春休みが始まった。
春休みが始まった。
朝が起きてからの日課は勉強をすることである。朝食までの間にセンター試験の勉強をする。その間に花音が朝食を作ってくれている。
今日は起きた時に花音が俺のことをにこにこしながら覗き込んでいた。
花音が言うには俺の寝顔を見たいがために早起きをしているらしい。……俺の寝顔なんて何回も見ているだろうに、全然飽きないようだ。俺の寝顔の何が楽しんだかって口にしたら「私の寝顔もあきんやろー?」って言われた。確かにその通りだった。
「きー君、朝ごはん出来たよー。食べよー」
にこにこと笑いながら花音は声をかけてくる。
一旦勉強を中断して花音と一緒に朝食を食べる。
「きー君、今日はどがんする? 勉強ずっとしとく? やったら分からん事、私に聞いてね!」
「ああ。ありがとう」
「ふふ、よかよ。私、きー君のことささえたかもん。今年の一番の目標はきー君が受験に合格するように手助けすることやもん」
なんだか花音が俺の受験のことなのにすごく張り切っている。楽しそうににこにこ笑う花音は可愛いけれど、不思議に思う。
そのことが顔に出ていたのだろう。花音がにっこりと笑って言う。
「不思議そうな顔しとーね? 私は予行練習をしとっとよ!!」
「予行練習?」
「そーよ。何だか受験のためのきー君を支える私って、働くきー君を支えている私っていう将来の妄想にかぶるし!!」
花音は将来のことを妄想して楽しんでいるらしい。
でも俺も時々将来、大人になったら花音とどんなふうに過ごしているかとか考えてしまう。
きっと花音なら大人になってもにこにこしていて楽しそうにしているんだろうな。でも花音でも落ち込むことがあるかもしれないから、その時は支えていきたいと思う。
朝食を食べた後、花音は食器を洗ってからマンガを読んでいる。俺はその近くで勉強だ。花音には「私部屋に戻っとった方がいい?」と聞かれたこともあるけれど、花音が一緒に居た方がなんというか、やる気が出る。
花音は俺の邪魔をしないように勉強している間は俺に話しかけてきたりしないのだけど、ふと視線をずらした時に花音が近くにいるというそれだけで何だか嬉しくなるというか。俺も単純だなと思うけれど、花音がいると嬉しい。
勉強している俺と、漫画を読んだりスマホをいじったりしながら邪魔をしないように過ごしている花音。
午前中はそうして過ぎて行った。
「きー君、勉強お疲れ様―!! 昼食たべよー!! あと、一時間ぐらいは休憩しようね! 私、休憩時間にきー君のことをもてなすけんね! あと私がきー君と沢山はなしたかし!!」
花音は素直である。
自分の気持ちを飾らずに口にして、にこにこと笑う。
昼食も花音が作ってくれていた。的場先輩から料理を習ってから花音の料理スキルはめきめきとあがっていると思う。
「ねーねー、きー君、勉強お疲れ様―ってことで頭撫でていい?」
昼食を食べた後、花音がそんなことを言い始めた。
「いいけど、撫でたいのか?」
「うん、私午前中勉強しているきー君見てたけど一生懸命がんばっとったもん。きー君、がんばっとんねーって思ったら思いっきりきー君を甘やかしたい!!」
などといいながら花音はソファに座っている俺の頭を撫でる。花音は嬉しそうに「ふふふ」と笑いながら俺の頭を撫でまわす。
そしてしばらく撫でたかと思えば、満足したのか俺の隣に座る。
「きー君、ぎゅーってして?」
そしてそんなことを言い始める。
「急にどうした?」
「きー君の勉強邪魔せんかったご褒美!! 私にもご褒美ちょーだい。きー君に、ぎゅーってされたかと!!」
花音がそんな可愛いことを言うので、隣に座る花音を抱き寄せる。花音は俺の身体に手をまわして「えへへー」と笑っている。絶対に俺の心臓のドキドキが聞こえているだろうし、花音を抱きしめるのはまだまだ慣れない。でも花音に甘えられると思いっきり甘やかしたくなってしまうというか、抗えないというか……。
「きー君、ドキドキしとーね!! かわいか私がくっついとって、こがんドックンドックンさせとっとーね。なんかきー君にぎゅーってしてもらうとうれしかねー」
あまりにも可愛くて、花音を一旦話してキスしてしまった。
俺からキスしたら花音は「えへへー」とまた幸せそうな笑みを浮かべていた。
「もっとちゅーすー?」
「……いや、勉強再会する」
「むー、もうちゅーしてくれんと? よし、了解。じゃあまた勉強終わったらちゅーしよーね!! 私、大人しくのんびり過ごしとくね」
切り替えが早い花音はそのまま漫画を読み始めたので、俺も勉強を再開するのであった。
そんな風に一日が過ぎていく。
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