土曜日にゲームをしたり、凛久さんと会ったり ②

「ふふふ~ん」

「花音、ご機嫌だな」

「だってお兄ちゃんが彼女つくったんやもん!! 私の元へ連れてきてくれるのなら本気やもん! 大好きな人が恋人作って幸せになっとーってよかことやし、うれしか!」

「良かったな」




 凛久さんがトイレに行っている間に花音は、そんなことを言っていた。



 周りの人の幸せをこうして素直に喜べる花音は、温かい人間だと思う。そういう花音だからこそ、俺は好きなんだなと改めて思った。




「あ、きー君、これの選択肢どっち選ぶ?」

「こっち」

「わっ、好感度下がった! やっぱり人それぞれ性格とか、感じ方とか違うけんね。こういうの見ると面白かよねー。私も人と話すときはちゃんと考えんといけん。やっぱりはなしとー人に嫌な思いさせたくなかし。きー君も、私が嫌な思いさせちゃったら言ってね? 私、きー君に嫌われたくなかけん、なおすけん!」

「花音も俺が嫌な言い方とかしたら言ってくれよ。俺も花音に嫌な思いはさせたくないから」

「ふふ、そうやっていってくれるきー君やけん、私も嫌な思いぜんぜんせんよ。でもなんかあったら言うけんね?」




 花音とそんな会話をしながら、ギャルゲーを進めていく。

 ちなみに攻略することにしていたギャルの子とは、ノーマルエンドだった。何だか選択肢を間違えてしまったらしい。





「花音と喜一はずっとそのゲームしているつもりなのか?」

 トイレから戻ってきた凛久さんは、テレビ画面を見ながらそんなことを言う。

「うん。そーよ! きー君と沢山あそぶと!」

「恋人になっても花音と喜一は変わらんな」

「そがんことなかよ? ちゅーしたりはしとーもん! 恋人として私ときー君、いちゃいちゃしとっとよ! お兄ちゃんがおらん時とか!」




 花音がなんかそんな報告を凛久さんにしていた。そんな報告をされたことに恐る恐る凛久さんを見る。凛久さんは笑っていた。




「そうか。それやったらよか。でも高校生やけん節度を守った付き合いせんと。俺がおらん時はとまっとらんよな?」

「うん。私は泊りたかっていいよっけど、きー君、紳士やけん、そがんせんほうがよかって! 私はどんどん襲わんね! っておもっとっとけど」




 俺がいる前でそんなことを凛久さんと話す花音。こっちを見られても花音が大事だからこそ、責任とれるようになるまではそういう気はない。




 花音の頭を俺は撫でる。


「花音、そういうのは責任とれるようになってからな。俺は花音とずっと一緒に居たいからそういうのはちゃんとしたい」

「かっこよか! 真面目さん! 襲ってほしかけど、そういう真面目さんやけん、きー君すいとーって思うもん! ね、ね、お兄ちゃん、私んきー君、紳士さんでかっこよかやろ?」

「そうだな。ちゃんと花音のこと考えとるのはよかと思う」




 凛久さんはそう言いながら笑っている。何だか凛久さんがこんな風に俺と花音の付き合いを認めてくれているというのは嬉しいものだ。




 隣で興奮している花音と一緒にその後もギャルゲーを進めた。




 ただゲームばかりしているわけではない。俺は今年受験なので、勉強もしている。凛久さんの通っている大学は、今の成績だと合格できそうとは言われている。去年から花音に勉強を見てもらっていたりしたからだろう。




 花音と出会わなかったら、凛久さんとも出会うことがなくて、こうして凛久さんのかよっている大学に行こうとか考えなかっただろうし、人との出会いというのは色んな影響が与えられて不思議なものだと思う。




「花音ちゃん先生ですよー。きー君、ちゃんと勉強頑張ったらご褒美あげっけんね! ね、ね、きー君、先生って呼んでみん?」

「花音ちゃん先生」

「うんうん。よかね! きー君に花音ちゃん先生呼びされっとなんかときめく! きー君、他の先生呼びもしー!! 天道先生とか!」

「天道先生」

「ふふふ!! 喜一君、しっかり教えてあげますからねー」




 花音は相変わらず俺に勉強を教える時は、眼鏡をかけて先生として教えてくれる。




 ちなみにそれに凛久さんも混ざっていた。凛久さんも「俺も喜一が大学にいた方が楽しそうだからな」とそんなことを言っていた。




 勉強を教えてもらったりしながら、土曜日は過ぎていく。



 花音と凛久さんと過ごしていると楽しくて時間が過ぎていくのがはやい。

 その日も凛久さんは泊っていくことになった。凛久さんが泊まるならと花音も当然泊って行った。雑魚寝で泊れるのを花音は嬉しそうにしていた。




「あ、そうだ、きー君、片づけとかしたけんさ。私ん家にきー君、招待すっけんね! 映画見た後の、明日とかでもよかよ!!」

「ああ。じゃあ行く」




 花音が家に招待してくれた。結局合鍵をもらっていても花音の家には行ってなかったから、行けるのは嬉しい。そして花音の実家には行ったことがあっても、隣の花音の部屋には入ったことがなかったから。



 というか、俺と花音って結構順序逆な付き合いしているよな。付き合う前に花音の実家に行って、両親と挨拶していたりしたわけだし。



「俺は明日は和巳の所行くから、花音と喜一は明日仲良くしろよ」

「うん! お兄ちゃんも的場先輩と仲良くしーね! お兄ちゃん、別に明日、的場先輩連れてきてもよかけんね!」




 そんな会話を交わして俺たちは眠るのだった。


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