俺の誕生日 ③

「きー君、ハッピーバースデー!!」

「何回言うんだ? そしてこのケーキは?」

「食堂のおばちゃんに頼んで準備してもらったケーキだよー。ちょっと小ぶりだけど、甘いもの好きなきー君は喜んでくれるかなーって」



 食堂で働いているおばちゃんたちからもおめでとうと言われ、二切れほどのパンケーキも渡されてしまった。花音がこんな所にも手をまわしていることに驚いてしまった。でもこうしておめでとうと言われるのは嬉しいけどな。



「うん。ありがとう、花音」

「えへへー、きー君が喜んでくれてうれしかー」



 頭を撫でてほしそうにしている花音の頭を撫でれば、花音は嬉しそうに笑った。なんだか花音の頭の位置って撫でやすいんだよな。あと頭を撫でると花音が幸せそうな笑みを浮かべるから、すぐ撫でてしまう。



「きー君、なんかしてほしいことある? お菓子買ってきてほしいとかでもいいよ!!」

「……それパシリみたいだろ。俺は花音にそういうことにいってほしいというよりも、一緒に行きたいかな。花音と一緒の方がいいかな」

「ふふ、一緒の方がいいってやっぱりきー君かわいかー。私の彼氏可愛いよー。ねー、可愛いでしょ?」

「いや、花音、何で周りに絡んでるの?」



 何故か花音が近くに座っていた生徒に話しかけ始めた。話しかけられた女子生徒は、「は、はい。そうですね!!」と驚いたのか敬語になっていた。



「だって、きー君かわいかもん。私と一緒がいいって、よかよって幾らでもいいたくなーわ」



 うん、絶対にそんなことを言っている花音の方が可愛いと思う。花音可愛すぎない? そういう気持ちで一杯になってしまう。



「よし、じゃあ、きー君、あーん」

「いや、待て。ここ食堂だからな? 周りに生徒たくさんいるからな?」



 朝危惧していたことが、現実になりそうだった。


 花音はにこにこしながら、俺にあーんをしてくる。




「えー、よかやん。今、私がきー君に何を出来るか、どうしたらもっと喜ばせられるかなーって思ったらあーんかなって!!」

「それは気持ちだけで充分なんだけど……って、うん、わかったよ。食べるよ」



 恥ずかしいなぁと遠慮しようとしたら花音にしゅんとした表情をされてしまったので、諦めて口に含む。自分で思うけど俺、花音に弱すぎないか……。花音がしゅんとしてたりすると、すぐに折れてしまうというか。

 でも花音には笑っていてほしいなと思うんだよなぁ。



「はい、次! あーん」



 ……でも流石にさ、こんな注目を浴びている状況でこれは恥ずかしい。いや、でも……花音を悲しませたくないし、と俺はやるかと決意して周りを無視してパクパク食べた。



「ふふ、きー君にあーんするの楽しい!!」



 花音はそれはもう楽しんでいた。多分、花音は俺の誕生日を祝おうとテンションMAXで周りのことなど全く見ていないようだ。我に返った時に恥ずかしがりそうな気がする。でもまぁ、それはそれでいいかもしれない。恥ずかしがっている花音も可愛いだろうし。


 ちなみに記念と言われて、花音と食堂で写真を撮った。花音がパシャパシャと俺の写真を撮り、最後には周りの生徒に頼んで二人の写真を撮ってもらっていた。





 食事を終えて、花音と手を繋いで教室に向かった。何故か、「今日はきー君が主役やけんね。私はきー君を教室まで送り届けるナイトになっとよ」などと謎の発言をして送り届けてくれた。

 やっぱり花音は興奮していたりすると突拍子もないことを言い始めるな。




「上林、花音ちゃんとイチャイチャしてたんだって!! あーんとかいいなぁ。俺も彼女作ってイチャイチャしたいなぁ」

「達史、それなら――」

「ねーねー、上林君、花音ちゃんって上林君といると特に可愛いよね!!」



 倉敷が話しかけてきて、三瓶が何か言おうとした時に、別のクラスメイトが俺に近づいてきてそう言った。どうやらこのクラスメイトは先ほどまで食堂に居て、俺たちの事を見ていたらしい。



 それから昼休みが終わるまでの間、散々クラスメイトにうらやましがられたりからかわれたりした。



 そして午後の授業でも先生からお祝いを言われたり、お菓子をくれるクラスメイトも多数いた。

 放課後になれば、花音が俺の元へと迎えにきた。



「きー君、かえろー」



 そんな花音共に、学園を後にして、俺達は家へと帰宅するのだった。



「家に帰ってからが本番やけんね!!」



 などと花音がにこにこと笑いながら言っていたので、どんな風に祝われるのだろうかと楽しみになった。

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