翌日のこと
「……絶対、色々聞かれるなぁ」
「きー君は適当に“天道さんのご厚意に甘えてしまった。天道さんは優しい!”とでもいってはぐらかしとけばよかったい。私もそがんいうけんさ」
「そんな風に言うつもりだけど、俺、ごまかすのそんな得意じゃないんだよなぁ」
「大丈夫!! 私が上手くごまかしとく。あ、それときー君、うちん家にきー君お持ち帰りする許可でたけん、一緒に年末は私ん家ね!! 今、両親がすんどるとこ、ここから一時間半ぐらのとこにあるんよ」
花音は親の都合で長崎から関東に引っ越してきて、今は東京で一人暮らしをしている。聞いたところによると、いま花音の両親が住んでいるところは元々父親の実家だった場所らしい。
祖父母が亡くなって、仕事の関係もあり、こっちに来ることになった時に元々祖父母の家だった場所に引っ越すことになったそうだ。
朝からそんな会話を花音としながら、朝食を一緒に食べた。昨日、花音の傘に入れてもらって帰宅したため、多分、学園では相当噂になっていることが予測される。どうなるかなぁ。
そんなことを思いながら俺は準備をすると学園へと向かうのであった。
「上林!! 昨日、花音ちゃんと一緒に帰ったんだって? いいなー!!」
「天道さんの傘に入れてもらえるとか、運が良すぎだろ。俺も傘忘れていたら良かった」
「というか、上林君って花音ちゃんと同じマンションに住んでいるの? その時点で凄くない? 花音ちゃんと同じマンションとか運気あがりそうよね」
「天道さんは本当に優しくて可愛いわよね」
案の定、教室に向かうまでの間にちらちらと視線を向けられ、教室に辿り着けばクラスメイトたちに囲まれた。ちなみに花音とよくいる下級生には、「花音ちゃんは優しいから先輩を傘に入れただけだ。勘違いをするのではないぞ」などと忠告まで下駄箱の所で受けてしまった。
勘違いか……、花音はただ仲よくしている俺が傘を忘れていたから放っておけなくて学園でも声をかけただけだろうしな。
それにしてもこんなにクラスメイトに一気に詰め寄られる経験は初めてなので、花音は本当にすさまじい影響力を持っているのだなと思った。
花音の方も同じように色々と聞かれていたりするのだろうか?
「なぁ、上林、花音ちゃんと同じマンションってことはマンションでも花音ちゃんを見れたりもするのか? というか、俺花音ちゃんが住んでいるマンションがどんなところなのか気になる!! 上林の家に遊びに行ったら駄目か?」
倉敷はそんなことを言い始める。
「俺の家に?」
「ああ。だって花音ちゃんの住んでいるマンションって気になる!!」
倉敷がそう言えば、倉敷と仲が良い数名の男女も同じように花音の住んでいるマンションが気になると声をあげる。
「ついでにテスト勉強も一緒にしたい! 上林、結構頭良いだろう? 結構しっかり勉強しているようだし。勉強見てくれよ!!」
凄い勢いで頼み込んでくる。倉敷がクラスの中でも人気者なのってこれだけ真っ直ぐだからというのもあるのだろうか?
倉敷の勢いに押されたのと、俺もクラスメイトと勉強会をすれば勉強がはかどるのではないかとそう思ったため、「いいぞ」と答えてしまった。倉敷は「ありがとう、上林」と嬉しそうに笑っていた。
ついでにゆうきも一緒にその勉強会に参加することになった。それと倉敷には「俺はそこまで頭が良いわけではない」とは訂正しておいた。あくまで最近勉強に余裕があるのは凛久さんと花音が教えてくれているからだしな。
その後、教師が入ってきたので一旦話は中断された。
一限目が終わった後、スマホを見ると花音から連絡がきていた。花音からの連絡もあのおでかけの日以降、前より多くなった気がする。
『きー君、上手くごまかしといたよ!! きー君と大の仲良しなんよ!! ってはい言わんかったから私、偉い!!』
というコメントと共に、ほめてほめてというスタンプが張られている。
ありがとうという返事と共に頭を撫でるスタンプを送れば、花音からは満面の笑みのスタンプが返ってきた。
そのやり取りに思わず笑みが零れてしまう。
そうだ、倉敷たちとの勉強会をすることになったということを言っておかないととさっそく報告しておく。そうしないと、花音は俺の家に居そうだしな。
そうすれば『いつになるか決まったら教えて。その日は私もお出かけするか引きこもって一人遊びする』などと返事がきた。
花音には真っ先に倉敷たちとの勉強会の日が決まったら言っておこうとそんな風に俺は思うのだった。
ちなみに昼休みになった途端、倉敷は俺の元へ勢いよくやってきて、「なぁ、上林はいつならあいているんだ?」と勢いよく話しかけてきた。そして三瓶に「達史、落ち着きなさい」と注意されていた。
話し合いの結果、倉敷たちと勉強をするのは、三日後の放課後になった。土日でもいいかなと思ったのだが、流石に土日だと隣室の花音と何かの拍子に鉢合わせたりするかもしれないと思ったからである。
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