花音の実家 ⑦
圧倒言う間に年末になった。
年末になるまでの間、俺は花音の実家でそれはもう驚くほどによくしてもらっている。
花音と一緒に学園から出されている課題を行っていた。あとは大学受験のための勉強も見てもらっていた。花音と凛久さんは意気揚々と教えてくれて、時々栄之助さんも俺に教えてくれたりした。
栄之助さんとも少しずつ仲良くなれていると思う。こうして少しずつ仲良くなれているというのは嬉しいものだ。
「きー君、もう明日には来年なんね。なんか不思議な気分やねー」
「そうだな」
俺は花音の言葉に頷きながら、俺は今ここにいることが一番不思議だよというそういう気持ちになっている。
花音が横でにこにこしているから、なんだかすっかり自分の家みたいな感覚になってしまっているが。たまに家にいる時の感覚で花音と喋っていて、栄之助さんに凝視されてた時には生きた心地はしなかったけれど何かを言われることもなかった。
「きー君は除夜の鐘とかつきにいくタイプ?」
「年によるな。花音は?」
「私もその時によるかなー。今年はね、年末はゆっくりして、年始は神社いこーね。近くに神社あっとよ」
「ああ」
「たのしみやねー」
花音はにこにことしている。
年が明けたら明日は、この家の近場にある神社に向かうことになっているのだ。後、初売りに行きたいと花音はにこにこしていた。
「初売りの広告は結構楽しいよな」
「よねー。なんか色々見てこれよさげ! とか見るの楽しかよ。あれね、古本屋とかのも楽しいんよね。あと、ゲームの初売り!!」
「洋服とかは興味ないのか?」
「そっちもあるよ。ふふ、かわいか服きて、きー君を悩殺すーよ!! 一緒に洋服店にも一緒にいこーよ。神社いった後に、買い物いこーね。デパート行く予定になとっるけんさ。色々みよーね」
「ああ」
初売りというものは結構楽しい。俺も新聞の広告を見たりして、これがよさそうとか見て回るのも楽しいものである。新聞に入っている広告を見るのも楽しいんだよな。今は一人暮らしだから新聞はとっていないけれど。
花音の実家では新聞を取っているみたいなので、明日の広告がどうなっているか少し楽しみである。
去年の年末年始は一人でのんびりしていたから、こうして人と過ごす年末年始も良いものである。
年越しそばを咲綾さんが準備しているのをお手伝いする。咲綾さんは「お手伝いありがとう」と花音に似た花が咲くような笑みを浮かべていた。ちなみに凛久さんと栄之助さんもお手伝いしていた。
「き―君、これみよー!」
「ああ。凛久さんもいい?」
「俺は花音と喜一が見たい奴でいい」
そう言ってくれたので、年末特番の番組を見る。花音は楽しくて仕方がないのかにこにこと笑っている。
夕食は皆で年越しそばを食べながら、歌番組を見る。年越しの歌番組は年が明けるんだなという気持ちになる。
俺はそこまで歌手も詳しくないけれど、こういうのは誰かと見るのは楽しいものである。あとは知っているアニソン歌手も出ているんだよな。
「ねー、きー君、今度カラオケ行った時、この歌うたってみてよ。きー君の声でききたかよー」
「え、歌えるかな」
「きー君が歌ってくれるんやったらちょっと拙くてもよかもん」
花音にキラキラした目でそんな風にみられると、この歌の練習するかなと思った。俺が歌えるようになったら花音は喜ぶだろうし、俺もこの歌初めて聞いたけど気に入ったし。
「んー」
「花音ねむたかと?」
「……ねむか。けど、おきときたかもん」
「ねーよ、花音」
「ん……でもきー君が折角おっとよ。お兄ちゃんに、ねーって言われてもおき……」
花音は凛久さんと会話を交わしながらも、途中から眠たそうにしていた。正直寝ぼけているからか、なんていっているか分かりにくい。というか、途中で言葉も途切れて本当に眠たそうだ。
「花音、眠いなら寝たらどうだ」
「んー……」
「俺のことは気にしなくていいから」
「じゃ、きー君、ねーけん……。おやすみって」
「……ああ。花音、おやすみ」
「えへへ。きー君声、おやすみいわれっと、やっぱ、しあわせやねー。おやすみー、きー君……」
花音は頬を緩ませて、幸せそうな笑みを浮かべたかと思えば、眠気の限界が訪れたのか、そのまま眠った。
「花音寝ましたね」
「寝たな。花音をちょっとベッドに寝かせてくる。喜一は?」
「俺はもう少し起きておきます」
眠った花音を凛久さんが抱えて部屋へと連れて行く。俺はまだ眠くないので引き続きテレビを見た。その間、栄之助さんや咲綾さんとのんびり会話を交わした。
しばらくして俺も眠くなったので、客室に向かって眠った。
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