花音と、一年生 ③

「はぁー、美味しい。ファミレスってお手軽で美味しくて最高やね」

「天道先輩って、時々訛ってて可愛いですよね。上林先輩と付き合うまでそういうの見せてなかったって本当ですか?」




 そういえば花音は俺と付き合いだすまで、『聖母』様としての面をかぶっていたというか……素を出してなかったんだよな。ついこの前までいつでも穏やかに笑っている『聖母』様だったと言われても新入生は信じられないのも当然だろう。





「そうだよ。素を出すと方言が出るし、聖母なんてこっぱずかしい評価をもらったし、そういう幻想を壊すのもなって思ってたから。でも私はきー君と仲良くなって、きー君と付き合いだしてきー君と学園でもずっと居たいと思ったら素が出ちゃったというか……もういいかなとおもったっていうか」

「そうなんですね。本当に天道先輩は上林先輩が好きなんですね。いいと思います!! 恋する乙女な天道先輩とてもかわいらしいですもん」

「えへへー。そうよー。私、きー君のこと、大好きなの。きー君、声が素敵で、呼びかけられるだけで幸せな気持ちになるし、きー君、優しくてずっと一緒に居たいって思うもん」

「可愛いです。私も宗のこと自慢しちゃいますね! 宗はとても頭がいいんですよ。私って結構気になったことがあるとすぐに見に行ったりするんですけど、私が行くならってついてきてくれるんですよ。それで興味がないのにいいの? って聞いたら流果が行くなら行くっていってくれて、優しくないです?」

「それは優しいね! うちのきー君もかわいかよ。素直さんだし、真面目さんで、可愛いーってなるの」





 何だか花音と熊戸は気が合うらしい。それにしても下北はそういう性格なのか。でもあれだな、熊戸と下北が花音に話しかけてきたのも熊戸が花音に話しかけようとして下北が一緒についてきた感じなのだろうか。




「あー……花音、恥ずかしいから一旦やめような」

「流果、僕も恥ずかしい」





 俺と下北はほぼ同時にそんなことを言っていた。いや、だって普通に恥ずかしい。花音がそういう風に俺のことを語ってくれていること自体は嬉しいけれど、ほぼ初対面の後輩の前で、外でそんな風にされると俺も照れる。





「ふふ、きー君、照れ屋さんでかわいかー!!」

「宗も照れてるのね」




 花音と熊戸はにこにこと笑っている。結構似た者同士な気がする。




「上林先輩は天道先輩と付き合っていると、自信とかなくなったりしないんですか?」




 下北に突然、そんなことを聞かれた。




「自信かぁ。花音はとても可愛いし」

「ふふ、そうよ。きー君の彼女の私は超絶可愛かと!」

「頭もよくて、素直で優しくて」

「えへへー。きー君にそうやってほめられっとうれしかー」

「俺にはもったいないと思う事はあるけれど……」

「そがんことなか。きー君は素敵なんやけん」

「俺は花音とずっと一緒に居たいと思うし、何より花音がこんな俺を好きだって言ってくれるんだから、自信がないとか言ってられない」

「きゃー。きー君、かっこいいー!! ね、ね、流果ちゃん、私のきー君、いざって時にはこうやって言ってくれるんよ。超かっこよくなか?」





 合いの手をはさんでくる花音。

 真面目に話しているんだがなと思うけれど、こうやって幸せそうに笑う花音が可愛いなぁと思う。





「そうですね。凄く今ドキリとしました! なるほどー。こういう所に天道先輩は惹かれてるんですね」

「うん。男の僕から見てもこうしてはっきり言うのはいいと思う」

「宗ももっとはっきり、上林先輩みたいに言ってもいいんだよ?」

「……二人きりの時に」

「うん。楽しみにしてる」




 そんな会話を交わす熊戸と下北。

 やっぱりこの二人も仲良いと思う。





「そういえばさ、二人は今度ある映画って興味あったりする?」




 花音が急に映画の話をしだす。俺と花音が好きな漫画が映画化されて今度放映されるのだ。

 熊戸と下北も話を聞くと、その映画を見に行くつもりらしい。




「じゃあ、ダブルデートしようよ!」

「いいですね!!」




 なんて会話が花音と熊戸の間でなされて、今度一緒に映画を見に行くことになった。






 その日はそうやって会話を交わして別れた。


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