両親と花音との春休み③

「そういえば、お兄ちゃん、最近こんねー?」

「俺の母さん達がいるから遠慮してるんじゃないか」

「遠慮? お兄ちゃんが? あのお兄ちゃんが?」




 花音と朝から話していたけれど、花音は凛久さんが俺の両親がいるからといって遠慮していることが不思議なようだ。



 花音からしてみれば凛久さんのことがどんなふうに見えているのだろうか? 基本的に花音に対してすさまじいシスコンぶりを見せている凛久さんは、花音にとってみればそういうことを気にしないという印象なのかもしれない。




「でもお兄ちゃん、結構毎週きとったやん? 最近、たまにしかこんけん、なんかいそがしかとかなーって」

「凛久さんだって用事があるんだろう」



 そう言う話をしながらソファでのんびりとする。

 ちなみに母さんと父さんは、出かけて行った。二人でデートらしい。




「なあ、花音、どこか行くか?」

「んー、じゃあ水族館行きたいかも」

「水族館?」

「うん。テレビで見ていきたかなーって」

「じゃあ行くか」

「うん」



 幸いにも近場に水族館があるので、花音と一緒に水族館に向かうことにした。手を繋ぎながら、水族館に行くことは母さんたちに連絡しておく。




「ねーねー。きー君、あとさ。花見も行こうよ。そろそろ綺麗だし。綺麗な桜をきー君と見れたら楽しそうだなーって」

「そうだな」



 そんな会話をしながら、水族館にたどり着いた。




「なんかカップルおおかねー」

「そうだな。春休みだしなぁ」




 初々しい様子のカップルなどを見かけながら、そういえば俺と花音ってそういう初々しさはあまりないよなぁなんて思う。……そもそも付き合う前から、花音は俺の家に入り浸っていて、一緒に食事して出かけて、凛久さんがいるとはいえ、俺の所に泊っていたし。




「んー、きー君、どがんした? いちゃいちゃしとーカップルみよって、私たちもいちゃいちゃすー?」

「いや、俺と花音って、あんまり初々しさとかないなぁって。待ち合わせしてデートとかもないし」

「待ち合わせデートしてみる?」

「……いや、それはそれで花音がナンパされそうだし、心配かな」

「私も―!! きー君がナンパされるの嫌やし、待ち合わせはちょっといいかなーって思うけれど、きー君と家から一緒に出掛けた方がたのしかしねー」




 花音と一緒に待ち合わせをして、それからデートに行くのもいいかもしれないと思ったが、花音は可愛いのでナンパされそうだし、家からそのまま行く方がよさそうだと思った。




 花音も同じ気持ちらしい。

 二人で手を繋ぎながら、水族館を進んでいく。




「わー、アザラシかわいかねー。きー君は、水族館だとなんが好き?」

「サメ」

「サメ!! うん、サメもかっこよかよねー。なんか水族館の人がさ、サメもいる水槽で一緒におよいどったりしてかっこよかねーってめっちゃおもいよっと」

「そうだよな。こういう水族館で働いている人も憧れるよな」

「うん、そうよねー。きー君はどういう所で将来はたらきたか?」

「ゲームとか漫画とかに関わるのもいいなぁって思うけれど、何でもやってみたいかな。まだ明確に何がしたいか決まってないから、大学生のうちに決められたらと思う」

「ふふ、そうやねー。一緒にさがしたかね! 私も色々挑戦してみたかなーって思うけど、一番の夢はきー君のお嫁さんよ!!」

「俺も花音をお嫁さんにするのが目標だな」

「えへへー。一緒の目標ってうれしかねー」



 花音が可愛くて、俺は笑ってしまう。



 というか花音の言葉が嬉しくて俺もさらっと言ってしまったが、ある意味プロポーズっぽい気がする。……うん、高校卒業して大学にはいってから、ちゃんと花音と将来を歩むためにプロポーズ考えたいな。




「ねーねー。きー君、見て見て!!」

「おお、凄いな」

「この亀かわいー」

「うん。そうだな」



 はしゃぐ花音と一緒に過ごすと楽しかった。

 というか、花音がいちいちはしゃいでいて可愛くて、周りの視線も花音に向けられていた。




「あの子可愛い」

「凄い美少女」



 そういうつぶやきが結構聞こえる。というか、水族館の人も花音に話しかけられると凄く笑顔なんだよな。

 花音が可愛いからだけじゃなくて、人懐っこくにこにこしているからというのもあるだろう。やっぱりいつでも笑ってにこにこしていることは人付き合いの中で凄い強みなのだと思う。




 それから水族館を見て回って、母さんたちや凛久さんたちにお土産を買って帰宅した。




 家に帰ってもう帰宅していた母さんと父さんに、花音が「きー君と一緒に水族館行って楽しかった」と俺との水族館が如何に楽しかったかを口にしていた。

 母さんも父さんもそんな花音を優しい瞳で見つめていた。








 そうして母さんと父さんと花音と過ごす楽しい日々はあっと言う間に過ぎて行った。

 そして母さんと父さんが海外に戻る日付がやってきたので、空港まで両親を見届けに行った。





「百合さんたちと今回会えてよかったー。次に会う時はもっと仲良くなれたらよかなー」

「花音ならいつでも仲良くなれるだろ。次に母さん達が帰ってくるとしたら夏か、一年後ぐらいかな」

「ふふ、それまでによか女にならんとね」



 花音は良い女になると、そんな宣言をしながら笑うのだった。



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