凛久さんと的場先輩と、春の話
「喜一、花音、来たぞ」
「上林君、花音ちゃん、こんにちは!!」
土曜日、凛久さんと的場先輩が家にやってきた。ちなみに二人はマンションの下であったらしい。
そういえば俺と花音が付き合いだしてから最初は凛久さんも遠慮していたけれど、俺と花音が「二人で過ごしたい」と言わない限りまた土日に俺の家に来るようになった。
まぁ、俺も凛久さんがいると楽しいし、花音も「お兄ちゃんときー君と過ごすのたのしかね」といっていたので、いいかなと思っている。
的場先輩も時々やってくる。相変わらず花音に料理を教えていたり、俺と花音のことで色々聞いてきたりしている。
「的場先輩はもうすぐ卒業ですね!! 大学生になっても仲よくしてくださいね」
「もちろんよ。花音ちゃん、大学生になっても花音ちゃんとも上林君とも是非仲よくしたいわ!!」
花音の言葉に的場先輩は満面の笑顔で頷いていた。
でもそうか、的場先輩ももう卒業なのだ。俺と的場先輩が話すようになったのは、最近のことだけど、何だかこういう日々も変わっていくのだなと思う。
花音との生活もこれから日を重ねるにつれて、変わっていくのだろうか。どんな風に変わっていったとしても、花音と一緒ならばきっと幸せだろうなと思う。
将来のことを考えるだけで俺は楽しかった。
「喜一、俺の両親と喜一の両親で春に会うんだろう? 俺もそれに参加するからな。喜一の両親に会うの、俺も楽しみだ」
……来月初めに両親がこちらにやってくるので、その時に会うことになっているのだが、その時に凛久さんも一緒に会うらしい。
「その話詳しく聞きたいのよね!! もう両親と会うなんて結婚の報告みたいで素敵よね。両親と会って、話をして――っていいわ。凛久さん、花音ちゃん、上林君、あったら是非とも私にどんな風か報告してほしいわ!!」
「お前、本当にそういうのに興味津々だな……。こういうのは個人的なことなんだから和巳に言う必要はないだろう」
「もー!! いいじゃないですか!! 凛久さんは煩いですね。花音ちゃん、上林君、どう?」
なんだかまた的場先輩と凛久さんが喧嘩をし始めた。この二人、何だかんだ仲が良いよなぁ。
「私は全然いいですよー。それに私もきー君の両親と出会ったことを話せたら嬉しいですし!! きー君は?」
「俺も花音がいいならいいよ」
「ふふ、良かったわ。じゃあ、是非とも話してね」
的場先輩は得意顔でそんなことを言って、勝ち誇ったように凛久さんを見る。何だか凛久さんは悔しそうだし、何だか面白いなと思う。花音も楽しそうににこにこ笑っている。
「凛久さんと的場先輩って仲良いですよね」
「ねー。お兄ちゃんと的場先輩なかよか!!」
「「仲良くない(なか)」」
二人して同時にそんな風に言われた。やっぱり仲がいいよな? なんか喧嘩するほど仲が良いというか、多分二人とも互いに本気で嫌いあっているわけではないだろう。本当に嫌いなら凛久さんはもっと冷たいだろうし。
「私と凛久さんの話はおいといて。それより、上林君と花音ちゃんも学年が上がるわね。上林君も来年には大学生だけど、どこの大学に行くか決めているの?」
「はい。凛久さんと同じ所のつもりです」
「へぇ……凛久さんの所なの。そこそこ偏差値高いわよね? 勉強、私も見てあげられると思うから何かあったら言ってね」
的場先輩はそういって穏やかに微笑んでいた。
ありがとうございますと俺が言う前に花音が口を開いた。
「的場先輩、大丈夫です。私がきー君の勉強を見てますから!! 私がきー君の先生だから」
「ふふ、本当に花音ちゃんは上林君が大好きね。それにしても大学受験のことも問題がないって、凄いわね」
「えへへー。褒められると嬉しいですね」
「花音ちゃん、可愛い!!」
花音にがばっと的場先輩が抱き着く。抱き着かれた花音は嬉しそうに笑っている。それに対して文句をいうのは凛久さんである。
「おい、何で俺の花音に抱き着いているんだ!!」
その様子を見て、俺は楽しくなって笑った。
それからそれぞれ過ごしている。俺と花音はテレビを見ていて、的場先輩はその様子を見て楽しそうに笑い、凛久さんは時折俺たちの会話に入りながらスマホをいじっている。
なんだか的場先輩もちょくちょく俺の家に来るようになったから、的場先輩が家にいるのも慣れてきたなと思う。
「ねー。きー君、きー君の両親と会う時、おしゃれしたかけん、今度買い物いこー!! 買い物デートよ!!」
「うん。一緒に行こうか。俺もちゃんと服買おうかな」
「ふふ、じゃあ、私がきー君に似合うの選ぶけんね」
花音は両親達と出会う時ようの服が欲しいらしいので、今度一緒に買いに行くことにする。それを聞いていた的場先輩は「デートね、デート!!」と興奮していた。
それにしても両親と会うのは久しぶりだし、楽しみだな。母さんと父さんの海外での暮らしももっと聞きたいし、花音のことを紹介出来るのも嬉しい。
でもそういう会う場ってどういう場になるんだろうか。咲綾さんの方で予約を入れてくれるとは聞いているから、ちゃんとどこで食事を取るか聞いておかないと。そこまでかしこまった場ではないとは思うけれど、それによって服も変わるだろうし。
でもきっと、花音ならかしこまった場で着る服も似合うんだろうなとそんなことを考えるのだった。
的場先輩は夕方ごろに帰宅していった。凛久さんはまた泊って行ったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます