母さんからの報せ

 花音とのデートは、今度の土曜日に出かけることになった。花音がにこにこと笑っていて、俺も花音と一緒に出掛けるのが楽しみだ。




「ねーねー、きー君、動物園以外にどこいきたか?」

「花音と一緒ならどこでもいいけど」

「ふふ、きー君は私を喜ばせる天才やね。そんな風に言われっと嬉しかもん。でも私がいきたかとこばかりいくともなーって思うから行きたいところ教えてほしか」



 花音はそう言って笑う。

 花音は俺と出かけたい場所が沢山あるらしい。俺は花音と何処に行きたいだろうか。本心から花音とならば何処でも楽しいのだけど……。



「……そうだなぁ。花音と行きたい場所、動物系のカフェとか、あとは漫画の聖地巡りとかも楽しそうだとは思うけど」

「よかねー。動物と戯れるきー君、かわいかやろね!!」

「いや、絶対花音のが可愛いだろ」



 何故か動物と戯れる俺が可愛いなどと言い始める花音に、思わず言い返してしまう。いや、だって絶対動物と戯れる花音は可愛いと思う。



「えー、私がかわいかとは当然けど、きー君もかわいかとよー?」

「そんなことを言うのは花音だけだろ」

「きー君の可愛さとかよさを知っとるとは私だけでよかとよ? だってきー君のよさを知られたら皆いちころやもん」

「花音の方が男たちをいちころにしているだろ。……花音はモテるから誰かに掻っ攫われるんじゃないかとは思うし」



 うん、本当に花音と付き合いだしたのは今でも夢みたいな気持ちになる。それだけ花音は魅力的な女の子だから。



「もー心配性やね? いっとくけど、私は気に入ったものはとことん気に入る方やけんね? 正直今まで沢山告白はされてきたけれど、付き合いたいなって思ったのきー君だけやもん。きー君が嫌っていってもはなさんよ!!」



 花音はそう言いながら俺の手を取る。

 そうやって話していれば、俺のスマホが鳴った。母さんである。



『喜一、久しぶりね』

「母さん、久しぶり」



 そういえば前に母さんが電話してきた時も、花音が隣にいたんだよな。まぁ、花音に出会ってから花音は考えていればほとんど俺の傍に居るから、それも当たり前なのか。



『花音ちゃんの家はどうだった?』

「……楽しかったよ」

『ん? なんか前と反応違うわね? 花音ちゃんと何かあったのかしら?』

「……」

『もしかして付き合いだした?』

「……うん」

『あらあら、じゃあ、もしかしてまた花音ちゃん、そこにいたりするのかしら? 変わってもらえない?』



 母さんにわざわざ嘘をつく必要もないので素直に伝えたが、何だか親に彼女が出来た報告するのもむず痒い気持ちになるものである。

 母さんにそう言われて花音の方を見れば、花音は変わりたいと表情に出していた。


 そのまま花音に電話をかわる。




「百合さん、お久しぶりです!! きー君のこと、もらっちゃいました!! きー君のことは私が幸せにするので、よろしくお願いします!!」



 なんだか花音は第一声でそんなことを言っていた。



 普通逆じゃないか? 男が女を幸せにすると言っている事の方がきっと多いだろうに。でもまぁ、こういう形も俺達らしいのかもしれない。それにしても花音は俺をお持ち帰りしたいとか、俺をもらっちゃいましたとか言い方がいちいち花音らしいよな……と思った。




「ふふ、大丈夫ですよー。私きー君のこと大好きですもん。きー君とずっと一緒にいるつもりなので、百合さんも末永くよろしくお願いします」



 なんだか花音がにこにこと微笑んでそんなことを言っている。母さんはどんな反応をしているんだろうか……。



「わぁ、本当ですか! 是非是非。春にあいましょー!! あ、そうだ、もしよかったらうちの両親も呼んでもいいですか?」



 ん? なんか花音が言い出しているけど、よく分からない。春に会いましょうって、母さんたち春に来るのか?

 何で俺より先に花音がそれを知るんだか……。



「やったー。じゃあ会いましょー。お母さんたちに話を通しておきますよ!! あと、百合さんの連絡先、きー君に聞いていいです? 私、百合さんと仲良くなりたいです!!」



 なんだか花音は母さんと個別に連絡を取り合うことを約束していた。



「ありがとうございます。ちょくちょく連絡するかもです!! じゃあ、電話、きー君に戻しますねー」


 花音と母さんの間で何かしら話が終わったらしく、スマホが俺に返される。



『花音ちゃん、良い子ね』

「ああ。ところで、さっきの春にどうのこうのっていうのは……」

『私たち、春に一度日本に帰るのよ。そしたら花音ちゃんがその時に花音ちゃんの家族も呼びたいっていってたの。だからそういう方向で進めるわ』



 なんか勝手に決まっていた。……まぁ、咲綾さんたちにも改めて花音と付き合った事を報告したかったし、いいか。



『喜一の初彼女が花音ちゃんみたいな可愛い子で嬉しいわ。じゃあ、またね。喜一。帰国に日時が決まったら連絡すわ』

「うん。またね。母さん」



 そんな会話を終えて電話を切れば、花音に「百合さんの連絡先教えて!!」と言われたので教えておいた。早速連絡を入れているらしい。

 花音は俺の母さんと仲良くなれるのが嬉しいらしく、にこにこと笑っていた。


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