のんびりしていると電話が鳴る。

 学園では花音が前より素を出しているというか、話しかけてきているから花音の周りからキツイ目で見られたりすることはたまにあるが、それ以外は特に問題は起こっていない。何か言いたそうにこちらを見ている者は多々いるが、花音が上手く言いくるめているのか特に絡まれることもなかった。



 花音は俺に学園で話しかけた後は、「今日はきー君と話せて嬉しかったんよー」といつもにこにこしていた。



「ねー、きー君、最近さむかねー」

「そうだな。雪も降るかもしれないと天気予報で言っていたからな」

「雪ふっとよかよねー。長崎雪ふっことあんまなかけん、雪降るだけでびっくりすーよ。こっち結構ふるん?」

「年によるだろ。降る時は降るな。もちろん、北海道や東北と比べると全然だけど」



 長崎は雪が降らないらしい。まぁ、九州は暖かいイメージしかないし、雪はあまり降らないのだろう。花音が言うにはまだ福岡の方が降っているイメージらしい。



「福岡と長崎って隣同士だっけ? 近いイメージだけど」

「間に佐賀があっよ。特急で一時間半から二時間やけん、そこまでちかかわけでもないとよ?」

「そんなにかかるのか?」

「そーよ。福岡行くと都会やなーっておもいよったけど、東京はすごかよね。都会でびっくりしたったい」



 九州の地図というのはそこまで覚えていないため、へぇーと思いながら花音の話を聞いていた。



「福岡も行ったことないからな。大宰府とかいってみたいな」

「きー君さえ良ければ今年旅行いかん? 私きー君と旅行行けたらきっと楽しかと思うんよね。もちろん、きー君は受験やけん、難しかったから受験後でも全然よかとけど。お兄ちゃんも連れて行くとかもよかかな」

「そうだな。受験の状況次第になるけど、花音さえいいなら俺はいいけど」

「私は寧ろいきたかもん!! きー君と一緒に行けたらきっと楽しかしね」



 花音に旅行に誘われる。俺は花音が良いのならば構わない。寧ろ花音と一緒なら楽しいだろうと思う。花音の実家に行った時も全然知らない場所だったけれど、花音が居れば楽しかったし、多分何処に行っても花音がいれば楽しい気がするから。



「きー君の合格祝いとかでもよかよねー。いや、もう私は何回でもきー君と旅行いきたかけん、春、夏、秋、冬と色々いきたかなーって気分なんやけど。近場でも嬉しかもん」

「そうだなぁ。近場なら行きやすいかもな」

「でも遠出するなら九州いこう!! きー君行った事なかっていいよっし、きー君連れていきたかもん」



 花音はにこにこと笑いながらそんなことを言う。



 九州かぁ。花音と行くなら多分長崎になるんだろうけど。長崎だと何が有名なんだっけ。教会とか、軍艦島とかは思い浮かぶけど。あとは花音が口にしていた皿うどんとか。



「長崎やったらね、祭りの時の方がたのしかかもしれん。あ、でもそれだけ平日にかかっかな。平日に旅行とかは大学生とかにならんといきにくかよね。お兄ちゃんがいいよったけど、単位取れるなら休む人は休むっていいよったし」

「平日にあるのか?」

「そうね。平日にあるのもあっとよ」



 花音とそんな会話を交わしながら、のんびりと過ごす。ちなみに今は花音はテレビを見ていて、俺はスマホゲームをやりながら会話を交わしていた。



「きー君はお気に入りの祭りとかあっと?」

「地元の祭りは参加していたな。周りは知り合いばっかりだったし楽しかったけど」

「きー君の地元にも行ってみたかなぁ。きー君がどんな子供時代を過ごしたか気になっとよ」

「……まぁ、花音と一緒ならいつか戻るかもな」



 ……正直、地元は色々あったから戻りにくい。だからこそ、離れた高校に通っているわけだし。それでもなんだろう、花音と過ごしているとそういう悩みとか、そういう過去とかどうでもよくなるというか、花音と一緒ならいつか戻ってもいいかなってそんな前向きな気持ちになっている。



 やっぱり花音は凄いと思う。

 周りの人間にこれだけの良い影響を与えて、いつでも前向きで、ひまわりか何かのようなそんな女の子だと思う。


「ねー、きー君は……」



 花音がそう言って何か言おうとした時、花音のスマホが鳴った。



「あ、ちょっとでんね」


 花音はそう言って、電話を取る。



「わー、久しぶりやねー。えーちゃん」



 花音は満面の笑みを溢して、会話を始めた。


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