音のことばかり考えてしまっている。

 花音はこれが好きそうだとか、花音がここにいたらきっと楽しそうに笑うんだろうなとか。



 観光地の公園は雪が降っている時期だと雪まつりの会場にもなる公園だ。今は雪は降っていないけれど、観光地だけあって結構人は多かった。

 木々が沢山並んでいて、花壇には花々が咲いていて、とても心地よい風が吹いている。



 北海道ならではのワゴン車がいて、そこでとうもろこしも買った。ベンチに座ってのんびりとするのも、何だか楽しいものだ。

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