修学旅行 ①

 今日は修学旅行の初日である。まずは学園に集合してから、貸し切りバスで空港に向かうことになっている。朝早くから移動なのだが、花音は朝から起きていた。もう少し寝ていてもよかったのだけど。



「花音、まだ寝てても良かったんだぞ」

「私はきー君を見送りたかもん! しばらくきー君とあえんと寂しかしね。きー君にいってらっしゃいって言うとは、私の仕事やもん!!」



 そんなことを言いながら、花音はにこにこと笑っている。

 寂しいと口にしてしょんぼりとした顔をする花音。そんな花音が可愛くて思わず笑った。



「俺も花音と会えないの寂しいな」

「スマホは一応持っていけるとやろう? 返事出来る時は返事してね」

「うん」



 頷いたら、花音が笑った。



「ねぇねぇ、きー君がおらん時もきー君の部屋おってもよか?」

「もちろん」

「ふふ。きー君の部屋でごろごろすーね? きー君の匂いがすーベッドでのんびりすっと嬉しくなるもんね」




 俺のベッドで寝転がって楽しむつもりらしい。そういう花音を想像するだけで俺は楽しくなった。

 花音に会えないのは寂しいけれども、きっと修学旅行中もずっと俺は花音のことばかり考えていることだろう。少し離れればどれだけ花音の事を俺が好きなのかという実感しそうだなと思った。





「きー君が帰ってきた時にどんだけお土産話してくれるか楽しみにしとっけんね! 北海道でお勧めスポットとかあったら教えてね。今度一緒いこーね!」

「うん」




 花音と行きたい場所、楽しみたい事がこうしてどんどん増えていくと思うとこういう会話も楽しい。



「じゃあ、きー君、いってらっしゃい!! どんなふうにきー君が修学旅行を過ごしていたか、聞くと楽しみにしとっけんねー!!」

「うん。いってきます。花音」



 行ってらっしゃいと、花音に見送られて嬉しかった。




 俺はそのまま肩掛けのバックを背負って待ち合わせ場所まで歩いた。家が遠い人は送迎バスなどで待ち合わせ場所まで向かうらしいけれど、俺は家から近いからなぁ。



 修学旅行のことを考えると少し心が躍った。

 中学時代の修学旅行は藍美のこともあってごたごたしていた。だけれど今回はそういうものは全くなく、楽しく過ごせられるだろう。そう考えるとわくわくする。

 集合場所にたどり着くと、もう生徒たちがかなり集まっていた。




「喜一、おはよう」

「おはよう、ゆうき」



 ゆうきも既に来ていたので、ゆうきと挨拶を交わす。それにしても眠そうだ。俺も少し眠い。朝が早いから仕方がないと言えば仕方がないだろう。

 俺は花音が準備してくれていたから、朝ごはんをきちんと食べているけれどギリギリに起きて食事を食べずに来てしまった生徒もいるようだ。




 花音が朝から起こしてくれて、そして朝食を準備してくれて、送り出してくれたというそのことを話していると、うらやましがられた。俺も客観的に見ると自分の状態がとても幸せなものだと改めて思った。



 生徒達が集まると、バスで空港へと移動する。




 空港までのバス内は、寝ている生徒や北海道でのことを話している生徒たちが多かった。俺は寝てしまっていた。空港に到着する頃に起こされる。飛行機に乗るということはあまりない。



 久しぶりの飛行機なので、少し緊張しながら搭乗手続きを進める。搭乗手続きも慣れてないので、周りに聞きながら進める。

 こういう感じかと思いながら手続きを進めていく。

 あのクラスメイトは飛行機に乗り慣れているんだなとかそういう新たな一面が分かったりもして楽しいなと思った。こうやって修学旅行っていう学生の一大イベントがあれば色々と色んな一面が見られるのだろうなと思う。




 飛行機へと乗り込む。

 これから北海道に向かうのだと、そういう高揚感からか一気に騒がしくなる。




「上林、楽しみだな」

「そうだな。倉敷」

「花音ちゃんは寂しがってた?」

「うん」




 倉敷に話しかけられてそういう会話を交わす。北海道までは一時間半ほどである。その間、飛行機内はざわざわしていた。流石に一般客たちに迷惑にならないように声は潜めているが、皆が修学旅行を楽しみにしていることが見て取れる。



 俺もワクワクした気持ちでいっぱいだ。



 北海道は初めてだから、余計にどんな経験が出来るだろうかと考えてみると気分が高揚する。



 花音に沢山の楽しい思い出話を出来るように楽しく過ごせればいいな。

 そう考えながらゆうきや倉敷たちと話しをしているとあっと言う間に北海道に到着した。到着したのは新千歳空港である。

 


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