花音と花見

「きー君、行こう!!」

「ああ」




 まだ春休み中である。

 今日は花音と一緒に花見に行くことにした。俺と花音で花見の時に食べるお弁当を作った。



 最近は花音がいつも料理を作ってくれていたから、俺がキッチンで料理を作るのは久しぶりだった。花音が主導で、お弁当箱に入れる料理を作った。それにしても何時の間にかお花見用のお弁当箱を準備していたらしい。



 それを保冷バックの中に入れて、花音と一緒に外に出る。春らしいピンク色のコートを着た花音。うん、可愛い。



 俺があげた帽子もかぶっている。

 花音がにこにこしていると俺も嬉しい。


 もちろん、お花見の弁当は俺が持っている。花音が持っているのはシートだ。この近くに花見のスポットがあるのだ。去年は全然興味がなくて、家族連れも多いなぁとしか考えてなかったんだよな。





 一年経てば、こんなにも俺の世界がかわっていくなんて思ってもいなかった。

 花音と一緒にお花見スポットの公園にたどり着いた。シートをひいてお花見をしているエリアで、空いているエリアを花音が見つける。というか、花音の可愛さに「此処どうぞ」と開けてくれた人がいたのだ。花音は凄いなと思う。




 花音と一緒に桜が見えやすい位置で、シートをひく。このシートは、花音が小中学生の頃に遠足で使っていたものらしい。花柄の可愛いそれを「なつかしかけん持ってきて良かった」と喜んでいたっけ。




「ふふふふ~ん」




 花音はシートを敷いて、桜を見ながらご機嫌そうに鼻歌を歌っている。俺も知っているアニソンだ。自分で鼻歌を口ずさんでいる自覚はないのかもしれない。



「花音、鼻歌出てる」

「え!? 鼻歌なんて私うたっとった?」




 はっとなったようにきょきょろ周りを見渡す花音。そして子供連れの夫婦と目が合う。小学生低学年ぐらいの男の子が「お姉ちゃん歌ってたよ。可愛かった」と笑っていた。その言葉に花音は顔を赤くする。




「可愛いなぁ、花音」

「もう、きー君!! 私ははずかしかとよ!! 私の鼻歌のことは置いておいて、ご飯たべよー。あと写真!!」




 そう言って恥ずかしそうな花音を俺はスマホで写真を撮っていた。



「って、きー君!! 私の写真もよかけど、一緒に写真もとるとよー!!」




 それにしても花音は凛久さんにいつも写真を撮られているからか、自分が撮られるのに拒否反応はないらしい。でも俺と一緒の写真が欲しいなどと可愛いことを言っていた。


 花音は「撮るよー」といいながら自分のスマホで俺との写真を撮る。写真を撮るために顔をくっつけると、何だかドキリとする。そうやって写真を撮っていれば、先ほどの子供連れの夫婦が俺たちの写真を撮ってくれることになった。




「ふふ、私たちが仲良しだっていう写真が撮れたね! めっちゃよかわー。こうやってきー君との思い出が沢山増えていくと思うとうれしかー」




 自分のスマホを見て、花音は満面の笑みを浮かべる。

 そんな花音と一緒に、食事をとる。色んな具を入れたおにぎりも美味しい。


「おいしかー」

「美味しいな」

「花音、いつも料理ありがとう」

「ふふ、急にどがんしたと? それに今回のお弁当は一緒につくったやんか」

「それでもだよ。お礼を言いたくなったんだよ」

「そんなんねー。それにしても桜、きれいかねー」

「ああ。綺麗だ」



 桜の花びらが散る。その下に花音がいて、花音と桜ってすごく合うなと思った。まぁ、花音はどんな季節も、どんな景色も似合いそうだなと思う。




「ねーねー、きー君、あそこの人、お酒のみよるねー。やっぱり花見をしながらのお酒っておいしかとかなー?」

「どうだろう? でも大人になったら飲んでみたいな」

「うん、私も。あ、でも強いお酒はめーよ? 大学生になったら飲み会とかあっかもけど、お持ち帰りとかされたらだめやけんね?」

「それは花音もな。花音は可愛いから、そういうの気を付けないと」

「うん!! 私ちゃんと、その辺の防犯はちゃんとすーよ!!」




 花音は将来のことを考えて、お持ち帰りされたら駄目などというが、明らかに花音の方がその心配は高いと思う。



「きー君、私が初めてお酒飲むときはきー君の隣やけんね?」

「ああ」



 そんな将来の話を花音と共にしながら、俺たちは花見を楽しむのだった。




 来年も花音と一緒にこうして花見を出来たらいいなとそんな風に思った。




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