花音に誘われる
花音と付き合いだしてから数日が経過した。学園では相変わらずちらちら見られていたり、「どうやって花音ちゃんを落としたんだ」などと問い詰められることもたまにある。まぁ、一人にならないようにしているし変な絡まれ方はされていないからほっとしているけれど。
昼食は半分ぐらい花音と取っている。残りはゆうきや倉敷たちと食べている。登校も帰宅も花音と一緒に向かうのが当たり前になっている。
「ねー、きー君、今日ね、きー君と何で付き合いだしたのかってきかれたけん、沢山こたえたんよ」
「……何を答えたんだ?」
「きー君のどういう所にひかれたとか!! 私はきー君のことやったら幾らでも語れるんやもん」
花音はにこにこと笑いながらそんな報告をした。……花音が何か言っていたことは俺のクラスにも噂で聞こえてきていたけれど、実際に何を言っていたかは知らなかったからな。
それにしてもそういうことを堂々と言うのが花音だよなぁと思う。ちょっと恥ずかしいけれども、嬉しい気持ちも大きい。
「そうか」
「ふふ、きー君、ちょっとにやけとーね。私がきー君のこと、大好きって周りにいいよっとうれしかと? かわいかねー。きー君も幾らでも私んこと大好きやっていってよかけんね?」
花音は嬉しそうににこにこと笑っていた。
花音とそういう会話を交わしながら、買い物を済ませて家へと帰宅した。花音が俺の家の鍵をあけて中へと入る。そして二人でスーパーで購入したものを冷蔵庫に入れたりした。
「きー君、私着替えてくんね」
「ああ」
「というかいちいち着替えに戻るとも面倒やし、着替え幾つかきー君家おいとってもよか?」
花音はそんなことを聞いてくる。
まぁ、制服から私服に着替えるためだけに隣に戻るのも確かに面倒なのかもしれない。そう思ったので「ああ」と了承の言葉を口にする。そうすれば「じゃあ、持ってくる」と花音はにこにこと笑った。
それから私服に着替えて戻ってきた花音は、大きめのバックを持ってきていた。何組かの着替えを持ってきているらしい。それは俺の部屋へと置かれた。
それから花音は夕飯を作り始めた。手伝いを申し出たけれど、花音は「すわっときー。私がおいしか料理をきー君につくっけんね」と笑った。
テレビを見ている間に美味しそうな匂いがする。花音が用意してくれた魚の煮つけを一緒に食べる。
「きー君、どう? おいしか?」
「うん。美味しい」
「きー君においしかって言われると嬉しか!! もっと美味しいもの作れるように私がんばっけんね」
「楽しみにしてるよ」
そう言えば、花音はへにゃりとした笑みをまた浮かべた。
食事を終えてソファに座って花音と一緒にのんびりしていると花音が口を開く。
「ねーねー。きー君、そういえばさ、今日クラスメイトに聞かれたんやけど」
「何を?」
「上林先輩と何処でデートしているの? って聞かれたんよ。でも私ときー君って、付き合う前におでかけしたぐらいしかでかけとらんやん? そういう時に、きー君とここいったんよーとかいいたかもん!! 沢山自慢したかもん。あともっときー君と色んなところでかけたかもん!! やけん、きー君、デートしよ!!」
なんか急に花音の声が大きくなった。興奮しているのか私の方を見て勢いよく言う花音。
若干早口だけど、とりあえず俺と出かけたいようだ。
「そうだな。デートしてないもんな。いいけど、花音は何処にいきたいんだ?」
「んー。きー君とならどこでもいきたかけど、そうやねー。こっち引っ越してきてから色々行こうとおもっとったけど、そんな色々でかけとらんけんね。動物園とか、水族館とかいきたかかも!! ああいうのもたのしかよねー。きー君はどっちがよか?」
「どっちでもいいよ。俺も動物とか見るの好きだし。花音はどっちが好きなんだ?」
「どっちもすいとーよ!! 動物園は沢山動物見れてたのしかし、水族館ならイルカショーとかみたかかもー!! そうそう、あんね、昔家族とサファリパークいったんやけど、その時にライオンに餌やったりして楽しかったなーって思い出した!!」
花音は動物園も水族館も大好きらしく、興奮した様子である。
「じゃあ、両方行くか? 順番に」
「よかと!? なら、両方いきたか!」
嬉しそうな顔をされると、何処にでも連れて行きたいなというそういう気持ちでいっぱいになる。——俺はこの花音の楽しそうな笑みをずっと見ていたいのだなとそんな風に実感した。
「行く日決めたらお兄ちゃんにこんようにいっとかんとね」
「まぁ、凛久さんと一緒でも楽しそうだけどな」
「お兄ちゃんがおってもたのしかかもけど、でもお兄ちゃんおったらデートにならんもん。私はきー君と一緒にデートしたかけん、お兄ちゃんはこんでよかとよ」
凛久さんがいてもそれはそれで楽しそうだと思ったが、花音はあくまで今回は二人で出かけたいらしい。
「というか、きー君、お兄ちゃんと本当に仲良しよね!! 私の一番のライバル、お兄ちゃんやない?」
「何を言っているんだ……。俺は花音が好きなんだから、ライバルなんていないぞ」
「きー君!! 私もきー君、大好き!!」
よく分からないことを言いだしたのでそんなことを言わなくていいと思って口にすれば、隣に座っている花音が俺にべたっとくっついてくるのだった。
そんなこんなで花音に誘われたので、デートに今度行くことになった。
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