俺の地元へ ②

 地元の駅にたどり着くと、何だか感慨深い気持ちになった。

 懐かしい地元の駅。

 二年と少しぶりだから、その光景は少し記憶にあるものと変わっている。だけれども大きな改築などはなされていないので、懐かしい雰囲気のままである。




「此処がきー君の地元の駅なんねー。東京の駅よりはこじんまりしとるけど、私の地元の駅よりはおおきかねー」

「喜一の友人が駅まで来るんだったよな?」





 花音と凛久さんがそんなことを言う。




 そう、二年ぶりに連絡を取った友人が俺が帰ってくるならとわざわざ駅まで会いに来てくれるといってくれたのだ。


 正直二年ぶりなので少し緊張する。親しくしていた相手だったとはいえ、久しぶりだとこういう気持ちになるんだなと驚いたものである。



 スマホを取り出して早速迎えに来てくれると言う友人二人に連絡を入れる。



 駅の西口にいることを伝えて、しばらく花音と凛久さんと会話を交わしながら友人たちのことを待っていた。




 しばらく待っていれば、肩を叩かれた。

 振り向けば、懐かしい二つの顔があった。




「喜一、久しぶりだな!!」

「喜一、久しぶり。二年ぶりだけどあんまり変わってないなぁ」




 そう言って俺に向かって笑いかけるのは、中学を卒業するまで仲良くしていた甲野冬人(こうのふゆと)と三崎菊夜(みさききくや)である。


 二人とも高校生になって成長はしているものの、雰囲気は昔と変わっていない。何だかそれが嬉しい気持ちになった。




「冬人、菊夜、久しぶり。急に連絡してごめん。折角地元帰るなら会いたいなと思って」

「いやいや、俺は連絡くれて嬉しかったぞ。喜一は地元に全然かえってこねーからな。もう帰ってこないかと思ったし」

「うん。冬人の言う通り。ところで、そっちが喜一の彼女とそのお兄さん? びっくりするぐらい美少女と美形なんだけど……」




 俺の言葉に冬人は笑い、菊夜は恐る恐るとでもいうように花音と凛久さんの方を見る。



 花音は俺が旧友たちと会話を交わしているのを見て、にこにこと笑っている。驚くほどに満面の笑みである。



「初めまして! 天道花音です。よろしくお願いします!」

「はじまして。天道凛久だ。よろしく」



 花音と凛久さんに笑顔を向けられた冬人は、衝撃を受けたような表情を浮かべて、俺にこそこそと聞いてくる。



「なぁ、こんな美少女と何処で出会ったんだ? 美少女と美形の笑顔、半端ないんだが!」

「一人暮らしの家が隣同士だったから」

「はっ、なんだそのラブコメ!! うらやましい! でも良かったな。喜一は藍美の事があったから恋人なんて作らないんじゃないかって思ってたし。あれで人付き合い面倒だなとはなってただろ?」




 うらやましいと口にした後、笑みを浮かべて冬人がそんなことを言う。

 その言葉に俺は心配されていたんだなぁ、と実感して「ありがとう」と口にした。




  なんだか久しぶりに会うことを俺は不安も抱えていたけれど、こうして話してみると不安何て感じる必要なかったんだと思った。

 地元外の高校に入学して、地元に二年も帰っていなくて、連絡さえも久しぶりだったのに、冬人は俺のことを友達だと受け入れてくれている。

 そのことが嬉しかった。




「天道さん、凄く可愛いね。喜一が恋人連れてくるとは言ってたけど、こんなに可愛い子と思わずびっくりしちゃった」

「花音でいいですよー。お兄ちゃんもいてややこしいですし。可愛い私がきー君の恋人だって、きー君に自慢してもらうのですよー」

「はは、自分で言っちゃうんだ?」

「私が可愛いのは事実ですからね!」

「花音は世界で一番可愛いからな!」




 俺が冬人と話している間に、花音と凛久さんは菊夜とそんな会話を交わしていた。




「じゃ、俺も花音ちゃんと凛久さんって呼んでいい?」



 冬人も俺との会話を終えた後に花音に話しかけに言っていた。



「いいですよー。甲野さんはきー君といつから仲良しなんですか?」

「ははは、きー君呼びってなんかいいな! 喜一と仲良しってよくわかる。俺と喜一は小学生からの友人だぞ。ちなみに菊夜もそうだぞ」

「きー君の小学生時代!! 是非ともお聞きしたいので仲良しくしてください!」

「幾らでも話すぞ」



 そんなこんなで顔合わせが終わり、俺たちは俺の実家に向かうことにした。



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