付き合ってからはじめてのデート ②
花音に手を引かれて、俺は歩く。
今日の天気は晴れ。雨や雪が降っていないので、出かけるのにはぴったりな日だ。
「ふふふふふ~ん」
花音は俺の手を引きながら、嬉しそうに鼻歌を歌う。
「きー君と、デート、たのしかね~」
なんだかそんなことを口ずさみながらにこにこしている。
その様子を見ると俺も笑ってしまった。花音が笑っていると、こちらでまで幸せで嬉しい気持ちになってくる。
花音と一緒に電車に乗り、動物園を目指す。土日だというのもあり、電車は混んでいる。花音を庇うように電車に揺られる。
「きー君はどの動物みっとが楽しみ?」
「そうだなぁ。ライオンとかかな。やっぱかっこいいなと思うから」
「ふふ、男の子やねー。でも私もライオンかっこよかと思っとる。動物ってかわいかよねー。あー、楽しみ」
そんな会話を交わしていれば、目的の駅へとたどり着く。花音と一緒に電車から降りる。
「目的の駅やね。でもなんか、電車で移動するだけでも楽しかね。やっぱりきー君と一緒におるけんやね」
「俺も楽しい」
花音は俺の言葉に嬉しそうに笑った。
花音と手を繋いで、動物園の方へと向かう。このあたりは俺と花音が住んでいるあたりよりも人通りが多い。
入園料を払って中へと入る。
開園してすぐだが、それなりに人がいる。
「きー君、マップあるよ。みよー」
「ああ」
花音が館内の地図を見つけたので、二人でその地図を見る。そしてこんな動物がいるのかと話していく。とりあえず時間もあるので、一つ一つ見て見ることにする。
「きー君、あそこ人おーね」
「多いな。何見ているんだろ?」
「パンダやね!! パンダかわいかよねー。あんね、前に図書館に行った時にね、パンダの絵本見かけて可愛かったと思い出した。きー君読んだことある? パンダが銭湯いくやつなんやけど」
「ないなぁ。そんなのあるのか?」
「うん。ね、今度、一緒に図書館もいこーよ。図書館って楽しかよね。それか一緒に学園の図書室行くのもよかねー。私のお気に入りの本、きー君にもおすすめしたかもん」
俺は読んだことがないが、パンダの絵本があるらしい。昔読んだ絵本の事を考えると、子供向けの絵本というのは、不思議な話が多い。
花音が読んだパンダの話というのが、どういう話か分からないがにこにこしている花音を見ると、よっぽど面白い話なのだろうとは想像出来る。
それにしてもパンダって可愛いよなと思う。まじまじとパンダを見てそんなことを思う。
花音がスマホのカメラでパシャパシャと写真を撮っていた。
「きー君、たのしかねー」
嬉しそうに笑っている花音。そんな花音の愛らしい笑みに周りがほぉと息を吐いて見つめているのが分かる。やっぱり花音は目立つ。
というかあれだな、やっぱりちゃんとしたカメラ欲しいな。花音との思い出を写真として残しておきたい。スマホの写真でもいいといえばいいんだけど……花音なら幾らでも撮れる気がする。
今度、凛久さんに相談をしてカメラを一緒に買いに行くのもいいかもしれない。
「きー君、この子、凄く愛らしくなか?」
「うん。可愛いなぁ」
「ふふ、きー君の顔、凄く緩んどる。きー君もかわいかね!!」
「動物は可愛いからなぁ。俺、兎も好きなんだよな」
「よねー。つぶらな目がかわいか。もふもふやし、色んな色がおって、かわいかもん」
可愛い可愛いと口にしてはしゃぐ花音の方が可愛いよなぁなどと思いながら、二人で動物を見て回る。
「きー君、きー君、象ってでかかね。なんか海外では象に乗ったりすることもあるらしかよ。そういう世界って不思議よね。私、海外にいったことなかけん、ちょっと色々経験してみたか」
「だな。俺も海外旅行するなら色々みたいな」
「一緒に行こうね!! まずは海外旅行より国内旅行からやけど」
巨大な象を見ているとその大きさに驚くものだ。こんなに体が大きい生き物って、動物園ぐらいじゃないと日本ではまず見られない。でも確かに花音が言うように象に乗ったりする世界もあるんだよなぁ。
ネットを通して海外の情報を知ることは出来るけれど、今までの暮らしとは違う暮らしをしている人々の事は中々実感が湧かない。花音と一緒なら海外旅行もきっと楽しいだろう。
「きー君、象の所で写真撮りたか!! 頼んでくる!!」
俺は花音や動物の写真を撮っているだけでも満足していたが、花音は俺との写真を撮りたいみたいで、他のお客さんに頼みに行っていた。大学生ぐらいのカップルに花音が話しかければ、女性の方が「いいわよ」とにこにこ笑って了承してくれた。
象を背景に、俺と花音の写真を撮ってもらう。
「わー、ありがとうございます!!」
花音は写真を確認して、大学生カップルに満面の笑みでお礼を言った。
「これ待ち受けにする!!」
「待ち受けに?」
「うん!!」
花音はそう言いながらさっそくその写真をスマホの画像にしていた。そして「こうやって思い出増えるとよかねー」とにこにこしていた。
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