花音と、一年生 ②

 花音と下北と熊戸と一緒にファミレスまでの道を歩く。




 相変わらず花音は視線を浴びている。……というか花音が可愛いと有名だから、俺のことも周りに知られたりしている。花音とよくいく場所に一人で行ったら「花音ちゃんは?」と聞かれることもあるのだ。




「きー君、手つなごう!!」

「ああ」





 花音が手を伸ばしてくれて、俺はその手を握る。後ろから視線を感じて、後輩二人も一緒だったんだと気づいて少し恥ずかしくなったけれど、花音が嬉しそうに笑っているからいいかと思った。




 ちなみに後ろにいる二人は「私たちも手を繋ぐ?」「うん」と頷きあって手を繋いでいた。仲が良いなと頬が緩む。仲が良いことは良いことだしな。花音もにこにこしている。


 



「なかよかねー。ふふ、でも私ときー君もまけんぐらい仲良かけどね!!」

「そうだな」




 頷けば、花音はえへへと笑った。





 四人で歩いてファミレスにたどり着き、中へと入る。そして四人席に案内され、俺と花音が隣同士に座り、その向かいに熊戸と下北が座る。

 花音は後輩と一緒にファミレスに来れただけで嬉しいらしく、いつも通りににこにこしていた。


 花音が楽しそうにしていると俺も嬉しくて、笑ってしまう。





「きー君何食べる? 流果ちゃんと下北君は何がいい?」




 何だか花音は後輩カップルと話すのが本当に嬉しいらしく、にこにこ笑って、グイグイいっている。




 花音は人懐っこいけれど、人に対する警戒心は結構ある。そんな花音がこれだけ気を許しているのを見ると、俺もこの二人に対する警戒心はなくなっていく。まぁ、でも花音が人を見る目があるとはいえ、俺もそれなりに警戒心は持たなければならないだろうけれど。





「天道先輩、私はハンバーグ定食食べます!! 宗はどうする?」

「僕はパスタ」

「もっと食べたら?」



 熊戸と下北は仲良さげに話している。




「きー君、私はカツ丼食べる! きー君は?」

「じゃあ、俺はカツカレーで」




 俺たちが全て決めると花音が店員を呼んで、注文を伝えていた。ついでに食後のパフェまで花音は頼んでいた。それを見て、熊戸もプリンを頼み、俺もチョコケーキを頼んだ。下北は甘い物がそこまで得意ではないらしく、頼まなかった。




「天道先輩と上林先輩は出会ったのが去年って本当ですか? なんだかファミレスに来るまでの間のやり取り見ているだけでも仲良すぎたので……」

「そうだよー。私ときー君は去年会ったんだよ。夏休みに仲良くなって、それから一緒にいるんだよ。流果ちゃんと下北君はいつからの付き合いなの?」




 そもそも俺と花音が出会って、まだ一年も経っていないのだ。その事実を伝えると周りはいつも驚いているんだよな。俺と花音の距離感が一年も経たない距離感ではないと。

 なんというかもうすっかり俺の隣には花音がいるのが当たり前になっているんだよなぁ。花音がいなくなったらどれだけショックを受けるか分からない。






「一年も経ってなくてそれとか凄いです! 私と宗は小学生からの付き合いですよ! 付き合い出したのは中学生からですけど」

「へぇ。幼馴染っていいね。私もきー君と幼馴染だったら楽しかっただろうなぁ。でもきー君とこういう形で出会ったから仲良しになれたと思うしなぁ。ね、きー君、私、きー君の子供の頃の写真とか見たか!!」




 熊戸と話していたかと思えば、花音がそう言いながら俺の方を振り向いた。

 そして目をキラキラさせてそう言った。





「実家にはあるから今度一緒に見にいくか?」

「え、よかと?」

「うん」




 実家は両親も海外にいるし、幼馴染のこともあって寄り付かなかったけれど、花音と一緒なら実家の方面に行くのもありかなと思っている。

 それに両親もそのうち日本に戻ってくる予定だしな。ずっと海外生活をしていくわけでもないからな。



 そう思って頷けば、花音は嬉しそうに微笑んだ。




「やっぱりお二人とも仲良しですね。そういう仲が良いの憧れます。私と宗も負けないようにしないと」




 そう言いながら熊戸はべったりと下北の腕を取る。



 下北はそれに何も返事は返さないが、顔がにやけている。やっぱり仲が良いんだなと思った。





 そういう会話を交わしていれば、注文していた料理が届いた。

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