両親と花音との春休み①
「おはよーきー君、料理できとーよ?」
目を覚ました時、花音がにこにこと笑いながら俺のことを見下ろしていた。
「花音、おはよう」
「ふふ、きー君、ねぼけとーね? かわいかー」
目をこすりながら身体を起こすと、花音はにこにこと微笑んでいた。
「花音の方が、可愛い」
「かわいか私を朝から見れて幸せやろー?」
「うん」
寝ぼけながら素直に頷けば、嬉しそうに花音が笑う。本当に可愛い。
そう思っていたら、声が聞こえてくる。
「喜一と花音ちゃんは朝からイチャイチャしているのね?」
「あ、おはよう、母さん」
「あら、私がいた事忘れていたのかしら?」
「うん、忘れてた……」
俺の部屋を覗き込んだ母さんが愉しそうに笑っていて、俺は母さんと父さんが俺の家に泊っていたことを思い出した。いや、なんか寝ぼけた頭だと母さん達がいることあまり頭になかったんだよな。
「喜一、おはよう。可愛い彼女に起こされるなんて幸せものだね」
「そうだな、父さん」
俺が父さんの言葉に素直に頷けば、それを聞いていた花音が顔を破顔させていた。
「花音ちゃん、幸せそうね」
「えへへー。そりゃそうですよー。百合さん、きー君って、凄い素直に私のこと褒めてくれるというか、凄い、かっこいいっていうかー」
キッチンの方で花音は何だか可愛いことを言っていた。朝でも昼でも夜でも――なんというかいつでも可愛いとしか言えない。
「喜一、敬一さん、ご飯食べましょう。今日は花音ちゃんと一緒に作ったのよ」
「きー君、たべよー!!」
にっこりと微笑む母さんと花音。
なんだか母さんと父さんと、花音が一緒にいるって不思議な気持ちだ。というか、高校生になって一人暮らしをするようになって、母さんと父さんがこの家にやってくるのも数回だけだったし、なんだか不思議だ。だけど、幸せな空間だと思う。
「ねーねー、きー君、おいしかー?」
「うん、美味しい」
「えへへー。よかったー」
しかし花音もすっかり母さんと父さんがいるのに慣れている気がする。
昨日の段階で大分、花音は母さんと父さんと仲良くなっていたしな。
「喜一と花音は、今日はどうするの?」
「特に考えていなかった。花音、どうする?」
「私も特に考えとらんかった。きー君と一緒やったら何でも嬉しいし。あ、でも百合さんたちがいいっていってくれるならゲームしたいです! 新作ゲーム買ってて」
「全然いいわよ。私と敬一さんはお邪魔しているだけだから、自由にいつも通りに過ごしていいのよ? 花音ちゃんも結構喜一と一緒で家で楽しめる方なのね。でも折角の春休みだし、どこかで出かけたら? 私と敬一さんも久しぶりの日本だから出かけるつもりなのよ」
母さんは俺と花音の言葉に、そう言ってにこにこと笑っている。
母さんと父さんは日本にいるうちに、デートを何度も繰り返す予定らしい。今日も午後から、デートに出かけるようだ。
今日は花音がゲームしたいというので、ゲームをすることにする。明日以降は……、何処に行くか、決めるか。
家でも花音と一緒なら楽しいけど、出かけるのも楽しいだろうし。
「あ、そうだ。百合さん、あの、もしよかったらどこかで一緒に買い物とかいきません? 私、百合さんと敬一さんとお出かけもしたいんですよねー」
「もちろん、いいわよ」
「やったー!! じゃあ行く場所ピックアップしておきますねー」
花音と母さんがそういう会話を交わしていた。
それにしても花音が幸せそうで俺も幸せな気持ちになる。
朝食を食べた後は、花音と母さんは洗い物をしていた。俺と父さんはのんびりしていていいと言われたので、二人でテレビを見ていた。
「父さんたちは今日は何処に行くの?」
「そうだね、私たちは――」
父さんと会話を交わしていると、花音が洗い物が終わったらしく俺の傍にやってくる。
「きー君、きー君、ゲームやろー!! 敬一さん、ゲームやってもいいですか?」
「ああ。もちろん、かまわないよ」
そして花音がゲームの準備をして、ゲームが始まる。
……花音が持ってきたゲームはギャルゲーだった。両親の前でギャルゲーを彼女と一緒にやるという何とも言えない状況だが、まぁ、別にいいだろう。
「花音、このゲームは?」
「この前発売されたばかりのギャルゲーだよ。前評判からもヒロインたちが可愛いって噂なんよ!! あんね、私的には、HPで見たこの黒髪黒目の和風系の美少女がいいなーって思ってるんよ! 剣と魔法のファンタジーの世界なんやけどさー。人外乙女ってすごく素敵よねー」
「そうか。俺はこっちの子が気になるかも」
「きー君、そっちの子が好みなん?」
「紹介文みると花音に似てるからな」
「……私に似てる? んー、自分では実感せんけど」
花音はそう言うけれど、似ていると思う。
どこか大人しいというか、大人っぽい見た目で、それで紹介文では明るい性格と書かれていて、花音にちょっと似ている気がする。
最初にギャルゲーを進めるのは花音である。花音は先ほど言った黒髪黒目の子を落とそうと選択肢を選んでいっていた。
しかし、最終的に魔の者に世界が征服せれるバッドエンドになっていた。花音が落ち込んでいた。
「きー君、私のリベンジして!!」
「了解」
そして次は俺がバッドエンドにならないようにゲームを進めることにする。
ちなみにそんなこんなしている間に、母さんと父さんはデートに出かけて行った。
その日はずっと俺と花音はゲームに勤しんでいた。ちなみにバッドエンドが多すぎて、中々ハッピーエンドやノーマルエンドにたどり着けなかった。
母さんと父さんが帰ってきた時もずっとゲームしていて、母さんと父さんには呆れられてしまった。
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