花音の実家 ⑥

 凛久さんとラーメンを食べに行った翌日、俺は朝から「きー君、お母さんのお手伝いしたらでかけよー!!」と花音から誘われていた。



 何故か凛久さんが俺に近づこうとすると「お兄ちゃんは昨日、きー君を独占したやろ。私が今日はきー君と遊ぶんやけんね?」と威嚇していた。咲綾さんはにこにこと笑いながら「仲良しね」と笑っていた。




 朝食のお手伝いをした後、花音と一緒に出掛けようとすると咲綾さんが「これ、使ってね」とお小遣いをくれる。




「え、悪いですよ」

「いいのよ。だって喜一君にはいつも花音と凛久がお世話になっているもの。花音は毎日お世話になっているし、凛久も週末にお世話になっているのでしょう? このくらいさせてね」



 などと言われてしまった。



 結局花音と出かける費用を受け取ることになった。

 花音はにこにこしている。



「お母さん、これね、きー君がくれた帽子とブーツとマフラーなんよ!!」

「似合うわよ」



 花音は俺のプレゼントしたものを見に着けて、咲綾さんの前でくるりと一回転していた。


 それから花音に手を引かれて外に出る。







「花音、何処に行くんだ?」

「この辺を案内すーよ。私も中学卒業してこっちきて、一人暮らしやけん、このあたりはまだまだ知らんことおおかもん。きー君と一緒に新しい楽しかもん探しに行けたらっておもいよっと。知っている場所に見えてももっと目を凝らしてみてみたら、また違った楽しみがあっかもしれんやん」



 花音はにこにこと笑っている。



 花音と一緒にそういう小さな喜びというか、新しい楽しみを探しに行けるのも楽しそうだしな






「きー君、こっちいってみようよ。ちょっと裏通り的な!」



 休みの日の午前中だからか、あまり人はいない。その道を花音と共に歩いていく。花音に手を引かれ、脇道を進む。




「ねー、きー君、この店はいらん? 小物雑貨店みたいやけど」

「ああ」



 花音と一緒にそのお店に入る。花音は嬉しそうに笑いながら商品を見る。花音が目に止めているのは髪止めやアクセサリーである。



「きー君、これ、かわいくなか?」

「可愛いな」



 花音はどれか購入しようかなとでもいうように真剣に見ている。



 最終的に白のカチューシャと、ブレスレットのどちらを買おうかと悩んでいるようだ。



「んー、きー君、どっちがよかと思う?」

「両方買ったらどうだ?」

「でも両方買ったら結構たかかとよねー。お小遣いもらったけど、他のことにもつかいたかしね」

「じゃあ俺が片方買うよ」

「え。よかと?」

「ああ。花音の家でお世話になっているしな」



 そう言いながら花音に一つ買ってあげれば、花音は「きー君ありがと!!」と笑顔を浮かべた。



 雑貨屋を後にした後は、また花音に手を引かれてぶらぶらする。昼の時間なので、何処かのお店に入ることにして、見かけた定食屋さんに入った。昔ながらの定食屋さんといった雰囲気のお店で、俺は入ったことないタイプの店である。

 俺はカレーを食べて、花音はとんかつを食べた。



「おいしかねー。今度、お母さんたちもつれてこんとね!!」



 食事を終えた後は、また街を歩いた。時折気になるお店に寄りながら、俺達は歩き回るのであった。



 おやつの時間ぐらいに家へと戻るのだった。







 家に戻れば咲綾さんが花音に似た笑みを浮かべて、迎え入れてくれた。




「ねー、お母さん、これきー君が買ってくれた!!」

「まぁ、良かったわね。可愛いわ。花音」

「えへへ。私かわいかもんね!!」

「ええ。世界で一番可愛いわよ」



 花音が笑えば、咲綾さんは可愛いと告げて頭を撫でまわした。そうすれば「お母さんもかわいかよー!!」と花音はにこにこと笑う。その様子を見て凛久さんと栄之助さんも笑みを溢している。



「きー君、年末特番のテレビ、何、みたかか確認しよーよ!!」



 咲綾さんと話し終わったのか、花音はソファに座っている俺の方へとやってきて、隣に座る。

 花音はテレビのリモコンを操作して、番組表を見る。




「んー、これとかよくなか?」

「いいな。俺も気になる」

「じゃあ、これみよー。お母さんもお父さんもお兄ちゃんもよかよね? 他にみたか番組とかあるー?」



 花音は咲綾さんたちの方を向いて、そう問いかける。三人は「花音が見たいテレビでいい」とそんな風に答えていた。そんなわけで、俺と花音はしばらく年末年始特番の見たい番組をチェックするのである。



「年末年始は色んな特番あって楽しかよね!! しかも今年はきー君も一緒に見れるけん、余計にたのしかよ!! きー君、私にお持ち帰りされてくれてありがとう」

「俺も花音と一緒に過ごせて楽しいよ。連れてきてくれてありがとう」



 花音の言葉に俺がそう答えれば、花音はまた笑った。



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