花音の実家へ向かう ①
「きー君、起きてー!!」
花音の元気な声が聞こえてきて、俺は目を開ける。花音が俺の部屋の扉を開けて、リビングから俺のことを呼んでいた。
目を覚まして、花音の顔を見る。
「あはは、きー君、ねぼけとーね。私ん家いくんやろ。おきーよ」
花音の声に、そういえば花音の実家にこれから行くのだと思って体を起こす。まだ時間は朝の8時である。何でこんな朝の早い時間に起こされたかと言えば、花音が「はやくきー君を家に連れてかえりたかもん!! 私もはよかえりたかってのもあっけど」などといっていたからはやめに行くことになった。
それに朝早くに出かけることで目撃者を減らそうという狙いもある。流石に花音の実家付近には学園の生徒も少ないだろうから問題はないだろうが、学園周辺だと誰かに見られることもあるからな。
そのために昨日のうちに荷造りをしたわけだしな。
「きー君、顔あらいーよ。朝ごはんもつくっとくけん」
「ああ。というか、花音はすっかりもう準備完了しているな」
俺はそう言いながら花音を見る。花音はすっかりお出かけスタイルである。スカート姿の花音は、にこやかに微笑んでいる。
「だってきー君を家につれてかえれっと思うとめっちゃ楽しみで仕方なかったんよ。えへへー、きー君と一緒に冬休みん間ずっと過ごせっとやろ。言葉にすーだけで、幸せになんね」
花音は幸せそうな笑みを浮かべながら朝食を並べてくれる。花音の作ってくれた朝食を食べて、「きー君、準備しー」と準備をしてくるようにいってくる。方言は分からないが、何となく花音の表情とかでこういっているんだなとかは分かる。
花音が食器などの片づけをしてくれているので、俺はその間に顔を洗って着替える。
「よし、食器とかは大丈夫やね。ちゃんと綺麗にしとかんとね」
俺が着替えを済ませている間に花音はリビングを綺麗にしてくれていたらしい。
「花音、お待たせ。ありがとう」
「よかよ!! それより、準備できたんやったら行こうよ」
「ああ」
花音は朝から元気だなと思いながら、俺と花音は大きなバッグを持って家を出るのだった。ちなみに十一日も出かけるので荷物はそれなりに多い。俺の荷物は肩掛けバッグに、手持ちでもう二つ。花音は実家に戻るというのもあり、俺よりは荷物は少ないがそれでも二つは持っている。
今更ながら花音の実家に十一日もいていいのだろうかと不安になったが、花音は「私がよかっていいよっっけんよかと」と言いながら手を引かれてしまった。手を引かれて慌てるが、花音は「朝早くだし大丈夫よー。私もサングラスかけとっし」と言っていた。
まぁ、確かに冬休みの朝だし、人気は少ないけど……でも人はいるといえばいるんだぞ? と思うものの、花音があまりにも嬉しそうに俺の手を引くから手を離すように言えなかった。
花音に手を引かれたまま駅に向かい、花音に言われるがまま駅のホームに向かう。
「きー君、これにのっとよ」
「ああ」
花音に手を引かれたまま向かった駅のホームは人が少なかった。まぁ、冬休みで元々通常より人が少ない。あとは元々人がそこまで多くない路線なのか、そこまで人がいなくてほっとする。花音と一緒に座席に腰かける。
「30分乗って乗り換えすっけんね」
「ああ。そういえば、凛久さんは一緒に行かなくていいのか?」
「うん。お兄ちゃんは用事あるっていいよったけん、すぐにはこんって。私たちよりちょっと遅くくるってさ」
「そうなのか」
凛久さんは大学生だし、色々忙しいのかもしれない。そう考えたが忙しい割には凛久さんって、俺の家に毎週末来ているよな……などと考える。大学生ってどんな風に忙しいんだろうか? 大学生になってみたら分かるかな。
「ねーねー、きー君はさー、なんかしたかこととかあっと?」
「冬休みにか?」
「うん」
「いや、んーとくには何も思いつかないが」
「えー、そうなん?」
「ああ。花音の実家行くだけでも色々ありそうだし、楽しそうだしな」
これは本心でもある。多分、特別なことを何かしなかったとしても、花音の実家だときっと楽しいと思う。まぁ、花音の実家に行くっていうだけでも俺にとってみれば大イベントだし、きっと色々起こるだろうけど。
俺の言葉に隣に座る花音は嬉しそうに笑った。……ちなみに離すタイミングをはかれなくて、花音とは手を繋いだままである。
「そうやね。私も何もなかとしても、きー君と一緒やと楽しかと思う!!」
そんな会話をしながらしばらく電車に揺られていた。30分の一本目の電車の間、俺はずっと花音とのんびり話していた。そして気づけば、下りる駅に来ていた。
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