花音の料理を食べる。
「きー君、私が夕飯つくっけん、ゆっくりしとってね? お兄ちゃんもよ!!」
花音は的場先輩から料理を習っていたわけだが、早速俺に料理を振る舞ってくれるつもりらしい。
俺と凛久さんは、勉強をしている。凛久さんは勉強をする必要はないのだが……、それでも俺に勉強を教えてくれている。
「そういえば喜一の修学旅行はいつあるんだ?」
「五月ですね。五月に北海道行くことになってますよ」
冬の北海道ではなく、五月の北海道に行くことになっている。修学旅行は四泊五日。結構な長さがある。
「凛久さんは何処にいきました?」
「俺か? 俺は東京だったな」
「あ、そうか。そのころ長崎だったからってことか」
「そうだな。色々見て回って、東京は人が多くてびっくりしたな」
「そうなんですね」
そんな話を凛久さんと交わす。
雑談をしながらも勉強は進めている。それにしても凛久さんも人に何かを教えるのが上手で、教師とか似合いそうだなと思った。
「凛久さん、教師似合いそうですよね」
「そうか? まぁ、生徒が喜一だからだろ。俺が下手に教師なんてやると、修羅場になるぞ」
「あー、確かに。絶対に凛久さんみたいな先生がいたら、女子高生は騒ぎそうですね」
……凛久さんは若い女性がいるところに居たら大変そうだ。それに凛久さんはこうもいう「わざわざどうでもいい相手に勉強なんて教える気もならないしな」と。
凛久さんも中々はっきりしている性格だよな……と改めて思った。
凛久さんから勉強を教わっていると、良い匂いがしてくる。花音の料理が出来てきたらしい。その美味しそうな匂いに、お腹がすいてくる。ぐぅとお腹が鳴ったのを聞かれて、凛久さんに笑われて恥ずかしくなった。
そのように過ごしていれば、「きー君、お兄ちゃん、ご飯出来たよー」と花音の元気な声が聞こえてきた。
美味しそうな肉じゃがや焼き魚、あとはスープなどが用意されている。全部一から準備したらしい。
「おお、美味しそう」
「えへへー、私がんばったんよー是非味わってたべて!!」
美味しそうと口にしたら花音はそれはもう嬉しそうに、笑った。
料理を作るのは花音が手出しをしないようにと言っていたが、そのほかの準備は手伝ってもいいだろうということで他の事は手伝った。
俺、花音、凛久さんで花音が作った料理を食べる。
「花音、おいしかよ。あいつの作ったものよりおいしか」
「いや、お兄ちゃん、それは妹贔屓しすぎやっけんね? 的場先輩の方が料理上手やん」
凛久さんは的場先輩の家に花音と一緒に行っていたので、的場先輩の料理も食べていたのだろう。それにしても凛久さんは相変わらず的場先輩と口喧嘩しているのだろうか? この前は「花音ちゃん週報」というもので闇取引されていたから、多分俺や花音が知らない所でメールとかはしていそうだけど。
「ね、きー君、おいしか? 私一生懸命つくったんよ」
花音はキラキラした目で俺の方を見る。
こういう顔をされると例えば美味しくなくても美味しいと言ってしまいそうだ。まぁ、花音の作った料理はおいしいからそのまま思ったことを口にするだけだけど。
美味しい、と口にすれば花音は嬉しそうに笑った。
「きー君に美味しかって言われっと嬉しかねー。ふふ、私もっと的場先輩に料理習って、沢山の料理をきー君にたべさせっけんね? あ、そうだ。あと味付けとかももっと薄い方がいいとかあったら教えてね!! きー君好みにすっけんさ」
「ありがとう、花音」
「お礼はよかよー。私がきー君の好みのもん作りたかだけやもん。あ、でも私は料理初心者やけん、失敗したらごめんね?」
「それは気にしないでいい。幾らでも俺は花音の作ったものなら食べるから」
「それはうれしかけど、美味しくなかったら残してくれてよかけんねー?」
花音とそんな会話をしていれば、なぜか凛久さんが咳払いをする。どうしたのだろうか? なんだか呆れたような目を向けられた。
「花音、明日のご飯も作るか?」
「うん、つくーよ。材料は明日朝から買いに行くけん、きー君は何が出てくるか楽しみにしとってね? お兄ちゃんは一緒に買い物付き合って!」
「よかよ。花音の頼みなら」
明日も花音は料理を作ってくれるつもりらしい。というか、俺には何を作るのか秘密なのか。
まぁ、いいや。花音がどんな料理を作るか楽しみにしておこう。
というか、やっぱり花音が家にいるのが当たり前になっていて、花音が家にいる方が自然な感じがするなとそんな風に思った。
その後、いつも通り花音と凛久さんは俺の家に泊まるのであった。毎週泊っているのに、花音は俺の家に泊まるのが楽しくて仕方がない様子である。隣だし、家で寝たいとかないんだろうか? と思ったが、
「きー君家に泊まると楽しかもん!!」
と満面の笑みで言われてしまった。
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