翌日の出来事
目覚ましの音がピピピピピとなるのを聞いて、目が覚めた。
部屋の真っ白な天井が視界に映る。
「あれ?」
寝ぼけながら目を覚まして、リビングに向かって思わず声をあげる。
花音がいない。
いつも花音は結構俺が目覚めるよりも先に、此処にきていたりする。なのに今日は花音の姿がない。珍しくて、どうしたのだろう? と疑問に思った。
スマホを取り出し見れば、そこには花音からの連絡が来ていた。
『きー君、風邪ひいたみたい! 熱があるので、今日は学校休んで、寝るわ! きー君は、学校いってねー』
思わずその文を見て、花音の部屋へと向かう。電話をかけることも考えたけれど、隣だし行った方が早い。花音の部屋の鍵を使って、中へと入る。
「花音」
「んー、きー君?」
「風邪ひいたって、大丈夫か?」
「うん。へーき!」
花音はベッドの中から元気よく答えるが、顔は赤い。……やっぱり熱が出ているのだろう。
「……花音、俺も学校休もうか?」
「それはよかよ! ちょっと風邪ひいただけやもん! きー君は学校いきー」
ぐったりとベッドに横になっている花音を見ると、看病のために休もうかというそういう気持ちにもなった。
だけど花音には断られる。
だけどこういう花音を見ていると、心配になってしまう。
「きー君、私はねてゆっくりしとくけんさ、勉強がんばりー。あと風邪うつると悪かけんはよいきーよ」
花音がぼそぼそとそう言って、俺に此処に残らないように言う。
そのまま花音に行くようにじっと見つめられ、一旦自分の部屋へと戻った。花音が部屋に居ないと落ち着かない。
だけど高校に行かないわけにもいかないので、朝ごはんの準備をする。最近では花音がいつも朝食を準備してくれていたりしたから、やっぱり落ち着かない。
花音が風邪をひいているのならば、消化に良いものとかを帰りにかってかえった方がいいだろう。まだ朝なのにもう帰りのことを考えてしまっている。
そして俺は「いってきます」と口にして学校へと向かう。
通学も花音が隣にいないことに違和感を感じてしまう。毎朝、元気な花音が傍にいて、楽しそうに笑っているのを見ていたのだから、ちょっと寂しい。来年になったら俺は大学生になって、花音と一緒に学園に通うこともなくなるのに……今からこんなので大丈夫かなと自分で心配になる。
学園にたどり着くまでの間で、同じ学園の生徒たちからちらちら見られた。花音がいないことが不思議なのだろうと思う。俺と花音はセットみたいな感じに学園の生徒たちには思われているだろうから……。
「あれ、花音ちゃんは?」
「花音ちゃんがいない」
といった声が時折聞こえてくるし。
それにしても花音って見た目は華奢な雰囲気だけど、あまり風邪とかひいてなかったから、風邪をひくことも珍しいのだろうと思う。
というか、俺もはやく帰りたいとその気持ちでいっぱいである。
具合悪くなっている花音を想像すると胸が痛くなってくる。
教室に入ると、さっそく花音がいないことが噂になっていた。
「喜一、天道さんは、今日どうしたんだ?」
「風邪を引いたんだ。昨日雨に濡れたからなぁ……」
ゆうきにそうやって答えていると、周りのクラスメイトたちにも花音が風邪をひいていることが聞こえたらしく、心配そうに皆俺に話しかけてくる。
「花音ちゃんが風邪!? この飴あげる。喉の痛みとかにいいんだよ」
「私はこれあげる」
「天道さんにゆっくりするようにいってね」
「花音ちゃんにお大事にって!」
俺のクラスメイトたちも皆、花音のことが大好きだ。
こうやって違う学年の人にでも心配されるのはやっぱり花音の人柄によるものだろうなぁと思う。こうやって色んな人に好かれている花音のことを俺は誇りに思う。
「ありがとう。花音にも渡しておくよ」
「上林君、花音ちゃんが風邪をひいているなら――」
そして風邪をひいている花音のために、こういうものを買った方がいいのではないかといったアドバイスを沢山くれる。
ちなみに凛久さんからも連絡がきていた。凛久さんも大学をさぼって花音の元へ来ようとして止められたらしい。放課後はこっちにくるって言っていた。
凛久さんも花音の事が大好きだからなぁ。
色々と風邪を引いた花音のために買ってきてくれるらしい。
花音ともちょくちょく連絡をとりあった。
『まだあつかー』
という連絡がきたり、しばらく連絡が来ない時間があったり――多分眠っているのだろう。
花音を心配しながら、その日は過ぎて行った。
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