付き合ってからはじめてのデート ④
動物園を後にして、俺と花音は動物園周辺をぶらぶらと歩く事にした。というのも、花音が「きー君、あんまり行かん所ぶらぶらしたら面白い場所みつけらっれかもしれんね」とぶらぶらしたいと言っていたからである。
「こっち、なんがあっとかな?」
「ね、ね、きー君、これみーよ!! かわいかね!!」
「きー君、きー君、見て見て!!」
花音は楽しそうにはしゃいで、俺に見つけたものを報告してくる。そんな花音が可愛いなと思って、俺も頬が緩む。
「ふふ、きー君、たのしかね」
「そうだな、俺も楽しい」
「きー君との初デートは素晴らしかったって学園で報告すっけんね!」
「報告するのか……」
「うん! クラスメイトたちにも聞かれるもん。最近、きー君とのことよくきかれっとよ。なんか今まできー君と他人のふりしとったけん、きー君の話、周りにできんかったやん? でも、今こうしてきー君の話を沢山周りに出来ると嬉しかとよねー」
……花音はクラスでどれだけ俺のことを話しているのだろうか。花音の主観による俺の情報が一年生に広まってるのはちょっと恥ずかしい。ただ花音があまりにも楽しそうだから止めはしないけれど。
「きー君もかわいか彼女である私のこと、たーくさん話してくれてよかけんね? 寧ろいっぱい話してほしかよ! 他の人が割り込めんぐらい私とラブラブやってこと、示してほしかもん」
「俺より花音だろ。俺はそんなにもてないし、割り込んではこようとしないだろ」
「だって明知先輩みたいに見る目ある人がおっかもしれんやん」
「明知は物好きだっただけだろ」
「むー、きー君、自分の事、わかっとらんね? きー君はとてもかっこよかとよ?」
そんな会話を花音と交わしていてはっとする。此処は外だから周りから注目を浴びていた。
「なにあれ、可愛い。高校生カップルかな?」「女の子の方言可愛いなぁ。俺も方言の彼女欲しい」「あんな可愛い子が彼女とか、うらやましい」
などと、そういう声が聞こえてきた。
「……花音、注目浴びてるからそろそろ帰るか」
「うん、かえろっか」
花音も注目を浴びていることに気づいて恥ずかしくなったらしい。そのまま帰宅する事にした。
電車に乗り、マンションへと戻る。
「きがえてくーね」
花音は部屋着に着替えて俺の家に戻ってくるつもりらしく、一旦自分の部屋へと戻っていった。
俺も動きやすい服へと着替えて、テレビをつけてくつろぐ。
料理番組をぼーっとしながら見ていたら花音が戻ってきた。
「きー君、今日はありがとう。凄く楽しかった」
「俺も楽しかったよ」
「またデートしよーね。私、きー君といきたかとこたくさんあっけん、沢山思い出作りたか!!」
にっこりと微笑んでそういう花音に了承の言葉を口にする。
花音はその後、動物園で撮って待ち受けにした写真を見てニヤニヤしていた。口角が崩れるほどに幸せそうな表情を浮かべている。
俺とのデートの写真だけでこれだけ嬉しそうにされると、嬉しくないわけがない。
「でもあれやね、きー君は受験もあっけん、デートするにしてもちゃんと考えんとね。私とお兄ちゃんできー君の先生やっけんね?」
「ありがとう。花音。でも俺も花音と出かけたいし、勉強ばかりも疲れるから適度に出かけたいかな。あと俺が勉強していても花音は遊んでてもいいからな?」
相変わらず俺の勉強も見る気満々な花音にそう言っておく。
「私はきー君に好きで勉強おしえとっけん、そがん言わんでよかよ。きー君に先生として色々おしえっと楽しかもん。ほら、現実では私はきー君の年下なのはどうあがいても変わらんけど、先生役やっている時ってなんかきー君の年上になった気分で楽しかし、私きー君との勉強楽しかとよね。
それになんというか、折角きー君が近くにおっとに、私だけで遊んでても寂しかし詰まらんもん。だからきー君が勉強しとる時は私も勉強すーけんね?」
「そうか。ありがとう。花音」
そう告げて頭を撫でれば、花音は「えへへ」と笑った。
それからいつものように夜まで過ごして、花音は隣の部屋へと戻っていった。
「今度はきー君がいきたかとこも考えといてね」と言われたので、花音と次のデートでどこに行きたいか俺も考えておこうと思う。
そんなことを考えながらカレンダーに目を通して、そういえば来週は俺の誕生日かと思い出すのだった。
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