帰宅後の花音

「じゃあな、喜一」

「上林君、花音ちゃんによろしくね」



 授業が終わった後、クラスメイト達に声をかけられながら俺はそそくさと教室を後にした。



 下駄箱に向かうまでの間も、花音のことを声をかけられてやっぱり花音は人気者だなと自分の恋人のことが誇らしい気持ちになる。



 学校を出ながら花音に連絡を入れれば、花音から「プリン食べたい」と連絡が来ていた。それを見て思わず笑みをこぼす。

 プリンだけじゃなくて、他にも色々と購入して帰ろう。



 そう思いながらスーパーへと寄った。

 スーパーにも花音とよく来ているので、花音が隣にいないと何だか寂しい気持ちになる。



 花音が元気になるようにと色々と買い込んだ。

 心配だったので、そのまま自分の部屋じゃなくて花音の部屋へと俺は真っ先に向かった。



「花音、ただいま」



 花音のベッドに向かって声をかければ、「おかえりー、きー君」と花音に声をかけられた。

 パジャマ姿の花音は、少しだけまだぼーっとした顔をしている。ただ今朝よりは元気そうだ。



「花音、体調はどう?」

「大分よかよー。まだぼーっとすっけどね」



 そう言いながらも花音は俺の方を見てにこにことしている。可愛いけれど、どうしたのだろうか。



「花音、にこにこしてるけどどうした?」

「ふふ、きー君がおっとうれしかなーって。具合わるか時って、少し心細くなるやろ? 私、時々目覚めた時にきー君がおらんなぁ、一人だなぁってちょっと寂しかったけんさ」



 俺が部屋に居ることが嬉しくてにこにこしているらしい。理由からして花音らしい。



「俺も花音がいなくて寂しかった」



 そう言いながら花音の頭を撫でれば、花音はまた笑みを深める。

 そんな花音に生徒たちからもらったものや、先ほど購入したものを見せる。



「花音、皆も花音にはやくよくなってほしいって色々くれたんだ。花音がリクエストしたプリン以外も色々買ってきた」

「いっぱいもっとるねと思ったら、そうやったんねー。うれしかー」



 花音は嬉しそうに笑いながら、袋の中を見る。真っ先にプリンを取り出す。あとはクラスメイトたちがくれたお菓子なども机に出す。



「大量やねぇ。一先ずこれだけ食べようかなぁ。きー君も一緒たべよー」



 花音に誘われて、一緒にプリンを食べることにする。



「んー、プリンっておいしかよねぇ。こういうあまかもんたべると幸せになる」

「そうだな。美味しいな。そういえば花音は夕飯を食べる元気はあるか? あるなら簡単に作るけど。なければおかゆとか作るけど」

「ふふ、食欲は結構でとっけん、食べれるよ! きー君が作ってくれたものって考えると楽しみ! ねぇ、きー君、私、此処できー君に作ってほしか。きー君が料理作るの見ながらにこにこしたかもん」

「じゃあ、台所借りる」

「うん。あ、でもきー君、エプロンはつけた方がよかよ。制服が汚れたら大変やけん」




 花音がエプロンのしまってある場所を教えてくれたので、エプロンを借りる。ちょっとかわいらしい女性のエプロンだったけれど、まぁ、見ているのは花音だけなのでそのエプロンを身に着ける。



「きー君、似合う! 可愛い!」

「そうか?」

「うん!」




 何だか俺のエプロン姿を花音は気にいったのか嬉しそうな顔をしていた。ご飯を炊いて、先ほど購入した材料で食べやすいスープなどを作る。花音と仲良くなってから一緒に料理することも時々あるので、前より俺も料理が出来るようになった気がする。

 料理を作った後は、そのまま花音の部屋で夕食を食べた。




「きー君、夕飯ありがとう。私、これで明日は元気になれるよ!」

「そう言ってもらえるのは嬉しいけれど、少しよくなったからって夜更かしとかしないようにな」

「流石にせんよ! 私、明日は学校いきたかもん。一人で此処部屋におっとも寂しかったしね! ねーねー。きー君、私が眠るまで頭撫でてほしかかも。きー君が撫でてくれたり、子守歌歌ってくれたら私すぐ寝ちゃうけんね」



 花音は自信満々にそんなことを告げた。



 子守歌を歌うなんてあまりしないから少し躊躇しそうになったが、花音に乞われたら歌おうとおもった。




「じゃあ歌う。だからしっかり寝て治してくれよ。花音」

「やったー!! きー君が歌ってくれると思うとやっぱうれしかねー。何だかテンション上がっちゃう」

「……テンション上げて寝れないとかないよな?」

「そこは寝るけん、大丈夫!」



 何だか一気に声色が元気になったので、逆に寝れなくなるんじゃないかと疑ったが、花音は元気に大丈夫と口にした。

 俺はこほんっと咳ばらいをして、花音の要望通りに子守歌を歌うことにした。頭も撫でてほしいと言われたので、頭も撫でる。

 花音は嬉しそうにじっと俺を見ていた。



 花音に見つめられながら子守歌を口ずさみ、頭を撫でる。そうしていれば少しずつ花音の瞼が閉じられていく。うつらうつらしている花音はしばらくしたら瞳を完全に閉じた。花音の寝息が聞こえてくる。



 花音が眠った後に、凛久さんから「ついた」と連絡が来ていた。眠っている花音を起こすわけにもいかないので、一先ず俺の部屋に来るように連絡を入れる。花音を起こさないようにしながら俺は自分の部屋へと戻った。



 後からやってきた凛久さんは、心配だからこのまま俺の部屋に泊まるというので泊ってもらうことにした。凛久さんが花音のために購入したものは一先ず俺の部屋の冷蔵庫に入れた。

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