花音は料理を習いに、俺はぶらぶらと。

「きー君、私、じゃあいってくんね」



 今日は花音は的場先輩の家に料理を習いに行くらしい。ちなみに凛久さんも的場先輩と花音を二人きりにするのは心配だなどと口にして、一緒に行くらしい。

 俺は花音に「上手になった料理ふるまうけん、きー君はゆっくりしときー」と言われてしまった。花音がいない休日……なんだか、花音がいることが当たり前だったから不思議な気持ちになって仕方がない。



 本当にいつの間にか花音が近くにいるのが当たり前になっていたんだなと思う。

 暇つぶしのために本屋にでも出かけることにする。本屋に行くと、今まで知らなかった面白い本に出会えたりして楽しいものである。

 たまに向かうショッピングモールにやってくる。年始のセールスなどもやっているで本屋に行くだけではなく、色々見ようとぶらぶらする。



「あれ、上林、買い物か?」



 ……買い物していたら倉敷と三瓶に遭遇した。二人で買い物に来ていたらしい。



「ちょっと暇つぶしに買い物に来たんだ」


 花音がいないのは何だか不思議な気持ちで、正直言って少し寂しさも感じて……うん、そういう気持ちを感じているのだ。

 花音に言ったら……多分、喜ぶだろうな。



「そうなのか? 暇しているなら遊ばないか!!」



 倉敷にそんな風に誘われたが……三瓶と一緒に仲良くお出かけしているのにいいのだろうか? とそんな気持ちになる。ちらりと三瓶を見れば、頷かれた。倉敷が望むのならば別に構わないらしい。



「ああ。構わない」

「よし、じゃあどうする? 上林は行きたいところとかあるか?」

「いや、俺は特にないかな」



 そう答えた時、俺のお腹がぐぅううとなった。そういえば朝ごはんも食べ忘れていた。今日はいってきますとだけ花音は言いに来たが、いつもは一緒に朝食を食べるけれど今日は一緒じゃなかったし。というか、花音と仲良くなる前は一人暮らしだし、たまに朝食を抜いていた。でも花音と仲良くなってからは……とくに朝食を一緒に取るようになってからは朝食を毎日食べていたからな。



「お腹減っているのか? なんか食うか?」

「ああ」



 そんなわけで俺は倉敷と三瓶と一緒に、フードコートに向かうことになった。



「上林はいつも休日は何しているんだ?」

「そうだなぁ。勉強したり、テレビ見たり、漫画読んでるな」

「そうか。俺はいつも郁子たちと遊んでばかりだな。俺も勉強しなきゃなぁ」



 フードコートに向かう最中にそんな会話を交わした。フードコートで席を取ってから、俺達はそれぞれ食べたいものを注文しに向かう。


 俺と三瓶はさっさとうどんやカツ丼を頼んだのだが、倉敷は悩んでいるらしく、席を外している。三瓶と二人きりというのもそうそうないからな……。何を話したらいいんだかと思っていたら三瓶に話しかけられる。



「上林君、恋人いるでしょ?」

「え、いないけど」

「でもこの前、手を繋いで出かけていたし、年末も上林君らしき人見たもの。女の子と一緒に居たでしょ」



 ……なんというか、朝早くだから大丈夫だと思っていたら、年末に花音の実家に向かう時を見られていたらしい。



「……あー、まぁ、うん」

「年末に一緒に居るなんて恋人以外ありえなくない?」

「いや、恋人ではないな……」

「えー? でも手を繋いでいたし、年末に一緒なのに?? よっぽど親しくないと冬休みに一緒になんていなくない?」



 そうは言われても……、俺と花音は恋人ではないしなぁ。


「というか、花音ちゃんとも仲が良いし、恋人みたいに仲良しな子がいるし……、案外もてるんだね?」



 ……どっちも花音だけどな。そしてもてては全然ないと思うが、三瓶はそういう恋愛話とか好きなんだろうなと思った。



「女の子は嫌いな人とは、手を繋いだりなんてしないはずだから、恋人ではなくても仲良しなのよね。きっと。どんな子なの?」

「えーと」



 何と言おうかなと困っていたら、倉敷が戻ってきたのでその話は一旦お開きになった。少しほっとする。


 その後、倉敷と三瓶と食事を取ってから、近くのゲーセンに向かった。倉敷はゲーセンのゲーセン

とかが好きらしい。俺も折角だからやってみる。しかし俺は正直クレーンゲームが苦手なので、中々取れなかった。というか、倉敷はクレーンゲーム得意だな、凄いなと思った。


 取った商品をくれようとしていたが、自分で取りたいので断っておく。その後、お金を消費したが、アニメのモンスターのぬいぐるみが手に入った。



 そんなこんな楽しんでいると、スマホに花音からの連絡が来ていた。



『きー君、どこおっと?』

『出かけてる。倉敷たちと会ったから遊んでる。でももう帰る』



 花音は帰宅して俺がいなくて、驚いたんだろうなと思う。とりあえず帰ろうと思って、倉敷と三瓶に、用事が出来たといって帰宅する事にした。





「あ、おかえり、きー君!!」

「おかえり、喜一」



 家に帰れば、花音は玄関までやってきて満面の笑みを浮かべ、凛久さんは顔だけだしておかえりと口にした。

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