放課後に遊びに出かける ②

「んーおいしか!!」



 花音が嬉しそうに笑みをこぼしてチョコレートケーキを食べている。心の底から幸せそうな顔をした花音を見ると、俺も笑みをこぼしてしまう。



 好物の甘い物を、恋人と一緒に食べるのは幸せな事だと思う。まぁ、花音と一緒ならばどんなことでもきっと楽しいだろうけれども。



「きー君、きー君、これおいしかよー!! きー君のは?」

「俺の食べているのも美味しい」



 俺の食べているのはブルーベリーの乗ったチーズケーキと、モンブラン、あとガトーショコラのケーキである。どれも美味しい。

 一緒に頼んだオレンジジュースと一緒に食べているが全部美味しい。



「ふふ、おいしかもん食べれると幸せやねぇ。結構気に入っとるかも! 時々此処に食べにきたかねー。まだ先やけど誕生日とかもここでよかかも!!」



 花音はすっかりこのお店のケーキを気に入っているらしい。そんなことを言いながら楽しそうににこにこしている。俺もここのケーキ、美味しくて気に入ったので何かお祝い事があった時に買うのもいいかなぁと思っている。



「そういえば、きー君。お兄ちゃんと的場先輩、凄く仲良くしているみたいなんよ! 私がこの前連絡した時、お兄ちゃん家に的場先輩おったみたいで、よかことやねーって思った」

「へぇ。凛久さんの一人暮らししている家、俺も行ったことないけど、何だか整理整頓されているイメージ」

「うん。そうよ。お兄ちゃんはあんまり物とか買わんほうやけんね。どちらかというとすっきりしとると。私なんてグッズとか漫画とかゲームでいっぱいなんだけど。でもなんか相変わらずお兄ちゃんってモテモテみたいで、彼女がいるっていっても女の子が近寄ってくるみたいよ!」

「凛久さんかっこいいもんなぁ」

「私はきー君と付き合いだして、告白されるの減ったんよねぇ。なんか私ときー君がイチャイチャしとるけんって聞いた!」



 俺と付き合いだして告白されることは減ったらしいが、花音が相変わらず異性に好かれていることには変わりない。

 俺と一緒にいるから告白が減っているなら、俺が卒業したら新入生に告白されたりするんだろうか。

 卒業して大学に入学したら俺と花音の暮らしも少しずつ変わるかもしれないけれど、花音とずっと一緒に過ごせたらいいなと思った。





「でも告白されてもきー君がおっけん断るけどね。私、きー君のことが大好きやもん」

「うん。俺も花音のことが好き」



 外でこういう会話をするのは少し恥ずかしいが、花音が嬉しそうに言うと俺も口にしようって気になる。



「えへへー、うれしかー」



 花音はフォークでケーキを口に含みながら、顔を破顔させて笑っている。

 うん、やっぱり花音は可愛いなぁ。





 その後、ケーキ屋を後にしてスーパーに寄る。今日は金曜日で、明日は土曜日だ。今週の土日は勉強をしたり、花音の購入した新作のゲームをしたりすることにしている。



 花音が何処か行きたいと言ったらいくかもしれないけれど、基本的に外に出ない予定である。そういうわけで色々買い込んでおく。



「まだ五月だけどそこそこあつかしそうめんもよかねー。きー君的にどう?」

「俺もそうめん食べたい」

「じゃあそうめんは買うとして」


 花音はそんなことを言いながら俺の持っている買い物かごにどんどん食べ物を入れていく。




「きー君、お菓子あるよ! 北海道のおかしだってー。チーズ関連のお菓子っておいしそうやねぇ。きー君、修学旅行のお土産にこういうお菓子ほしかなー私」

「うん。買ってくる」



 最寄りのスーパーに北海道のお菓子のコーナーが出来ていた。



 もうすぐ行くことになる修学旅行では、花音や両親に対するお土産を沢山買いそうだ。特に花音が喜ぶ顔を思い浮かべたらどんどん買いそうだ。そういう自分が想像出来る。

 花音とは学年が違うから一緒に修学旅行には行けないけれど、購入したお土産を一緒に食べれたらきっと楽しい。




「はー、これもこれも美味しそう!」

「そうだな。俺はこっちのチョコレートのやつもいいと思う」

「うんうん。これもよかねー。というかさ、私、こういう物産展みたいな地方の食べ物を買うのも好きなんよねー。ちょっと調べてみようかな。きー君、物産展あったらいこーよー」

「うん」



 花音はにこにこしながらそんなことを言う。

 これだけにこにこした笑みを向けられるとなんでも頷いてしまいそうなそんな気持ちになる。




 花音と一緒だと日常の買い物でも楽しい。

 会計を済ませて家への帰路を歩く。




「きー君、なんかちょっと雨ふりそーね。傘もってきとらんけん、帰るまで本格的にふらんければよかけど」

「確かにちょっと降りそうだよなぁ。雨に濡れたら風邪ひくかもだし、さっさと帰ろう」

「うん」



 天気は曇り。



 傘を持っている人の姿も時折見かけられる。雨が少し降りそうな雰囲気に、俺と花音は早足でマンションへと向かう。

 だけどその途中でパラパラと雨が降り出して、結果としてマンションのロビーにたどり着いた時には結構濡れてしまっていた。




「うー、つめたかー。きー君、私、風呂入ってくる!」

「ああ」



 花音は自分の部屋へと入っていった。俺も買い物したものを冷蔵庫に入れると風呂に入る。

 風呂から上がった時に、花音はまだ来ていなかった。

 それから少しして花音が俺の部屋へと入ってくる。




「あがん雨ふっと思わんかったねー」



 そう言いながら花音はソファに腰かけた。



「これ、明日も雨かな?」

「んーとねー。そうね。数日間雨って天気予報いいよーよ」



 スマホを見ながら花音がそう告げる。


 その日はケーキを沢山食べたのもあって、夕飯は食べずに花音とのんびり過ごすのだった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る