友人とホワイトデーのお返しを買いに行く

 3月はホワイトデーの季節である。俺は花音からチョコレートをもらったし、クラスメイトたちからも義理のチョコレートをもらった。あとは明知からも。



 なのでそのお返しを買いにショッピングセンターに向かった。



 メンバーは俺、ゆうき、倉敷である。

 倉敷はそれはもう多くのチョコレートをもらったらしい。そういえば凛久さんも大量にチョコレートをもらったって言っていたな。




「喜一は誰用に買うんだ?」

「花音と他にくれた人たち用だ。花音以外のは普通のにする予定だけど」

「花音ちゃんがチョコレートくれているだけでもすごいよなぁ。上林が花音ちゃんとイチャイチャしていると俺も彼女が欲しくなる」



 ゆうきの言葉に答えれば、倉敷がそんなことを言う。




「最近、喜一と天道さんにあてられてカップル増えているらしいからな」

「あれ見てたらほしくなるよなー」

「え、なんだ、それ」



 なんだか俺と花音にあてられてカップルが増えているなどという情報をもらって、俺は驚いてしまった。



「なんだって、喜一と天道さんが終始いちゃいちゃしていて、天道さんが喜一といると可愛いから皆そういう気持ちになっているんだよ」

「そうそう。上林、花音ちゃんと常にイチャイチャしているじゃんか。しかも会話がなんというか、互いに分かり合ってますみたいな感じだし。花音ちゃん、上林が居ない時は今まで通り優しい笑みを浮かべているだけだけど、上林の側だと何だか無邪気に笑って、時々方言とか漏れてるじゃん。ああいう、彼氏の前ではあれだけ可愛い姿を見るとああいう可愛い彼女が欲しいってなるのは当然だし」



 そんな風に二人に言われてしまった。




「そんなに言うなら倉敷は彼女を作ったらいいんじゃないか? 結構告白されてるだろう」

「告白はされてるけどさ。上林と花音ちゃんみたいな感じがいい。誰でもいいって付き合ったら大変そうじゃん」

「……じゃあ三瓶は?」

「え。何で郁子が出てくるんだよ?」



 見ている限り三瓶は倉敷に少なからず思っているように見えたのだが、そのあたりは倉敷に伝わっていないらしい。一旦、その話はそこでお開きになり、ホワイトデーのお返しのコーナーを見て回ることにした。



 ちなみにゆうきは好きな子から友チョコをもらえたらしいので、それと家族からもらった分のお返しなどを選ぶらしい。




 ホワイトデーのお返しというものは思ったよりも沢山の種類が並んでいる。去年はクラスメイトから義理のチョコレートをもらうこともなかったし、小学生の頃はスーパーで親と買ったお返しを返していたしな。こんな大きなショッピングセンターでホワイトデーのコーナーをマジマジと見るのは初めてである。



 ちなみに中学時代に関しては中学デビューした幼馴染の件で色々あったので、そもそも母親以外からそんなものもらわなかった。



 花音は何だと喜ぶのだろうか。

 ――花音は何でも喜びそうだけど、花音が一番喜ぶものをあげたい。

 ありがとう、といって花の咲くような笑みを浮かべる花音は、きっと可愛いだろう。花音が笑っていると俺は嬉しいから、花音が喜んでくれるものを選びたい。





「花音、どれなら喜ぶんだろうか」

「天道さんなら何でも喜ぶと思うぞ」

「俺も花音ちゃんなら上林があげたものなら何でも喜ぶと思う」



 どれがいいのだろうか、などと思いながら見ていれば二人にそう言われた。



 二人はさっさとクッキーなどのお菓子で選んでいた。俺も明知たちへのお返しはクッキーなどだけにしようと思っている。



 入浴剤や香水やハンカチ、お菓子と沢山のものが並んでいる。

 結局これがお勧めと書かれていた入浴剤のセットと、カップケーキを購入することにした。カップケーキは五つ入りである。かわいらしいラッピングがされている。




「なぁ、ゆうき、ちょっとこれを当日ぐらいまで預かっててくれないか。花音に何を買っているかバレそうだから」

「ああ。いいぞ。相変わらず天道さんは喜一の家に入り浸っているんだな。冷蔵庫とかも普通に開けていたもんな」

「寧ろそれってほとんど同棲だよな? お隣さん同士っていいよな。俺も一人暮らししようかなぁ……。っていっても高校は近いから一人暮らしするなら大学に入ってからになりそうだけど」




 すっかり花音が俺の家でどう過ごしているかは二人には把握されている。学園では流石に毎日のように入り浸っていて、土日に泊ったりしている――ぐらいにずっと過ごしていることは知られてはいないと思う。



 付き合っていることはもうすっかり広まりまくっているけれど。



 花音へのホワイトデーのお返しは一旦ゆうきに預かってもらうことになった。渡した時に、花音はどんなふうに笑ってくれるだろうか。

 ――それを考えるだけで俺の頬は緩んでしまった。


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