食事会②


 出てきた和食を口に含みながら、俺は会話を交わす。



 それにしてもこの刺身、滅茶苦茶上手い。一人暮らしだと刺身って結構高いから、時々しか食べないし、こういう時にはいっぱい食べている。花音も嬉しそうにパクパク食べていた。


 食事会まで緊張していた様子だったのに花音はすっかり気を抜いている気がする。それは母さんが花音の緊張をほぐすように話しかけていたからというのもあるだろう。




「きー君、こん刺身めっちゃうまかねー」

「そうだな。美味しいな」

「花音ちゃんと喜一は、本当に仲良しね。私たちがいるうちに美味しいもの沢山食べに行きましょう。花音ちゃんも喜一も食べたいものあったら何でもいいなさいね」



 美味しいものを食べてにこにこと笑っている花音を見ながら母さんがそう言って微笑む。


 うん、美味しいって言いながら笑っている花音、滅茶苦茶可愛いからな。母さんも可愛い花音にときめいているのかもしれない。俺一人だったらそんな食べたいものなんでもとか言いださなかったかもだし。






「いいんですか? えっと、私、色々食べたいものは沢山ありますけど……でもそうですね! きー君の好物の料理とかあったら知りたいです!! 私、きー君の胃袋を掴むのを目標なんです!」

「花音ちゃん……いいわ、幾らでも教えるわ!!」

「花音、凄い可愛いぞ!! 百合さん、俺の妹は凄く可愛いでしょう?」

「ええ。とてもかわいらしいわ。凛久君もとても綺麗な顔立ちをしているわね。イケメンだわ。美男美女兄妹ね」




 なんだか母さんと凛久さんが意気投合していた。

 それにしても凛久さんは結構すぐ誰とでも仲良くなるよな。それは花音もだけど、こう仲良くしようとしている人とはすぐに仲良くなるというか……。





「喜一君、花音はとても幸せそうだわ。これからもよろしくね。敬一さんもしばらく喜一君の家に泊まるのでしょう? 花音は喜一君の家に入り浸っているようだから、よろしくお願いしますね」

「はい、まあ、俺の方が花音に幸せにしてもらってますから……」

「はい。咲綾さんもうちの喜一がこれからもお世話になるでしょうから、よろしくお願いします」



 なんか母さん達と咲綾さんたちは会話を交わしているうちに名前呼びになっていた。まぁ、天道さんや上林さんだとどっちのことを言っているか分からないだろうから。




「ねーねー、きー君、明日ね。百合さんがご飯作ってくれるって!! 私もきー君の好物をおぼえるけんねー!!」



 咲綾さんたちと話していたら、花音がそんな声をあげてにこにこと微笑んでいる。それを母さんが優しい目で見つめている。



 それにしてもこんな中で栄之助さんは、時々しか喋らない。まぁ、父さんとにこやかに会話を交わしているけれど。父さんも結構誰とでもにこやかに話すほうで人当たり良いから、栄之助さんとも仲良くなれているのかもしれない。


 何だか母さん達同士で連絡先も交換しているし。




「喜一君も連絡先交換しましょうよ」

「はい」



 ちなみに俺は咲綾さん、栄之助さんとそれぞれ連絡先を交換しているわけではなかったので、今回俺も交換した。



 しかし皆個別の連絡先知っていることになって、びっくりである。花音は父さんとも連絡先を交換していて、楽しそうである。



「えへへー、きー君の両親ともっとなかよくなれそう」



 ボソリと隣でそんなことを呟いて、嬉しそうで、可愛いなと思わず両親もいるのに頭を撫でてしまった。……だって花音が可愛いから。頭に手をやってから、はっとなる。何だか母さんが少しニヤニヤしていて、ちょっと恥ずかしかった。後、花音の整えている髪型を崩さないようには気を付けたけど。




「花音ちゃんと喜一は本当に仲良しね。いつも喜一は花音ちゃんの頭を撫でてるのね」

「仲良いことはいいことだね、喜一」

「ふふ、私と敬一さんも負けてないわよ。でも喜一の家にいる間に沢山、仲良くしている二人を見れるかと思うと楽しみだわ」



 母さんはそう言いながら父さんに引っ付いている。何だか咲綾さんも抵抗してか、「いいわねー」といいながら栄之助さんにひっついているし。何だか、凛久さんだけ余ってる感がある。本人気にしてなさそうだけど。


 食事を取りながら二時間ほどその場で過ごした。話は尽きることなかった。結構俺と花音の話題が多くて恥ずかしかったけど、母さんたちが咲綾さんたちと仲良くなっていることは嬉しかったし、花音が幸せそうに笑っているからいいことだと思った。





「それじゃあ、私たちは帰るわ。またお会いしましょう。百合さん、敬一さん。喜一君も、また是非、家においでね」

「それではまた」




 途中まで同じ電車に乗っていたのだが、咲綾さんと栄之助さんは乗り換えのため駅を降りて行った。凛久さんも一旦一人暮らししている家に帰るらしく、途中下車した。まぁ、凛久さんは俺と花音の春休み中に来るって言っていたけれど、母さん達がいるから凛久さんは遠慮しているのかもしれない。




 そして母さん、父さん、俺、花音で俺の家へと帰宅した。花音が当たり前みたいに俺の家に「ただいまー」と帰っていて、母さんと父さんがそれに気づいて面白そうに笑っていた。

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