修学旅行 ②
飛行機に乗り慣れていなかったので、降りる頃には少し疲れていた。ずっと座りっぱなしというのも、疲れるものだなと思った。
それにしてもすぐにこのままバスに乗り込むことになっているから、行けはしなかったけれど此処って温泉もあるのか。正直温泉にも入ったことはほぼないので、少し心惹かれた。
というか、俺たちの宿泊先にも温泉があるらしいので入れるっぽい。何だかそう考えると楽しみだ。
「これから湖に向かうんだよな。楽しみだな、喜一」
「そうだな。湖も楽しそうだよな。天気いいし」
ゆうきに声をかけられて、俺はそう答える。これから俺たちは空港から貸切バスにのって、湖に向かうのだ。これで雨が降っていたら楽しさも半減していたかもしれない。
バスはクラスごとに分かれている。バスに乗り込む前に隣のクラスの明知を見かけた。明知もこちらに気づいたらしく、軽く挨拶を交わした。
去年同じクラスだった生徒たちの中でも、クラスが別れた人も結構いる。そういう人たちにも声をかけられるのは、やっぱり花音の効果と言えるだろうか。
花音と仲良くならなきゃ、こうして周りから話しかけられたりするのが当たり前にはならなかっただろうし。
バスに揺られながら、湖はどんな感じだろうかと楽しみになってきた。外の風景も、東京とはまた違う。そもそも空気も違うようなそんな感覚にある。
国内でも行った事がない場所が沢山あるから、そういう行ったことのない場所に向かえばまた色んな新たな発見があるんだろうなと思った。
しばらくバスに揺られて、最初の目的地である湖に到着した。バスから降りて、澄んだ空気と目の前に広がる光景に俺は感嘆の声を漏らした。どこまでも広がる大きな湖。何だか見ているだけで心が癒される。
俺にはどんな種類なのかはさっぱり分からないが、野鳥の鳴き声もする。時折、魚が跳ねているのもわかり、この場所に多くの生物が生きているのが感じられた。
クラスごとにここからの行動は違うのだが、俺たちのクラスは水中遊覧船に乗ることになった。こういうのに乗るのは初めてなので、興奮してしまった。乗り込む時にこけそうになって、「喜一はしゃぎすぎだ」と笑われてしまった。
船の中から湖底を見れるのは楽しい。
魚たちが泳ぐのを見て、周りも盛り上がっている。少しだけスマホで写真も撮った。花音に送っておく。とはいってもずっとスマホをいじっているわけにもいかないので、すぐしまったけれど。
30分の所要時間があっと言う間にすぎていく。もっとずっといても楽しそうだなと思って仕方がなかった。こういう経験を、大人数で出来るのはやっぱり修学旅行ならではの楽しさなのだと思う。
そのあと俺たちのクラスは昼食の時間まで少しの自由時間だった。俺は湖の周りをゆうきと倉敷と一緒に歩いて回った。とはいってもそこまで遠くにはいかないように言われているので近場である。
「綺麗だなぁ」
ゆうきがそんなことを呟きながら湖を見ている。ちなみに俺たちが先ほど乗った遊覧船には他のクラスの生徒たちが乗っている。
こうやって自然を感じられるのは何だか心地が良い。
アヒルボードなどに乗っている観光客の姿や、レンタルサイクリングを借りた観光客の姿も見える。観光地ならではのにぎやかさというのがある。
湖をしばらく眺めながら雑談をした。話している内容といえば、あそこで泳いでいる水鳥はなんだろうとか、倉敷が三瓶とどうなったかとか。……なんか良い感じにはなっているらしい。好きな人がいると前々から言っているゆうきよりも倉敷の方が先に上手く生きそうな感じである。
あとやっぱり花音の話もする。
花音もやっぱり一緒に居れたらよかったのになぁとか、普段の花音のこととか。なんか普通の日常を語っただけなのに、「相変わらずラブラブだな」って言われたけれど。
のんびりと会話を交わした後に、集合時間になってクラスメイトたちの元へと戻った。クラスメイト達の中には早速この自由時間にお土産も買っていたらしい。そういえば景色に夢中で此処のお土産を見てなかった。
花音へのお土産も買わないと。
昼食は近くにあったレストランでとった。
「これ美味しいなぁ」
「流石北海道って感じ」
昼食は魚の定食だったのだが、とても美味しかった。良い感じの塩加減で、やっぱりこういう場所で食べる魚というのは美味しい。
周りの美味しい美味しいという声が聞こえてくる。こうやって美味しいものを食べると笑顔も零れるものだ。
昼食を食べている間も、修学旅行ならではのわちゃわちゃした会話が繰り広げられる。
彼女のいない生徒たちは、この修学旅行を機に恋人を作ろうとしているらしい。あまり話したことないクラスメイトにも花音とのなれそめを聞かれたので話したが、「参考にならない」と言われてしまった。
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